病気の解説
消化性潰瘍
別名:十二指腸潰瘍、消化性潰瘍疾患、胃潰瘍
緊急性の高い症状
潰瘍から出血したり、胃や十二指腸の壁に穴があいたりすると、命にかかわることがあります(MSDマニュアル家庭版)。次のような症状があるときは、すぐに医療機関を受診してください(NIDDK)。
- 血を吐いた、またはコーヒーのかすのような黒っぽいものを吐いた(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)
- 便が黒くタールのようになった、または便に赤い血や暗い赤色の血が混じる(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)
- 突然、鋭い・激しいおなかの痛みが起こり、おさまらない(NIDDK)。穴があいた場合は、痛みがおなか全体に広がり、体を動かすと強くなることがあります(MSDマニュアル家庭版)
- めまいがする、気を失う(NIDDK)
- 脈が速いなど、ショックが疑われる様子がある(NIDDK)
意識が遠のく、ぐったりしているなど、ショックが疑われるときは、ためらわず救急車(119番)を呼んでください。穴があいた状態を治療せずにいると、ショックに陥ることがあるとされています(MSDマニュアル家庭版)。
出典:米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)「Symptoms & Causes of Peptic Ulcers (Stomach Ulcers)」、MSDマニュアル家庭版「消化性潰瘍」
当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。
受診の目安
- みぞおちのあたりに、焼けるような・うずくような痛みが続く、または良くなったり悪くなったりをくり返すときは、医療機関(消化器内科や内科など)を受診してください(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
- 空腹時や夜に痛み、食べると少し楽になる、という痛み方をくり返すとき(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)。
- 食事の途中ですぐおなかがいっぱいになる、食後に張って苦しい、吐き気や嘔吐が続くとき(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)。
- 体重が減ってきた、初めてこうした症状が出たのが60歳以上である、といった場合は、より詳しい検査が必要とされています(MSDマニュアル家庭版)。
- すでに潰瘍と言われている方で、症状が変わった・悪くなったときは、すぐに受診してください(NIDDK)。
高齢の方やNSAIDを使っている方では、痛みなどの症状がほとんどないまま、出血などで初めて見つかることがあります(MSDマニュアル家庭版)。また、潰瘍が良性か悪性(がん)かは症状だけでは見分けられず、胃カメラなどの検査が必要です(MSDマニュアル家庭版)。症状だけで病名は判断できないため、自己判断せず受診してください。
基本
消化性潰瘍とは
消化性潰瘍は、胃や十二指腸(胃に続く小腸の始まりの部分)の内側の粘膜が、胃酸や消化液によって削られ、丸い、または楕円形の深い傷ができた状態です(MSDマニュアル家庭版)。胃にできるものを胃潰瘍、十二指腸にできるものを十二指腸潰瘍と呼びます(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。傷の大きさは数ミリから数センチまでさまざまです(MSDマニュアル家庭版)。多くは合併症を起こさずに治りますが、出血や穴があくなど、重い合併症を起こすことがあります(MSDマニュアル家庭版)。
主な症状
- 最も多いのは、へそとみぞおちの間あたりの痛みや不快感です。鈍い痛みや焼けるような痛みで、出たり消えたりします(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)。
- 十二指腸潰瘍では、空腹時や夜間に痛みが出やすく、食事や胃酸を中和する薬で一時的に軽くなることが多いとされます(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
- 胃潰瘍では決まったパターンがなく、食べると楽になることも、かえって痛むこともあります(MSDマニュアル家庭版)。
- すぐ満腹になる、食後の膨満感、吐き気・嘔吐、おなかの張り、げっぷがみられることもあります(NIDDK)。
- 痛みは数日〜数週間続いたあと、いったん消えて、また現れることをくり返します(MSDマニュアル家庭版)。
- 典型的な症状が出るのは約半数で、合併症が起こるまで症状がない人も多いとされます(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
起こりうる合併症には、次のようなものがあります(MSDマニュアル家庭版)。
- 出血:最も多い合併症で、痛みがなくても起こることがあります。出血が続くと貧血になり、立ちくらみやだるさが出ることがあります。
- 穿孔(せんこう):潰瘍が壁を突き抜けて穴があき、急に強い腹痛が起こります。
- 穿通(せんつう):潰瘍が隣の肝臓や膵臓にまで及び、強い痛みが続いたり背中が痛んだりします。
- 狭窄(きょうさく):炎症や傷あとで胃の出口などが狭くなり、嘔吐をくり返す、体重が減るなどの症状が出ます。
原因・なりやすい要因
- ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染:主な原因の一つです(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。十二指腸潰瘍の半分以上、胃潰瘍の3〜5割にみられるとされます(MSDマニュアル家庭版)。感染した人の吐いたもの・便・唾液との接触や、それらで汚染された飲食物を通じて広がる可能性があると考えられていますが、詳しい感染経路は研究が続いています(NIDDK)。
- NSAID(非ステロイド性抗炎症薬):アスピリンやイブプロフェンなど、痛み止めや熱さましとして使われる薬です。もう一つの主な原因で、胃の粘膜を傷つきやすくします(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。長く使う、複数を併用する、ピロリ菌にも感染している、といった場合に危険が高まるとされます(NIDDK)。ただし、使っている人の大半には潰瘍はできません(MSDマニュアル家庭版)。
- 喫煙:潰瘍ができやすく、治りにくく、再発もしやすくなるとされます(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
- 飲酒:胃酸を増やしますが、量が多すぎなければ潰瘍の原因にはならないと考えられています(MSDマニュアル家庭版)。
- その他:重い病気・やけど・大けがなどの強い身体的ストレス(MSDマニュアル家庭版)、副腎皮質ステロイドなど一部の薬とNSAIDの併用、肝硬変などの重い慢性の病気(NIDDK)が関係することがあります。ごくまれに、胃酸を出させるホルモンをつくる腫瘍(ゾリンジャー・エリソン症候群)が原因になります(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。原因が見つからない場合もあります(NIDDK)。
検査と診断
診断
- 症状、これまでの病気、飲んでいる薬(特にNSAID)、家族の病歴などを確認し、おなかを診察します(NIDDK)。
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):潰瘍があるかを直接確認し、組織を少し採って(生検)悪性かどうかやピロリ菌の有無を調べます。出血している場合は、その場で止血の処置をすることもあります(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
- ピロリ菌の検査:呼気(吐いた息)を調べる検査、便の検査、血液検査などがあります(NIDDK)。
- バリウムを飲んで撮影するX線検査が使われることもあります(NIDDK)。穴があいた疑いがあるときは、X線やCTなどの画像検査を行います(MSDマニュアル家庭版)。
治療
治療
治療は「潰瘍を治す」ことと「原因を取り除く」ことの2つが柱になります(NIDDK)。
- 胃酸を抑える薬:プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなど、胃酸の分泌を抑える薬で潰瘍の治りを助けます(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。胃酸を中和する薬(制酸薬)が使われることもあります(MSDマニュアル家庭版)。
- ピロリ菌の除菌:ピロリ菌がいる場合は、複数の抗菌薬と胃酸を抑える薬を組み合わせて除菌します(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。途中でやめると菌が生き残り、薬が効きにくい菌になることがあるため、処方どおりに最後まで飲むことが大切です(NIDDK)。治療後に再び検査をして、除菌できたかを確かめることがあります(NIDDK)。
- NSAIDが原因の場合:薬の種類の変更や、胃を守る薬の追加などを医師が検討します(NIDDK)。自己判断でやめたり変えたりせず、処方した医師に相談してください。
- 手術:現在ではまれで、穴があいた場合、薬で治らない狭窄、くり返す大出血、がんが疑われる場合などに検討されます(MSDマニュアル家庭版)。出血には内視鏡による処置が行われることもあります(NIDDK)。
どの治療を選ぶかは、原因や病状に応じて医師が判断します。
日常生活の注意
- たばこをやめることが勧められています(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)。
- NSAID、アルコール、ニコチンなど胃を刺激するものは避けることが大切とされます(MSDマニュアル家庭版)。
- 刺激の少ない食事が治りを早めたり再発を防いだりする根拠はないものの、痛みを悪化させる食べ物は避けるのが妥当とされます(MSDマニュアル家庭版)。
- 薬は医師の指示どおりに飲み、症状が軽くなっても自己判断で中止しないでください(NIDDK)。
日常生活の注意は、担当の医師の指示を優先してください。
経過と生活
予防
- 禁煙は潰瘍の危険を下げることにつながります(NIDDK)。
- NSAIDを長く使う必要がある方は、医師が薬の種類の見直しや胃を守る薬の併用、事前のピロリ菌の検査と除菌を検討することがあります(NIDDK)。
- ピロリ菌など原因を治療しておくことで、今後潰瘍ができる可能性を下げられるとされます(NIDDK)。
経過
多くの潰瘍は合併症を起こさずに治ります(MSDマニュアル家庭版)。ピロリ菌が原因の潰瘍では、除菌をした場合に再発するのは約10%であるのに対し、除菌しない場合は約50%が再発するとされています(MSDマニュアル家庭版)。また、ピロリ菌による潰瘍がある人は胃がんになる危険が高いとされるため、医師の指示に沿って検査や治療を受けることが大切です(MSDマニュアル家庭版)。
消化器内科で扱うほかの病気
出典
MSDマニュアル家庭版「消化性潰瘍」 / NIDDK「Symptoms & Causes of Peptic Ulcers (Stomach Ulcers)」 / NIDDK「Diagnosis of Peptic Ulcers」 / NIDDK「Treatment for Peptic Ulcers」
内容の確認日:2026-10-16(次回確認予定 2027-04-16)。複数の公的情報源の事実をもとに medimichi が独自にまとめています。
この記事は一般的な医療情報の解説で、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。緊急時は 119 / 医療機関へ。