医療コラム
テニス肘はどのくらいで治る?治らないときに見直すことと次の選択肢
まず結論
テニス肘は、多くの場合休むことで数週間のうちに軽くなりますが、1年以上続くこともあります(英国の公的医療情報)。日本の診療ガイドラインが紹介する研究のまとめでは、臨床試験でプラセボ(有効成分のない偽の治療)を受けた人たちでも、26週以降は99%以上が軽い痛み以下になっていました(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019)。
目安は、自分での対処を2週間続けても痛みが残れば受診、6週間で良くならなければ理学療法が役立つことがある、6〜12か月続くときは手術が検討されることがある、という流れです(英国の公的医療情報)。
すぐ受診が必要な症状
- 急に始まった腕の痛みに、胸の圧迫感・重苦しさ・締めつけを伴う → すぐに 119(心臓の病気のおそれ)
- 強い痛みで腕を動かしにくい/けがのときに「ポキッ」という音がした、腕の形が変わった → 救急外来へ
- 腕がしびれる・感覚が鈍い → 救急外来へ
- 腕が腫れて高い熱がある、寒気がする/運動すると腕が痛み、休むと治まる → 当日中に医療機関へ相談
出典:英国の公的医療情報「Elbow and arm pain」(NHSの最終レビュー日 2024-01-26)。テニス肘そのものの症状ではなく、ひじや腕の痛み全般で注意すべき徴候です。英国の救急番号(999)の案内を、日本の119番に置き換えて示しています(medimichi の注記)。
当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。
受診の目安
- ひじを休ませて自分でできる対処を2週間続けても痛みが残る(英国の公的医療情報「Tennis elbow」)
- ひじや腕の痛みが数週間たっても治まらない(英国の公的医療情報「Elbow and arm pain」)
- 痛みで日常の動作に支障がある(medimichi の注記)
日本での相談先は整形外科です(medimichi の注記)。腕のしびれや感覚の鈍さは、上の「すぐ受診が必要な症状」に当たります(英国の公的医療情報「Elbow and arm pain」)。ひじの外側の痛みは、ひじの関節炎や神経の圧迫でも起こることがあり、医師はX線検査や筋電図でそれらを見分けることがあります(米国整形外科学会)。症状だけでテニス肘と決めないでください。
良くなるまでの目安
- 手術をしない治療で良くなる人は、およそ80〜95%とされる(米国整形外科学会)。
- 休むと多くは数週間で軽くなる一方、1年以上続くこともある(英国の公的医療情報)。
- 治療を受けたかどうかにかかわらず、1年後には症状が統計的に意味のある程度に軽くなっていたという報告がある(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019)。
つまり、自然に良くなることが多い一方で、時間がかかることがある病気です。
治りにくくなる要因
上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(Background Question 5-1)は、手術をしない治療の成績が悪かった例に共通する点を紹介しています。medimichi が分類し直すと、次のようになります。
| 分類 | 成績が悪かった例 |
|---|---|
| 経過・症状 | 12か月以上続いている/治療を始める前の痛みが強い/利き手に起きている |
| これまでの治療 | 注射を受けたことがある/手術を受けている |
| ほかの病気 | 腕の神経が圧迫される病気(橈骨管症候群)を合併している |
| 仕事 | 労災として扱われている例 |
同じガイドラインは、重労働の人のほうが治りにくい傾向があることも紹介しています(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Background Question 1)。
「治らない」と感じたときに見直すこと
| 見直すこと | 内容 |
|---|---|
| 負担が続いていないか | 物を握る・手首や前腕をひねる動作の繰り返しが負担になる。パソコンのタイピングやマウス操作も原因になりうる(英国の公的医療情報)。痛む動作を数週間止めるか減らすことが基本(米国整形外科学会) |
| 理学療法を受けたか | 自宅での対処を6週間続けても良くならないときは、理学療法が役立つことがある(英国の公的医療情報)。日本のガイドラインは理学療法を強く推奨している(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Clinical Question 4-4) |
| 本当にテニス肘か | ひじの関節炎や神経の圧迫など、似た症状の病気をX線検査や筋電図で見分けることがある(米国整形外科学会)。しびれがあるときは上の「すぐ受診が必要な症状」を確認 |
| 注射を繰り返していないか | 注射は短期間よく効くが、長く見ると再発が多いという報告がある(下の節) |
治療の選択肢と、日本のガイドラインの評価
上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(日本整形外科学会・日本肘関節学会 監修)の推奨は次のとおりです。
| 治療 | ガイドラインの評価 |
|---|---|
| 理学療法(ストレッチ・筋力訓練など) | 強く推奨(Clinical Question 4-4) |
| 薬(痛み止めなど) | 弱く推奨(Clinical Question 4-1) |
| ステロイドの注射 | 短期間の使用を弱く推奨(Clinical Question 4-2) |
| テニスバンド | 弱く推奨(Clinical Question 4-3) |
| 体外衝撃波 | 明確な推奨なし(Clinical Question 4-6) |
| 手術(手術をしない治療で良くならない場合) | 直視下手術・鏡視下手術とも弱く推奨(Clinical Question 4-10・4-11) |
「弱く推奨」は、ガイドラインの定義では「行うことを弱く推奨する(提案する)」で、「強く推奨」より一段弱い評価です(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・前文)。
注射は「短く効くが、再発に注意」
- ステロイドの注射は、注射から6か月未満の期間では痛みや日常の動作に効果があるという強い根拠がある一方、それより長い期間では効果が認められていない(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Clinical Question 4-2)。
- プラセボと比べた研究では、1年後の再発がステロイド54%、プラセボ12%と、注射のほうが多かった(同ガイドライン・Background Question 5-1)。
- 複数回の注射のあとに腱の付け根が切れた例の報告があり、ガイドラインは繰り返しの長期使用に注意を促している(同・Clinical Question 4-2)。米国整形外科学会も、使いすぎるとひじの外側の骨(外側上顆)を弱めるおそれがあるため、注射はごく控えめにすべきとしている。
注射を受けるかどうかは、これらの点を主治医と相談して決めてください。
手術が検討されるのは
症状が6〜12か月続き、手術をしない治療で良くならない場合に、手術が検討されることがあります(英国の公的医療情報・米国整形外科学会)。日本のガイドラインは、こうした人への手術(直視下・鏡視下)を弱く推奨しています(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Clinical Question 4-10・4-11)。ただし、手術をしない治療と比べて有効であることを示した論文はないとしています(同・Clinical Question 4-10)。
米国整形外科学会によると、手術の成功率は80〜90%で、スポーツへの復帰は手術から4〜6か月が目安です。筋力の低下が残ることも珍しくないとされています。
ここから下は、医学的な説明ではなく、セルフケア用品の案内です。
出典・確認日
- 上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(改訂第2版)日本整形外科学会・日本肘関節学会 監修(Minds ガイドラインライブラリ)(自然経過(BQ5-1)・手術の推奨(CQ4-10・4-11)・治りにくくなる要因(BQ5-1・BQ1)・各治療の推奨(CQ4-1〜4-10)・注射の再発(BQ5-1)。第3版(2024)は刊行済みだが、2026-10-18時点で Minds に本文は未公開)
- 英国の公的医療情報(NHS)「Tennis elbow」(経過・受診の目安・理学療法と手術の時期・原因になる作業。NHSの最終レビュー日 2024-05-31)
- 英国の公的医療情報(NHS)「Elbow and arm pain」(すぐ受診が必要な症状。NHSの最終レビュー日 2024-01-26)
- 米国整形外科学会 OrthoInfo「Tennis Elbow (Lateral Epicondylitis)」(手術をしない治療で良くなる割合・注射の注意・似た病気の検査・手術の時期と成績・復帰の目安)