Aさん(64歳、男性、外国籍)は、1年前に日本に移住し、娘(36歳、会社員)と娘の夫(42歳、会社員、日本人)と3人家族である。娘の夫は海外に長期出張中で、娘は日本語での簡単な日常会話はできるが、Aさんはほとんど日本語が理解できない。Aさんは、2か月前から時々腰痛があり、市販薬で様子を見ていたが、徐々に腰痛が強くなり、娘に付き添われて受診した。検査の結果、肺癌と診断され、胸膜と腰椎への転移が見つかり、疼痛コントロールの目的で入院した。 入院後、医療従事者との日常会話は、電子端末による翻訳を活用している。疼痛に対しては、モルヒネ徐放製剤の内服が開始され、レスキュードーズとして、モルヒネ速放製剤の内服が指示されている。激しい腰痛が1日に数回あるが、レスキュードーズを使いたくないと話し痛みを我慢している。看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
患者が疼痛を我慢しているにもかかわらずレスキュードーズの使用を拒否している場合、その背景には必ず何らかの理由があります。副作用への懸念、依存症への恐怖、薬の効力に対する不信感、文化的な要因、過去の経験など、多様な可能性が考えられます。これらの具体的な理由を把握することなく、使用を強制したり、一般的な説明だけを行ったりしても、患者の不安は解消されず、適切な疼痛管理には繋がりません。まずは患者の言葉に耳を傾け、拒否の真意を理解しようと努めることが、信頼関係の構築と個別性のある看護計画立案の基盤となります。特に、言語の壁がある状況(電子端末による翻訳活用)では、コミュニケーションのすれ違いや誤解が生じやすいため、患者の意思を慎重に確認することが一層重要になります。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者が痛みを我慢している状況で、無理に使用する必要がないとだけ伝えるのは、痛みの原因や患者の不安を解消する根本的な解決にならないため、優先度は低いです。正しくは:患者の状況をさらに深く理解しようと努め、適切なアドバイスを検討する必要があります。選びやすい理由:患者の自己決定を尊重する姿勢に見えるため、選びやすいかもしれません。混同注意:患者の選択の尊重と、苦痛の緩和という看護の目的が混同される可能性があります。
- 2. 正解。患者が痛みを我慢している状況で、レスキュードーズの使用を拒否する背景には、副作用への不安、薬物依存への懸念、あるいは薬効への誤解など、様々な理由が考えられます。これらの理由を正確に把握することが、適切な疼痛管理と患者教育の第一歩となるため、最も優先度が高い対応です。
- 3. 使用方法の説明は重要ですが、患者が「使いたくない」と明確に意思表示している状況では、まずその理由を把握することが先行します。理由が不明なまま説明しても、患者の不安や誤解は解消されない可能性があります。正しくは:理由を確認した上で、必要に応じて説明を行うべきです。選びやすい理由:正しい知識を提供することは看護師の役割であるため、選びやすい選択肢です。混同注意:患者教育の必要性と、患者の個別状況への対応が混同される可能性があります。
- 4. 痛みの評価は重要ですが、患者が特定の薬剤の使用を拒否している状況では、まずその拒否理由の確認が優先されます。痛みの記録だけでは、根本的な問題解決には至りません。正しくは:理由を確認し、疼痛管理が進んだ段階で、客観的な評価のためにスケールの使用を促すのが適切です。選びやすい理由:痛みの客観的評価は疼痛管理の基本であるため、正しい対応のように思えます。混同注意:疼痛評価の重要性と、治療拒否に対するアプローチが混同される可能性があります。
国試ポイント
本問題は、患者の意思決定を尊重しつつ、疼痛管理における個別的アプローチの重要性を問うものです。単に医療知識を適用するだけでなく、患者の感情や背景にある理由を理解しようとする姿勢が求められます。特に、疼痛管理におけるレスキュードーズの役割と、患者がその使用を拒否する際の看護師の初期対応の優先順位がポイントとなります。
混同注意
疼痛管理における標準的な対応(使用説明、疼痛スケール)と、患者の明確な拒否反応への初期対応の優先順位が混同されやすい。患者の自主性を尊重することと、苦痛の緩和という看護の基本原則のバランスをどのように取るかが問われる。
次に同じ論点が出たら
患者の「使いたくない理由」を把握した後、その理由に応じて、正しい情報提供(副作用、依存性について)、誤解の解消、代替案の検討、心理的サポートなど、次の具体的な介入を判断します。また、言語の壁がある場合は、翻訳ツールの精度や、より適切なコミュニケーション手段の確保も検討します。
関連知識
疼痛管理の基本原則(WHO方式疼痛管理、NRSなどの疼痛評価スケール)、モルヒネ徐放製剤と速放製剤の使い分け、がん性疼痛看護、薬物依存に関する正しい知識、患者の権利と自己決定、多文化看護。