運動学習の効率で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
運動学習においては、「練習の特異性原理」が重要です。これは、練習の内容(動作、環境、感覚情報など)が、最終的に達成したい目標課題とどれだけ類似しているかによって、学習効果の転移のしやすさが決まるという考え方です。目標課題に類似した練習を行うことで、より効率的に学習が進み、実際の状況でのパフォーマンス向上に直結します。
選択肢ごとの解説
- 1. 覚醒レベルが低すぎると集中力が散漫になり学習効果が低下しますが、高すぎると緊張や不安が増大し、かえってパフォーマンスや学習効率が阻害されることがあります。学習には適切な覚醒レベルの維持が重要であり、これはヤーキーズ・ドッドソン法則として知られています。正しくは:覚醒レベルは、学習課題に応じて適切な状態を維持する方が良い。選びやすい理由:集中力を高めるためには、ある程度活発な状態が良いと直感的に考えられやすいため。混同注意:集中力が高まることと、覚醒レベルが常に高いことが同一視されやすい。
- 2. 過剰なフィードバックは、学習者が自身の内部エラー検出能力を発達させる機会を奪い、外部からの情報に過度に依存する状態(フィードバック依存性)を招く可能性があります。結果として、フィードバックがない状況でのパフォーマンス低下や学習の保持・転移の阻害につながることがあります。正しくは:フィードバックは、学習者の習熟度や学習段階に合わせて、頻度や種類、提供方法を調整することが望ましい。特に学習が進んだ段階では、フィードバックの頻度を徐々に減らすフェードアウト法や要約フィードバック、帯域フィードバックなどが有効とされています。選びやすい理由:指導者からの情報が多い方が、早く上達できると期待されやすいため。混同注意:フィードバックの『重要性』と、その『最適な量や頻度』が混同されやすい。
- 3. 練習課題の難易度が常に低すぎると、学習者は挑戦的な状況に直面せず、スキルや問題解決能力の向上につながりにくくなります。学習効果を最大化するためには、学習者の能力レベルに合わせて適度な挑戦が必要であり、これはチャレンジポイント仮説で説明されます。正しくは:練習課題の難易度は、学習者の能力や学習段階に応じて適切に調整する必要がある。簡単すぎず、かつ困難すぎないレベルで設定することが学習効果を高める。選びやすい理由:簡単な方が成功体験を得やすく、モチベーションが維持されると誤解されやすいため。混同注意:学習初期の簡単な課題(シェーピング初期段階など)と、長期的な学習効果を混同しやすい。
- 4. 多様な練習(ランダム練習)は、異なる運動課題を不規則な順序で行うことで、文脈干渉効果により学習の保持や汎化に有効とされていますが、これは主に基本的な動作が習得された後の学習中期から後期に効果を発揮すると言われています。学習の初期段階では、単一の課題を繰り返し集中的に行う集中練習(ブロック練習)の方が、動作の習得自体は速いことが多いです。正しくは:多様な練習は、基本的な動作パターンがある程度習得された後の学習中期から後期に行うことで、長期的な学習効果(保持・転移)を促進する。選びやすい理由:様々な経験を積んだ方が、応用力がつきそうだと直感的に考えられやすいため。混同注意:集中練習と多様練習の適用時期と、それぞれの効果(習得速度と保持・転移)が混同されやすい。
- 5. 正解。この記述は「練習の特異性原理」を指しています。練習内容が目標とする実際の課題と類似していればいるほど、練習で培われたスキルや経験が直接的に転移しやすくなり、その課題におけるパフォーマンス向上や学習の効率化に繋がります。
国試ポイント
運動学習における練習方法やフィードバック、学習者の状態に関する基本的な知識を問う問題です。特に、運動学習理論の主要な概念(ヤーキーズ・ドッドソン法則、フィードバックの種類と頻度、チャレンジポイント仮説、文脈干渉効果、練習の特異性など)を理解し、それぞれが学習効果にどう影響するかを把握しているかが問われます。
混同注意
運動学習の様々な理論(文脈干渉効果、チャレンジポイント仮説、フィードバックの最適化、覚醒度など)の適用時期や最適な条件、効果が混同されやすいです。例えば、学習初期には集中練習が有効な場合が多いことと、長期的な保持や汎化には多様練習が有効であることなど、それぞれの段階に応じた効果の違いを正確に理解する必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出題される場合、運動学習の各理論について、具体的な臨床場面や学習段階と結びつけて理解しているかを問われる可能性が高いです。例えば、「複雑な動作を段階的に習得させるための練習方法(シェーピング、チャンキング)はどれか」「学習後期に効果的なフィードバックの与え方は何か」といった応用的な問いや、複数の理論を組み合わせたシナリオ問題が出題されることも考えられます。
関連知識
運動学習の原理(練習の特異性、文脈干渉効果、シェーピング、チャンキング)、フィードバックの種類とタイミング(内的フィードバック、外的フィードバック、即時フィードバック、遅延フィードバック、要約フィードバック、帯域フィードバック)、運動制御理論、ヤーキーズ・ドッドソン法則、チャレンジポイント仮説。