47歳の女性。抗リン脂質抗体症候群の既往がある。右変形性膝関節症に対して高位脛骨骨切り術を3日前に受けた。右大腿部から足部まで発赤を伴う腫脹を認め、Homans徴候陽性である。術後に実施した主な血液検査の結果を表に示す。術後の合併症として考えられるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
抗リン脂質抗体症候群は、血栓形成傾向が非常に高い疾患です。加えて、高位脛骨骨切り術は下肢の大きな手術であり、術後は臥床や局所の血流滞留などにより深部静脈血栓症のリスクが著しく上昇します。右大腿部から足部までの広範な発赤を伴う腫脹と、ホーマンズ徴候陽性という特徴的な身体所見が合致することから、最も考えられる合併症は深部静脈血栓症です。血液検査データは凝固系亢進を示唆する可能性もありますが、直接的な診断には画像診断が必要です。しかし、臨床所見と既往歴から本疾患を強く疑うべきです。
選択肢ごとの解説
- 1. 蜂窩織炎も発赤と腫脹を伴いますが、通常は疼痛や熱感を強く伴い、ホーマンズ徴候は陰性です。また、抗リン脂質抗体症候群の既往がリスク因子とはなりません。血液検査データだけでは鑑別が難しいですが、リスク因子とホーマンズ徴候の陽性から深部静脈血栓症の可能性が高いです。正しくは:深部静脈血栓症ではない場合、発熱や局所の強い疼痛、倦怠感などを伴い、炎症反応がさらに顕著になることがあります。選びやすい理由:発赤と腫脹という症状が共通しているため、誤って選択しがちです。混同注意:感染症と血栓症の鑑別が難しい場合に混同しやすいです。
- 2. リンパ浮腫は術後早期に発症することもありますが、発赤は通常伴わず、ホーマンズ徴候も陰性です。抗リン脂質抗体症候群との直接的な関連も薄いです。正しくは:リンパ浮腫の場合、浮腫は認められますが、発赤やホーマンズ徴候は通常見られず、炎症反応の亢進も限定的です。選びやすい理由:下肢の腫脹という点で類似性があるため、迷う可能性があります。混同注意:単純な術後浮腫と混同しやすいですが、発赤とホーマンズ徴候が重要な鑑別点です。
- 3. 化膿性関節炎は高位脛骨骨切り術の術後合併症として考えられますが、発赤と腫脹は大腿部から足部まで広範囲に及ぶことは少なく、関節局所の疼痛や発熱が主症状です。ホーマンズ徴候は陰性であり、抗リン脂質抗体症候群が直接的なリスク因子とはなりません。正しくは:化膿性関節炎であれば、関節の強い疼痛、発熱、関節液の貯留、炎症反応の著しい上昇が認められますが、広範な下肢全体の腫脹やホーマンズ徴候は典型的ではありません。選びやすい理由:術後感染症の一種として選択肢として考えられますが、症状の広がり方が異なります。混同注意:他の感染症(蜂窩織炎など)と混同しやすいですが、関節局所の症状か広範な症状かで見分けられます。
- 4. うっ血性心不全も下肢の浮腫を引き起こすことがありますが、通常は両側性で、発赤は伴いません。ホーマンズ徴候も陰性です。抗リン脂質抗体症候群は血栓症のリスク因子であり、心不全の直接的なリスク因子ではありません。正しくは:うっ血性心不全では、両側性の下肢浮腫、呼吸困難、体重増加、心拡大などが主な症状となります。発赤やホーマンズ徴候は認められません。選びやすい理由:下肢の腫脹という点で共通しますが、発赤の有無と片側性・両側性の違いが重要です。混同注意:循環器系の疾患であるため、関連性を疑うかもしれませんが、症状の特異性が異なります。
- 5. 正解。患者は抗リン脂質抗体症候群という血栓傾向を持つ疾患の既往があります。高位脛骨骨切り術は下肢の手術であり、術後は臥床による活動低下や組織損傷による凝固系亢進などにより深部静脈血栓症のリスクが高い状態です。右大腿部から足部にかけての発赤を伴う腫脹、そしてホーマンズ徴候陽性は深部静脈血栓症に特徴的な所見です。これらの情報から、術後の合併症として最も考えられるのは深部静脈血栓症です。
国試ポイント
本問題は、既往歴、術式、術後の身体所見(発赤を伴う腫脹、ホーマンズ徴候)、および血液検査結果から、疾患を正確に鑑別する能力を問うものです。特に、抗リン脂質抗体症候群が血栓症のリスク因子であることを理解しているか、高位脛骨骨切り術後の合併症として深部静脈血栓症を想起できるかが重要です。ホーマンズ徴候の臨床的意義も問われています。
混同注意
蜂窩織炎(発赤と腫脹があるため)、リンパ浮腫(下肢の腫脹があるため)と混同しやすいですが、既往歴、発赤の性質、ホーマンズ徴候の有無が鑑別の鍵となります。蜂窩織炎は感染症であり発熱や疼痛がより顕著で、リンパ浮腫は通常発赤やホーマンズ徴候を伴いません。
次に同じ論点が出たら
深部静脈血栓症を強く疑うため、直ちに下肢静脈エコー検査などの画像診断を手配し、診断が確定すれば速やかに抗凝固療法を開始する必要があります。理学療法としては、DVTの疑いがある期間は患肢のマッサージを避け、絶対安静を指示される可能性があります。診断確定後、病態に応じて理学療法を開始します。
関連知識
深部静脈血栓症のリスク因子(Virchowの3徴:血管内皮損傷、血流うっ滞、血液凝固能亢進)、高位脛骨骨切り術後の一般的な合併症、抗リン脂質抗体症候群の病態生理、ホーマンズ徴候の意義と限界、深部静脈血栓症の診断(Dダイマー、下肢静脈エコー、造影CTなど)と治療(抗凝固療法)。