ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染で生じにくいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
クロイツフェルト・ヤコブ病は、プリオン病の一種であり、HIV感染とは病原体および発症機序が全く異なります。HIV感染症では、ウイルス自体の影響や免疫不全による日和見感染症、腫瘍などが様々な臓器に影響を及ぼしますが、クロイツフェルト・ヤコブ病の発症リスクを高める直接的な証拠はありません。一方、他の選択肢である末梢神経障害、無菌性髄膜炎、ニューモシスチス肺炎、進行性多巣性白質脳症は、いずれもHIV感染症に関連して高頻度に見られる病態です。
選択肢ごとの解説
- 1. HIV感染では、ウイルス自体による直接的な影響や、抗HIV薬の副作用として末梢神経障害が高頻度に発生します。特に、痛みやしびれを伴う多発性神経障害がよく見られます。正しくは:HIV感染では末梢神経障害は生じやすい。選びやすい理由:神経系の合併症は複雑なため、一部の学生は生じにくいと誤解するかもしれない。混同注意:他の神経変性疾患と混同する可能性。
- 2. HIV感染の急性期(急性HIV症候群)には、ウイルスが中枢神経系に侵入することで無菌性髄膜炎を発症することがあります。これは初期症状の一つとして知られています。正しくは:HIV感染では無菌性髄膜炎は生じやすい。選びやすい理由:「無菌性」という言葉から、ウイルス感染との関連が薄いと誤解するかもしれない。混同注意:細菌性髄膜炎と混同する可能性。
- 3. 正解。クロイツフェルト・ヤコブ病はプリオン病の一種で、異常プリオン蛋白の蓄積によって引き起こされる進行性の神経変性疾患です。HIV感染とは異なる病原体と機序で発症し、HIV感染症に特有または高頻度に見られる合併症ではありません。正しくは:クロイツフェルト・ヤコブ病はHIV感染とは直接的な関連がなく、生じにくい病態である。選びやすい理由:他の神経変性疾患と混同し、HIVと関連があると考えるかもしれない。混同注意:進行性多巣性白質脳症(PML)などのHIV関連神経疾患と混同する可能性がある。
- 4. ニューモシスチス肺炎(PCP)は、免疫不全状態にある患者、特にHIV感染者でCD4陽性T細胞数が著しく減少した場合に発症する日和見感染症の代表的な疾患です。HIV感染症の診断基準や重症度を評価する上でも重要な指標となります。正しくは:HIV感染ではニューモシスチス肺炎は非常に生じやすい(日和見感染症の代表例)。選びやすい理由:馴染みのない病名であるため、生じにくいと判断する可能性。混同注意:他の肺炎や呼吸器感染症と混同する可能性。
- 5. 進行性多巣性白質脳症(PML)は、JCウイルスが脳のオリゴデンドロサイトに感染し、破壊することで生じる中枢神経系の脱髄疾患です。重度の免疫不全状態にあるHIV感染者において発症リスクが高く、生命予後にかかわる重篤な日和見感染症の一つです。正しくは:HIV感染では進行性多巣性白質脳症は生じやすい(日和見感染症の一つ)。選びやすい理由:神経系の疾患であるため、他の神経疾患と区別がつきにくい。混同注意:他のウイルス性脳炎や神経変性疾患と混同する可能性。
国試ポイント
本問題は、HIV感染症に伴う様々な合併症(特に日和見感染症や神経合併症)に関する知識を問うものです。HIV感染者の免疫不全状態がどのような疾患を引き起こすかを理解しているか、また、特定の神経変性疾患との鑑別ができるかがポイントとなります。
混同注意
HIV感染症に伴う中枢神経系合併症(HIV脳症、PML、クリプトコッカス髄膜炎など)と、HIVとは直接関連しない神経変性疾患(クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病など)の区別が混同しやすい。特に、PMLとクロイツフェルト・ヤコブ病はともに進行性の神経障害をきたすため、混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、HIV感染症で『生じやすい疾患』の組み合わせや、各疾患の病態・原因病原体を問う問題が予想されます。特に、CD4陽性T細胞数と関連の深い日和見感染症の種類や、抗HIV薬(ART)導入後の合併症の変化についても注意が必要です。
関連知識
HIV関連神経疾患:HIV脳症、真空脊髄症、末梢神経障害、無菌性髄膜炎。HIV関連日和見感染症:ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、クリプトコッカス症、トキソプラズマ脳症、進行性多巣性白質脳症(PML)。プリオン病:クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー、致死性家族性不眠症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病。