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病気の解説

中枢性尿崩症

まず相談する診療科内分泌・代謝内科
この解説の項目8項目

緊急性の高い症状

中枢性尿崩症では、失った水分を補いきれないと急に脱水が進み、血圧が下がってショックの状態になることがあります(MSDマニュアル家庭版)。重い脱水は、けいれんや脳の障害を起こし、命にかかわることもあるとされています(NIDDK)。

  • 頭がぼんやりする、混乱している
  • めまいがする、体がだるく動きが鈍い
  • 立ち上がるとふらつく、気を失う

このような様子があるときは、すぐに医療機関を受診してください(NIDDK)。意識がもうろうとしている、けいれんが起きた、ぐったりして動けないなど重い場合は、ためらわず救急車(119番)を呼んでください。重い脱水は病院での治療が必要とされています(英国の公的医療情報)。

出典:MSDマニュアル家庭版「バソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)」、NIDDK「Diabetes Insipidus」、英国の公的医療情報

当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。

受診の目安

  • はっきりした理由がないのに、いつものどが渇いて水分をたくさん飲んでしまうときは、受診してください(英国の公的医療情報)。
  • 昼も夜もトイレが近く、色の薄い尿がたくさん出る、夜中に何度も尿で目が覚めるときも相談のきっかけになります(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)。
  • 脳や下垂体の手術を受けた後や、頭を強く打った後に、急に尿が増えてのどが渇くようになったときは、早めに担当の医師に伝えてください。手術や頭のけがは原因の一つとされています(NIDDK)(MSDマニュアル家庭版)。
  • 子どもは膀胱が小さいため大人より尿の回数が多いものですが、1日10回を超えるようなら医師に相談するよう勧められています(英国の公的医療情報)。

相談先は、ホルモンの病気を診る内分泌内科などです。専門医として内分泌の医師や腎臓の医師に紹介されることがあります(NIDDK)。のどの渇きや尿の増加は糖尿病など別の病気でも起こり、症状だけで病名は判断できません。尿と血液の検査で区別します(MedlinePlus)。自己判断で水分を控えたりせず、医師の診察を受けてください。

基本

中枢性尿崩症とは

中枢性尿崩症は、尿の量を減らして体に水分をとどめる働きをもつホルモン「バソプレシン(抗利尿ホルモン)」が不足し、ほとんど水のような薄い尿が大量に出てしまう病気です(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。バソプレシンは脳の視床下部で作られ、下垂体(下垂体後葉)から血液中に出て、腎臓に働きかけます(MSDマニュアル家庭版)。

名前に「尿崩症」とありますが、血糖値が高くなる糖尿病とは関係のない別の病気で、血糖は正常です(NIDDK)。まれな病気で、世界でおよそ2万5千人に1人とされています(NIDDK)(英国の公的医療情報)。

英国では「AVP欠乏症(AVP deficiency)」と呼ばれるようになっており、以前の呼び名が中枢性(頭蓋性)尿崩症とされています(英国の公的医療情報)。日本語の医療情報では「バソプレシン分泌低下症」とも表記されます(MSDマニュアル家庭版)。なお、ホルモンが出ていても腎臓が反応しないタイプ(腎性尿崩症、バソプレシン抵抗症)は別のものとして区別されます(MSDマニュアル家庭版)(英国の公的医療情報)。

主な症状

  • 強いのどの渇き:水分をたくさん、何度も飲みたくなります。冷たい氷水を好む人もいます(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
  • 尿の量と回数が増える:色の薄い尿が大量に出ます。夜間にトイレに起きる回数が増えることが目立つ場合があります(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
  • 1日に飲む水分が3リットルから30リットルほどにもなることがあります(MSDマニュアル家庭版)。
  • 飲んでは出す状態が続くため、睡眠がさまたげられたり、おねしょが起きたりすることがあります(MedlinePlus)。
  • 脱水:水分が足りなくなると、口の渇き、立ちくらみ、だるさ、考えがまとまらない、吐き気、失神などがみられることがあります(NIDDK)。

原因・なりやすい要因

脳の視床下部や下垂体が傷つき、バソプレシンが十分に作られない・出されないことで起こります(NIDDK)(英国の公的医療情報)。原因として次のようなものが挙げられています。

  • 視床下部・下垂体の手術の際に起こる損傷(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)
  • 頭のけが(特に頭蓋底の骨折)(MSDマニュアル家庭版)
  • 脳の腫瘍(MSDマニュアル家庭版)(英国の公的医療情報)
  • サルコイドーシス、結核、一部の脳炎・髄膜炎などの病気(MSDマニュアル家庭版)
  • 脳動脈瘤や脳の動脈が詰まること(MSDマニュアル家庭版)
  • 自己免疫の病気や、生まれつきの遺伝子の変化(NIDDK)

一方で、はっきりした原因が見つからないこともあり、およそ3人に1人とされています(英国の公的医療情報)。大人に多いものの、どの年齢でも起こりえます(英国の公的医療情報)。

検査と診断

診断

  • 尿検査で、尿が薄すぎないか、糖が出ていないか(糖尿病ではないか)を確かめます(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
  • 血液検査で、ナトリウムなどの値を調べます。ナトリウムが高めになることがあります(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
  • 水制限試験:医師の管理のもとで一定時間水分をとらずに、尿の量や濃さ、体重などの変化をみる検査で、もっとも役に立つとされています。血圧が下がるなど危険な変化があればすぐに中止します(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。
  • そのあとバソプレシンを注射し、尿が濃くなるかどうかで、腎臓が反応しないタイプと区別します(MSDマニュアル家庭版)。
  • 視床下部や下垂体の傷や腫瘍を探すため、MRI検査を行うことがあります(NIDDK)。

水制限試験は脱水の危険があるため、自分で試さないでください。

治療

治療

  • 水分をしっかりとること:脱水を防ぐことが治療の基本とされています(NIDDK)。症状が軽い場合は、水を多めに飲む以外の治療がいらないこともあります(英国の公的医療情報)。
  • バソプレシンを補う薬:バソプレシンに似た働きをもつ「デスモプレシン」が主に使われます。鼻から使うスプレーのほか、飲み薬や注射の形もあります(MSDマニュアル家庭版)(NIDDK)。薬の量は、体の水分のバランスと尿の量を見ながら医師が調整します(MSDマニュアル家庭版)。
  • 手術中や意識がはっきりしない場合などは、注射でバソプレシンを補うことがあります(MSDマニュアル家庭版)。
  • 治療の方法は、原因によって異なります(MedlinePlus)。

薬が多すぎると体に水分がたまり、むくみなどが起こることがあるとされています(MSDマニュアル家庭版)。どの治療をどのように行うかは、病状に応じて医師が判断します。

日常生活の注意

  • のどが渇いたら我慢せず、水分をとれるようにしておくことが大切です。脱水は十分な水分補給でたいてい防げるとされています(NIDDK)。
  • 食事が病気の原因になったり、病気を防いだりするわけではないとされています(NIDDK)。
  • 治療の計画に沿って過ごすことで、多くの人は重い問題を防ぎ、ふだんどおりの生活が送れるとされています(NIDDK)。

水分のとり方や薬の使い方は、担当の医師の指示を優先してください。

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出典

MSDマニュアル家庭版「バソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)」 / NIDDK「Diabetes Insipidus」 / MedlinePlus「Diabetes Insipidus」 / NHS「Diabetes insipidus」
「英国の公的医療情報」と記した部分: Contains public sector information licensed under the Open Government Licence v3.0.(英語の公的情報を日本語に翻訳・要約して含みます)
内容の確認日:2026-10-16(次回確認予定 2027-04-16)。複数の公的情報源の事実をもとに medimichi が独自にまとめています。

この記事は一般的な医療情報の解説で、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。緊急時は 119 / 医療機関へ。