腎臓移植後に肺炎をきたした患者の喀痰のGram染色標本(別冊No. 12A)及びKinyoun染色標本(別冊No. 12B)を別に示す。推定されるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下図Aのグラム染色では、細長く、不規則に分枝したグラム陽性桿菌が多数観察されます。下図BのKinyoun染色では、これらの菌体が赤く染まっており、弱抗酸性を示していることがわかります。腎臓移植後の患者は免疫抑制状態にあり、日和見感染症のリスクが高いです。グラム陽性分枝状桿菌であり、弱抗酸性を示すという特徴から、Nocardia属(ノカルジア菌)による肺ノカルジア症が最も強く推定されます。
選択肢ごとの解説
- 1. Bacillus属は通常、グラム陽性桿菌で、画像のような分枝状の形態やKinyoun染色陽性の特徴を示しません。炭疽菌などの一部が肺炎を起こす可能性はありますが、形態学的に本選択肢は画像と一致しません。正しくは:グラム陽性桿菌で、芽胞を形成し、非分枝状の形態を示す。選びやすい理由:グラム陽性桿菌である点では共通しますが、形態とKinyoun染色の結果が異なります。混同注意:グラム陽性桿菌という点だけで判断すると誤りやすいです。
- 2. Clostridium属はグラム陽性桿菌で芽胞を形成しますが、通常は分枝状の形態を呈さず、嫌気性菌であることが多いです。Kinyoun染色で陽性となることもありません。正しくは:グラム陽性桿菌で、芽胞を形成し、嫌気性菌であり、分枝状の形態は示さない。選びやすい理由:特定の状況下で肺炎の原因となりうるものの、グラム染色やKinyoun染色の特徴が異なります。混同注意:嫌気性菌であるため、喀痰からの検出自体が難しい場合もあります。
- 3. Corynebacterium属はグラム陽性桿菌で、V字型や柵状配列を示すことがありますが、分枝状の形態は通常見られません。また、Kinyoun染色で陽性になることはありません。正しくは:グラム陽性桿菌で、V字型や柵状配列を示すことが多く、分枝状の形態は示さない。選びやすい理由:ジフテリア菌など、ヒトに病原性を示すものがあるため、鑑別の対象となりえますが、画像とは形態が一致しません。混同注意:他のグラム陽性桿菌との形態学的鑑別が重要です。
- 4. Listeria属はグラム陽性桿菌で、短桿菌の形態をとりますが、分枝状の形態は示しません。また、Kinyoun染色で陽性になることもありません。腎移植患者でも感染は起こりえますが、画像所見とは一致しません。正しくは:グラム陽性短桿菌で、分枝状の形態は示さない。選びやすい理由:免疫抑制状態の患者で感染症の原因となる可能性はあるため、選択肢として考慮されるかもしれませんが、画像所見とは異なります。混同注意:グラム陽性桿菌という共通点だけで判断しないように注意が必要です。
- 5. 正解。Nocardia属はグラム陽性で、細長い分枝状の形態を呈する桿菌であり、弱抗酸性を示すためKinyoun染色で陽性に染まります。腎臓移植後の免疫抑制状態の患者では日和見感染としてノカルジア症を発症しやすく、肺ノカルジア症は一般的な病態です。示されたグラム染色標本で細く分枝した桿菌が、Kinyoun染色標本で赤く染まっていることから、Nocardia属が強く推定されます。正しくは:Nocardia属はグラム陽性、分枝状桿菌で、弱抗酸性を示すためKinyoun染色で陽性となる。選びやすい理由:アクチノミセス属も分枝状を示しますが、Kinyoun染色は陰性です。混同注意:類似の形態を示す他の菌種(特に放線菌)との鑑別には、抗酸性染色の結果が決定的に重要です。
国試ポイント
本問題は、グラム染色とKinyoun染色という複数の染色結果を統合して微生物を同定する能力を問うものです。特に、免疫抑制患者における日和見感染の原因菌とその特徴を理解しているかが重要となります。Nocardia属の形態学的特徴(分枝状桿菌)と染色性(グラム陽性、弱抗酸性)は鑑別の鍵となります。
混同注意
分枝状のグラム陽性桿菌にはアクチノミセス属(放線菌)もありますが、アクチノミセス属は抗酸性を示しません(Kinyoun染色陰性)。また、マイコバクテリウム属も抗酸性を示しますが、通常は非分枝状の桿菌であり、形態が異なります。
次に同じ論点が出たら
喀痰からの分離培養を行い、菌種の確定診断を行います。感受性試験も行い、適切な抗菌薬治療を選択します。
関連知識
ノカルジア症は土壌や水中などに常在するNocardia属菌による感染症で、特に細胞性免疫が低下した患者(臓器移植後、悪性腫瘍、HIV感染など)に日和見感染として発症しやすいです。肺に感染しやすく、結核に似た病変を形成することがあります。診断には培養と、グラム染色および抗酸性染色(チール・ネルゼン染色やKinyoun染色)が有用です。