動脈血ガス分析の所見を示す。
| pH | 7.32 |
| Na⁺ | 142 mEq/L |
| Cl⁻ | 106 mEq/L |
| HCO₃⁻ | 24 mEq/L |
考えられる病態はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
提示された動脈血ガス分析の結果では、pH 7.32でアシドーシスが認められます。HCO3- は24 mEq/Lと代償性に増加しているように見えますが、代謝性アシドーシスが基盤にあると考えられます。アニオンギャップ (AG) を計算すると、AG = Na+ - (Cl- + HCO3-) = 142 - (106 + 24) = 12 mEq/L となり、これは正常範囲内です。正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシス(高クロール性アシドーシスとも呼ばれる)の主要な原因の一つが尿細管性アシドーシスであり、これが最も適切な診断と考えられます。選択肢の他の病態は高アニオンギャップ代謝性アシドーシスであるか、またはアルカローシスを示すため、今回の所見には合致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. 尿毒症では、腎機能低下により酸性代謝産物の排泄が障害され、アシドーシス(pH低下)を呈しますが、アニオンギャップが増大する高アニオンギャップ代謝性アシドーシスとなります。本問題の所見では、AG = Na - (Cl + HCO3) = 142 - (106 + 24) = 12 mEq/Lとなり、正常範囲内(通常8〜16 mEq/L)であるため、高アニオンギャップ代謝性アシドーシスは考えにくいです。正しくは:アニオンギャップが増大している場合、尿毒症も鑑別疾患になります。選びやすい理由:腎不全が関連するアシドーシスなので、選択肢として考慮するかもしれませんが、アニオンギャップを確認することが重要です。混同注意:尿細管性アシドーシスと混同しやすいですが、AGの有無が鑑別点です。
- 2. 乳酸アシドーシスは高アニオンギャップ代謝性アシドーシスであり、アニオンギャップが増大します。本問題のAG = 12 mEq/Lは正常範囲内であり、高アニオンギャップ代謝性アシドーシスを示す所見ではないため、乳酸アシドーシスは考えにくいです。正しくは:アニオンギャップが増大している場合、乳酸アシドーシスも鑑別疾患になります。選びやすい理由:アシドーシスなので、代謝性アシドーシスの一種として選択肢として考慮するかもしれませんが、アニオンギャップが正常範囲であることを確認する必要があります。混同注意:他の高アニオンギャップ代謝性アシドーシスと混同しやすいです。
- 3. 正解。動脈血ガス分析ではpH 7.32でアシドーシスを示し、HCO3- は24 mEq/Lで代償されています。アニオンギャップ (AG) は Na+ - (Cl- + HCO3-) = 142 - (106 + 24) = 12 mEq/L と計算され、正常範囲内です。尿細管性アシドーシスは、腎臓の尿細管において酸の排泄障害またはHCO3-の再吸収障害が生じることで、正常アニオンギャップ性の代謝性アシドーシス(高クロール性アシドーシス)を呈します。この患者のCl-値が106mEq/Lとやや高めであることも、高クロール性アシドーシスを示唆します。正しくは:この所見は尿細管性アシドーシスに合致します。選びやすい理由:アシドーシスがあり、アニオンギャップが正常であるため、この病態が最も適切です。混同注意:高アニオンギャップアシドーシスと混同しやすいですが、アニオンギャップの計算が鑑別の鍵です。
- 4. 原発性アルドステロン症では、アルドステロン過剰によりカリウム排泄が亢進し、低カリウム血症をきたし、それに伴って代謝性アルカローシス(pH上昇、HCO3-上昇)を呈することが多いです。本問題ではアシドーシス(pH低下)であり、この病態とは一致しません。正しくは:原発性アルドステロン症では代謝性アルカローシスがみられます。選びやすい理由:電解質異常を伴う疾患なので、誤って選択するかもしれませんが、アルドステロン症は通常アルカローシスです。混同注意:アシドーシスとアルカローシスの区別ができていないと誤りやすいです。
- 5. 糖尿病性ケトアシドーシスは高アニオンギャップ代謝性アシドーシスであり、血中のケトン体が増加することでアニオンギャップが増大します。本問題のAG = 12 mEq/Lは正常範囲内であり、高アニオンギャップ代謝性アシドーシスを示す所見ではないため、糖尿病性ケトアシドーシスは考えにくいです。正しくは:アニオンギャップが増大している場合、糖尿病性ケトアシドーシスも鑑別疾患になります。選びやすい理由:アシドーシスなので選択肢として考慮するかもしれませんが、アニオンギャップが正常であることを確認する必要があります。混同注意:他の高アニオンギャップ代謝性アシドーシスと混同しやすいです。
国試ポイント
動脈血ガス分析のデータから、アシドーシスまたはアルカローシスの種類(代謝性か呼吸性か)、そして代謝性アシドーシスであればアニオンギャップを計算し、その結果に基づいて病態を鑑別できるかどうかが問われています。特に、正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシスの鑑別疾患を理解していることが重要です。
混同注意
高アニオンギャップ代謝性アシドーシスと正常アニオンギャップ代謝性アシドーシスの鑑別。特に、乳酸アシドーシスや糖尿病性ケトアシドーシスといった有名な高アニオンギャップアシドーシスと混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まずpHからアシドーシスかアルカローシスかを判断し、次にPaCO2とHCO3-から呼吸性か代謝性かを判断します。代謝性アシドーシスであれば、アニオンギャップを計算し、正常範囲内か増大しているかを確認することで、鑑別疾患を絞り込むことになります。
関連知識
アシドーシス・アルカローシスの病態生理、動脈血ガス分析の読み方(pH、PaCO2、HCO3-の関係)、アニオンギャップの計算と意義、正常アニオンギャップ代謝性アシドーシス(高クロール性アシドーシス)と高アニオンギャップ代謝性アシドーシスの原因疾患(尿毒症、糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、薬物中毒など)。