DNAシークエンサーの原理(Sanger法)について誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
サンガー法の根幹は、ジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)がDNA合成鎖に取り込まれると、3'-ヒドロキシル基がないために次のヌクレオチドが付加できず、DNA鎖の伸長がそこで停止する特性を利用している点にある。したがって、「DNA伸長は継続する」という選択肢5の記述は誤りである。この停止反応によって、異なる長さのDNA断片が生成され、電気泳動で分離することで配列が決定される。
選択肢ごとの解説
- 1. サンガー法はDNA配列を直接読み取るため、比較対象となるリファレンス配列があれば、塩基の欠失を識別できる。特に、小さな欠失や既知の欠失部位の確認には有効である。選びやすい理由:大規模な欠失や複雑な構造変化の検出には次世代シーケンサーが優れるため、サンガー法では検出できないと誤解する可能性がある。混同注意:次世代シーケンサーの検出能力や、サンガー法が主に点変異検出に用いられるという一般的な知識。
- 2. 現在の自動DNAシークエンサーで広く採用されているサンガー法は、各ddNTPに異なる蛍光色素を結合させた「ダイターミネーター」を用いることで、1回の反応で4種類の塩基すべてを検出可能である。選びやすい理由:初期のラジオアイソトープを用いたサンガー法と混同し、ダイターミネーター法が唯一の方法ではないと考えるかもしれない。混同注意:初期サンガー法(放射性同位体標識)と自動サンガー法(蛍光標識、ダイターミネーター法)。
- 3. サンガー法は、DNAポリメラーゼによるプライマー伸長反応を利用する。反応液には、通常のDNA合成に必要なdNTPに加えて、DNA鎖の伸長を停止させるddNTPが少量混合される。この反応は効率化のため、温度サイクルを繰り返すサイクルシーケンスとして実施される。選びやすい理由:ddNTPがPCRの増幅反応自体を阻害するため、PCRとは異なる反応だと厳密に解釈するかもしれない。しかし、サイクルシーケンスはPCRの原理を応用している。混同注意:純粋なDNA増幅のためのPCRと、配列決定のためのサイクルシーケンスの区別。
- 4. 電気泳動は、DNA断片をその長さ(分子量)に基づいて分離する技術である。ゲルやキャピラリー中のポリマーマトリックスを移動する際、短いDNA断片ほど抵抗が少なく、電場によって早く移動する。選びやすい理由:特にひっかけ要素はなく、電気泳動の基本的な知識である。混同注意:特に混同しやすい点はないが、電気泳動の原理が不明確であれば間違える可能性。
- 5. 正解。ddNTPには3'-ヒドロキシル基が存在しないため、DNAポリメラーゼがこれを取り込むと、その後のヌクレオチドが結合できなくなり、DNA鎖の伸長が停止する。これがサンガー法の原理であり、この記述は誤りである。正しくは:「ジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)がDNA鎖に取り込まれると、DNAの伸長反応はそこで停止する。」選びやすい理由:dNTPとddNTPの名前が似ているため、その機能の違いを正確に理解していないと間違える可能性がある。混同注意:dNTP(通常のDNA合成を継続させる)とddNTP(DNA合成を停止させる)の機能。
国試ポイント
DNAシークエンスのサンガー法の原理、特にddNTPの機能とそれがDNA合成に与える影響を正確に理解しているかを問う問題。各ステップ(反応液の組成、サイクルシーケンス、電気泳動による分離、蛍光検出)の基本的な知識が問われている。
混同注意
dNTP(デオキシヌクレオチド三リン酸)とddNTP(ジデオキシヌクレオチド三リン酸)の構造と機能の違い。特に、3'-OH基の有無がDNA伸長に及ぼす決定的な影響。また、初期の放射性同位体標識法と現在の蛍光標識(ダイターミネーター)法の違い。
次に同じ論点が出たら
次回類似問題が出題された場合、サンガー法の各ステップでどのような物質が使われ、どのような反応が起こり、その目的は何かを問う問題に注意する。特に、ddNTP以外の反応試薬(プライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP)の役割や、検出方法(蛍光検出)の具体的な内容、得られた電気泳動パターンからの配列判読方法についても確認が必要。
関連知識
DNAの構造(特に3'-OH基の役割)。DNAポリメラーゼの機能とDNA複製。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の原理とサイクルシーケンスへの応用。電気泳動の原理(特にキャピラリー電気泳動)。次世代シーケンサー(NGS)との比較(サンガー法の得意分野と限界)。