RT-PCR法が診断に有用なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
慢性骨髄性白血病(CML)は、フィラデルフィア染色体と呼ばれる9番染色体と22番染色体の転座によって生じるBCR-ABL融合遺伝子が病態の根幹にあります。この融合遺伝子は異常なBCR-ABL融合mRNAとして発現し、異常なチロシンキナーゼを産生します。RT-PCR法は、このBCR-ABL融合mRNAを特異的に検出するために、まず逆転写酵素によってmRNAからcDNAを合成し、その後PCRで増幅するというステップを踏みます。これにより、CMLの診断確定や、治療後の微小残存病変(MRD)のモニタリングに極めて重要な役割を果たします。
選択肢ごとの解説
- 1. ターナー症候群は性染色体異数性(Xモノソミー)による疾患であり、核型分析(Gバンド法など)やFISH法、QFPCR法などが診断に用いられます。RT-PCR法は遺伝子発現や特定のRNAの検出に用いられるため、直接的な診断には適しません。正しくは:核型分析、FISH法、QFPCR法選びやすい理由:遺伝子に関連する疾患全般をPCRで診断できると誤解する可能性がある。混同注意:遺伝子変異の検出と遺伝子発現の検出。
- 2. ディジョージ症候群は22q11.2微細欠失症候群が原因で、FISH法やマイクロアレイCGH法などの細胞遺伝学的検査が診断に用いられます。RT-PCR法は遺伝子発現の解析に主眼があるため、染色体微細欠失の検出には直接的に用いられません。正しくは:FISH法、マイクロアレイCGH法選びやすい理由:先天性疾患が遺伝子検査で診断できると広義に捉えてしまう。混同注意:特定の遺伝子異常の検出と染色体構造異常の検出。
- 3. 真性赤血球増加症の主要な診断マーカーはJAK2遺伝子のV617F変異であり、これはDNAレベルでの変異です。この変異の検出には、通常のPCR法やシーケンシング、あるいは変異アレル特異的PCRなどが用いられます。RT-PCR法はRNAを介した遺伝子発現の解析に特化しており、直接的なDNA変異の検出には用いられません。正しくは:通常のPCR法、変異アレル特異的PCR、シーケンシング選びやすい理由:JAK2変異という遺伝子異常を聞いて、PCRの一種であるRT-PCRを連想してしまう。混同注意:DNA変異の検出とRNA発現の検出。
- 4. 正解。慢性骨髄性白血病(CML)の診断には、BCR-ABL融合遺伝子の検出が非常に重要です。この融合遺伝子は、染色体転座によって異常なキメラmRNAとして発現します。RT-PCR法は、このBCR-ABL融合mRNAを逆転写してcDNAを合成し、その後PCRで増幅することで検出するため、CMLの診断や治療効果モニタリングに非常に有用です。
- 5. プラダー・ウィリー症候群は15番染色体の一部欠失や片親性ダイソミー、インプリンティング異常などが原因で発症します。診断にはFISH法、マイクロアレイCGH法、メチル化特異的PCR(MS-PCR)などが用いられます。RT-PCR法は遺伝子発現の解析に特化しており、これらの遺伝子異常を直接検出する目的では通常用いられません。正しくは:FISH法、マイクロアレイCGH法、メチル化特異的PCR選びやすい理由:先天性症候群の診断には遺伝子検査が用いられるという一般的な知識から、RT-PCRも候補だと考えてしまう。混同注意:遺伝子発現の異常と遺伝子構造の異常(欠失、インプリンティング異常)。
国試ポイント
RT-PCR法がどのような疾患の診断に応用されるかを問う問題です。特に、遺伝子発現レベルでの異常、すなわち特定の融合遺伝子のmRNAやウイルスRNAの検出に用いられることを理解しているかが鍵となります。PCR法全般の知識だけでなく、逆転写(RT)のステップの意義を理解し、診断対象がRNAである疾患を結びつけられるかが問われます。
混同注意
RT-PCR法と通常のPCR法、FISH法、核型分析などの他の遺伝子検査法の適用範囲。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、RT-PCR法が「RNAを検出する」検査法であることを念頭に置き、選択肢の疾患が「RNAレベルでの異常」または「RNAウイルス」を診断対象としているかを判断します。
関連知識
PCR法の原理、遺伝子発現、融合遺伝子、mRNA、cDNA、DNAとRNAの違い、慢性骨髄性白血病の病態。