超音波検査における吸収〈減衰〉係数が最も大きいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
超音波が異なる媒質の境界面を通過する際、媒質間の音響インピーダンス差が大きいほど、より多くの超音波が反射されます。気体(空気)と軟部組織(筋肉、血液、脂肪、水)の間には極めて大きな音響インピーダンス差が存在するため、超音波の大部分が境界面で反射・散乱されます。さらに、気体そのものによる超音波エネルギーの吸収(減衰)も非常に大きいため、超音波は空気中をほとんど伝播できません。したがって、空気の吸収(減衰)係数はこれらの選択肢の中で最も高くなります。
選択肢ごとの解説
- 1. 筋肉組織は液体や脂肪に比べて減衰は大きいですが、空気ほどではありません。正しくは:筋肉の吸収係数は中程度であり、水や血液よりは高いものの、空気や骨に比べると大幅に低い値です。選びやすい理由:比較的密度が高く、複雑な構造を持つため、減衰が大きいと誤解されやすいかもしれません。混同注意:脂肪や血液など、他の軟部組織の音響特性と混同されることがあります。
- 2. 正解。超音波は気体と液体・固体との音響インピーダンス差が非常に大きいため、境界面で大部分が反射・散乱されます。また、気体内部での吸収も非常に大きく、診断用超音波は空気中をほとんど伝播できません。そのため、空気の吸収(減衰)係数は、他の選択肢と比べて圧倒的に高くなります。
- 3. 血液は主成分が水であるため、超音波の吸収係数は非常に小さく、良好な超音波伝播媒質です。正しくは:血液の吸収係数は水とほぼ同等であり、非常に低いです。選びやすい理由:体内にある液体として認識され、超音波の伝播に不利な要素があると誤解される可能性がありますが、実際はそうではありません。混同注意:他の体液や、吸収係数が中程度の軟部組織と混同されることがあります。
- 4. 脂肪の吸収係数は水や血液よりはわずかに高いですが、筋肉よりは低く、空気と比較すると圧倒的に小さいです。正しくは:脂肪の吸収係数は比較的低く、水よりは高いものの、空気とは比較にならないほど小さい値です。選びやすい理由:生体組織の中では特定の音響特性を持つため、減衰が大きいと誤解されることがありますが、実際は超音波の透過性は比較的良好です。混同注意:筋肉や他の軟部組織の音響特性と混同されることがあります。
- 5. 水は超音波を非常に良く透過させ、吸収係数が最も低い物質の一つです。超音波検査では、しばしばカップリング剤や描出の際に水が利用されます。正しくは:水は最も吸収係数が低く、超音波の伝播に適した物質です。選びやすい理由:最も低いと知っているため、他の低い減衰係数の物質と混同し、逆に高いと誤解することは少ないです。混同注意:生理食塩水などの液体と混同されることがあります。いずれも減衰係数は非常に低いです。
国試ポイント
超音波の物理的特性、特に生体組織における減衰(吸収と散乱)に関する基本的な知識が問われています。様々な生体組織の音響特性(音速、音響インピーダンス、減衰係数)を比較して理解しているかが重要です。特に、気体や骨の減衰が極めて大きいことは臨床上も重要であるため、頻出の知識です。
混同注意
音響インピーダンス、音速、反射係数、散乱係数といった超音波の物理量と、減衰係数の意味や大小関係が混同されやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出題される場合、各生体組織の「音速」や「音響インピーダンス」の大小関係、あるいは「反射係数が最も大きい生体組織の組み合わせ」などが問われる可能性があります。また、超音波の減衰が原因で生じる臨床上の問題点(例:肺や骨の深部が描出しにくい理由)や、特定のアーチファクト(例:音響陰影)について問われることも考えられます。
関連知識
音響インピーダンスの定義とその計算式(Z = ρc、ρ:密度、c:音速)。反射係数と透過係数。超音波の減衰に影響を与える要因(周波数、媒体の種類、温度など)。生体組織ごとの主要な超音波特性値(音速、音響インピーダンス、減衰係数)。超音波診断における音響陰影などのアーチファクトの発生原理。