61歳の女性。有機農業従事者。腹痛で来院し、虫卵検査を行った。糞便の直接塗抹標本(別冊No. 2)を別に示す。考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
下に示す画像は、厚い卵殻と表面の不規則な凹凸(乳頭状突起)が特徴的な回虫の受精卵を示しています。特に有機農業従事者という背景は、土壌を介した回虫感染のリスクが高いことを示唆しており、糞便中の虫卵検査でこの形態が確認されれば回虫感染と診断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。示された画像は、厚い卵殻を持ち、表面が波打つように凹凸している特徴的な回虫(Ascaris lumbricoides)の受精卵です。この形態は回虫卵に特有です。
- 2. 鉤虫卵は、一般的に薄い卵殻で、卵内容が分節した胚を持つ楕円形をしています。表面に凹凸はありません。正しくは:鉤虫卵は薄い卵殻で楕円形、卵内容が分節胚である。選びやすい理由:土壌との関連性から、鉤虫も考えられるが、形態が異なるため誤り。混同注意:回虫卵の未受精卵と混同する可能性もあるが、未受精卵はより不規則な形をしている。
- 3. 条虫卵は種類によって異なりますが、一般的に小型で、卵殻が厚いものや、卵蓋を持つもの、六鉤幼虫を含むものなど、回虫卵とは異なる形態をしています。正しくは:条虫卵は種類により形態が異なるが、回虫卵のような厚い凹凸のある卵殻ではない。選びやすい理由:農業従事という情報から、様々な寄生虫を考える中で、広く条虫を想定してしまう可能性がある。混同注意:他の消化管寄生虫卵全般と混同しがち。
- 4. 鞭虫卵は、特徴的な両端に栓(極栓)を持つレモン形をしています。回虫卵のようにはっきりとした凹凸のある卵殻ではありません。正しくは:鞭虫卵は両端に極栓を持つレモン形である。選びやすい理由:土壌感染型であるため、選択肢として考えやすい。混同注意:極栓を見落とすと他の卵と見間違える可能性。
- 5. 横川吸虫卵は、比較的小型で卵蓋を持ち、内部にミラシジウム(毛様体幼虫)を含む特徴があります。回虫卵のような厚く凹凸のある卵殻ではありません。正しくは:横川吸虫卵は小型で卵蓋を持ち、内部にミラシジウムを含む。選びやすい理由:吸虫も寄生虫の一種として、知識の混同から選択肢として考えられる。混同注意:肝吸虫卵など他の吸虫卵と混同しやすい。
国試ポイント
本問題は、糞便中の寄生虫卵の形態学的特徴を正確に識別できるかを問うものです。特に、代表的な消化管寄生虫である回虫の受精卵の形態を視覚的に判断できる知識が求められます。患者の職業(有機農業従事者)という情報から、感染経路と関連付けて寄生虫を推測する臨床的な考察力も問われます。
混同注意
回虫卵の未受精卵、鉤虫卵(土壌感染型寄生虫として)、他の消化管線虫卵(鞭虫卵など)の形態と混同しやすい。特に回虫の受精卵と未受精卵は形態が異なるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
同様の画像問題が出題された場合、まず虫卵の大きさ、形、卵殻の厚さ、表面の性状(滑らかか、凹凸があるか)、卵内容(未分化、分節胚、幼虫など)に注目し、これらの特徴を各寄生虫卵の典型的な形態と照合します。特に、特徴的な形態を持つ虫卵(例:鞭虫卵の極栓、吸虫卵の卵蓋、日本住血吸虫卵の側棘など)は鑑別の決め手となります。
関連知識
回虫(Ascaris lumbricoides)は土壌感染型の線虫で、糞便中に排出された虫卵が土壌中で成熟し、経口摂取されることで感染します。受精卵と未受精卵で形態が異なり、受精卵は厚い卵殻と特徴的な凹凸(乳頭状突起)を持ち、未受精卵はより大きく不規則な形状で卵殻の凹凸が不明瞭なことが多いです。感染は腹痛、栄養不良などを引き起こすことがあります。有機農業では化学肥料ではなく有機肥料(人糞などを含む)を使用することがあり、その場合は寄生虫卵に汚染された土壌との接触機会が増えるため、感染リスクが高まります。