検査まで検体を全血のまま冷蔵保存してもよいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
抗核抗体は、自己免疫疾患のスクリーニングに用いられる抗体で、血清や血漿中のIgG型抗体を検出します。検体(全血)を冷蔵保存しても、ある程度の期間であれば抗体価に大きな影響を与えません。一方、寒冷凝集素、クリオグロブリン、直接抗グロブリン試験、Donath-Landsteiner試験はいずれも低温によってその性質が変化したり、測定結果に悪影響を及ぼしたりするため、全血の冷蔵保存は不適切です。これらの検査では、採血後の迅速な血清分離や特定の温度管理が必須となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。抗核抗体検査のための検体(全血)は、凝固させた後、分離した血清または血漿を冷蔵保存することが一般的ですが、全血のまま冷蔵保存することも、ある程度の期間であれば抗体価に大きな影響を与えません。検査前の一般的な処理として許容されます。
- 2. 寒冷凝集素は低温で赤血球に結合し凝集を引き起こす抗体です。全血を冷蔵保存すると、この凝集が促進され、偽高値や結果の異常を引き起こす可能性があるため、採血後直ちに加温して血清分離する必要があります。正しくは:採血後、速やかに37℃で凝固させ、加温しながら血清分離を行うべきです。選びやすい理由:「寒冷」という言葉から冷蔵保存が適切だと誤解しやすいかもしれませんが、測定対象である凝集素の活性を維持し、検査結果への影響を避けるためには加温処理が必要です。混同注意:他の一般的な血清検査と混同し、一律に冷蔵保存してしまいがちです。
- 3. クリオグロブリンは低温で析出する異常な免疫グロブリンです。全血を冷蔵保存すると、クリオグロブリンが赤血球や凝固成分と混ざった状態で析出してしまい、正確な測定ができません。採血後直ちに37℃で保温し、凝固させる必要があります。正しくは:採血後、直ちに37℃で保温し、凝固後に血清を分離して、その後も保温を継続して輸送・検査を行うべきです。選びやすい理由:「クリオ(低温)」という言葉から冷蔵保存が適切だと誤解しやすいですが、検体処理においては析出を避けるために加温が必要です。混同注意:低温で性質が変化するという点では寒冷凝集素と似ていますが、クリオグロブリンは析出そのものを避けなければなりません。
- 4. 直接抗グロブリン試験(クームス試験)は、赤血球表面に結合した抗体や補体を検出する検査です。全血を冷蔵保存すると、補体が活性化し、非特異的な反応(特に冷蔵庫内で補体結合が起こる)や溶血を引き起こす可能性があり、結果に影響を与えることがあります。採血後、できるだけ早く検査を実施するか、EDTAなどの抗凝固剤入り全血を4℃ではなく室温で保存することが推奨されます。正しくは:採血後、できるだけ速やかに検査を実施するか、EDTA加血を室温で保存するのが望ましいです。選びやすい理由:血液型検査や交差適合試験の一部として行われるため、他の血液製剤管理と同様に冷蔵保存が良いと誤解しやすいかもしれません。混同注意:間接抗グロブリン試験の検体処理や、赤血球保存液の冷蔵と混同しやすいです。
- 5. Donath-Landsteiner抗体(DL抗体)は、低温で赤血球に結合し、37℃に加温することで溶血を引き起こす、発作性寒冷ヘモグロビン尿症の原因となる抗体です。この試験では、DL抗体の活性を正確に評価するため、採血後直ちに37℃で凝固させ、分離した血清を冷蔵または凍結保存する必要があります。全血を冷蔵すると、赤血球がDL抗体と低温で結合し、その後の試験結果に影響を及ぼす可能性があります。正しくは:採血後、直ちに37℃で凝固させ、血清分離後、血清を冷蔵または凍結保存して検査に用いるべきです。選びやすい理由:DL抗体の「寒冷」という性質から、全血を冷蔵保存しても良いと勘違いしやすいですが、抗体の結合と溶血のメカニズムを正しく評価するには適切な温度管理が必要です。混同注意:寒冷凝集素測定と同様に、低温感受性抗体に関する検査であり、検体処理の特殊性を理解していないと誤った判断をしがちです。
国試ポイント
検体の適切な保存条件、特に温度管理の知識が問われています。特殊な性質を持つ検体については、低温がどのような影響を与えるかを理解していることが重要です。
混同注意
通常の血清検査の多くは分離後の血清を冷蔵保存するため、全血のまま冷蔵保存が許されるケースと、特殊な検体で低温が禁忌となるケースの区別が曖昧になりやすいです。特に「寒冷」「クリオ」といった用語を含む検査は、低温が直接的な問題を引き起こすことに注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まず各検査項目が検出する物質の性質(特に温度感受性)を思い出し、全血のままで低温保存が適切か、またはどのような処理が必要かを判断します。
関連知識
各検査の原理と、抗体や凝固因子、補体などの生体成分が温度によってどのように挙動するかを理解しておく必要があります。特に免疫血清学検査における検体管理は、温度が結果に直結するため重要です。