血小板凝集能検査所見(別冊No. 13)を別に示す(図中矢印は各アゴニスト添加を表す)。考えられるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
提示された血小板凝集能検査のグラフでは、ADP、コラーゲン、リストセチンなど複数のアゴニストに対する血小板凝集がほとんど認められません。この広範な凝集不全は、血小板表面の主要なフィブリノゲン受容体であるGPIIb/IIIa複合体の機能が障害される血小板無力症(Glanzmann血小板無力症)に特徴的な所見です。血小板無力症では、血小板同士の架橋形成ができないため、ほとんどのアゴニストによる凝集が起こりません。リストセチン凝集はGPIb/IX/VとvWFの結合を介するため、通常は血小板無力症で正常に保たれることもありますが、重症例では見かけ上不良となることもあり、また本問題の選択肢の中で最も広範な凝集不全を示す病態として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。提示されたグラフでは、ADP、コラーゲン、リストセチンなど複数のアゴニストに対して血小板凝集がほとんどみられません。血小板無力症(Glanzmann血小板無力症)は、血小板表面のGPIIb/IIIa複合体(フィブリノゲン受容体)の機能異常または欠損により、アゴニストによる血小板凝集が著しく障害される疾患であり、この所見と一致します。リストセチン凝集はGPIb/IX/V複合体を介するため正常に保たれることがありますが、本症例ではリストセチンによる凝集も不良であることから、より広範な凝集不全を示唆しています。選びやすい理由:複数のアゴニストに対する凝集不全が最も顕著な特徴であるため、他の選択肢に比べて明確な正答となります。混同注意:他の血小板機能異常症と混同しやすいですが、GPIIb/IIIaの障害による広範な凝集不全は血小板無力症に特徴的です。
- 2. 抗血小板薬の種類によって凝集抑制パターンは異なります。例えば、アスピリン(COX阻害薬)はADP、コラーゲンに対する二次凝集を抑制しますが、一次凝集は起こり、リストセチン凝集は正常です。クロピドグレル(P2Y12受容体阻害薬)もADPに対する凝集を抑制しますが、コラーゲン凝集は通常残存します。提示された図のように、ADP、コラーゲン、リストセチンなど広範なアゴニストに対する凝集が同時に著しく障害されるのは一般的ではありません。正しくは:抗血小板薬服用の場合、薬の種類に応じた特定の凝集曲線パターンを示すことが多いです。例えば、アスピリン服用ならADPやコラーゲンに対する二次凝集の抑制、チクロピジン/クロピドグレルならADPに対する凝集抑制が見られますが、すべての凝集が広範に障害されることは稀です。選びやすい理由:抗血小板薬も凝集能を低下させるため一見すると正しそうに見えますが、その凝集抑制パターンは特定の経路に限定されることが多く、図のような広範な抑制とは異なります。混同注意:薬剤による凝集抑制と、先天性の血小板機能異常症による凝集不全とを混同する可能性があります。
- 3. Storage pool病(貯蔵プール病)は、血小板の顆粒(α顆粒またはδ顆粒)の内容物の欠損や放出不全を特徴とします。この場合、ADPやコラーゲンに対する二次凝集が障害されますが、一次凝集は起こり、リストセチン凝集は正常です。提示された図では、一次凝集もほとんど見られず、リストセチン凝集も不良であるため、Storage pool病の典型的な所見とは異なります。正しくは:Storage pool病では、アゴニスト添加による顆粒内容物の放出が障害されるため、ADPやコラーゲンに対する二次凝集の立ち上がりが不良となります。一次凝集やリストセチン凝集は通常正常です。選びやすい理由:先天性の血小板機能異常症の一つであるため、血小板凝集能の低下という点では共通しています。混同注意:顆粒放出の異常による凝集不全と、受容体異常による凝集不全とを混同する可能性があります。
- 4. von Willebrand病は、von Willebrand因子(vWF)の欠損または機能異常によって引き起こされます。この因子は血小板と血管内皮の接着や、血小板同士の凝集に重要ですが、特にリストセチンによる血小板凝集が著しく低下するのが特徴です。ADPやコラーゲンに対する凝集は通常、障害されても軽度か正常範囲内であることが多いです。提示された図ではリストセチン凝集も不良ですが、ADPやコラーゲンに対しても著しい凝集不全が見られるため、von Willebrand病の典型的なパターンとは異なります。正しくは:von Willebrand病では、リストセチンによる血小板凝集が著しく低下しますが、ADPやコラーゲンに対する凝集は比較的保たれることが多いです。選びやすい理由:リストセチン凝集が不良であることから、von Willebrand病を想起するかもしれませんが、他のアゴニストへの反応が大きく異なる点が鑑別点です。混同注意:リストセチン凝集が低下する疾患として、Bernard-Soulier症候群と混同しやすいですが、その病態は異なります。
- 5. Bernard-Soulier症候群は、血小板表面のGPIb/IX/V複合体(vWF受容体)の欠損または機能異常を特徴とする稀な疾患です。このため、リストセチンによる血小板凝集が著しく障害され、さらに巨大血小板や血小板減少がみられます。しかし、ADPやコラーゲンに対する血小板凝集は通常正常に保たれます。提示された図では、リストセチン凝集が不良であるだけでなく、ADPやコラーゲンに対しても著しい凝集不全が見られるため、Bernard-Soulier症候群の典型的な所見とは異なります。正しくは:Bernard-Soulier症候群では、リストセチンによる血小板凝集が著しく低下しますが、ADPやコラーゲンに対する凝集は通常正常です。選びやすい理由:リストセチン凝集が不良であることから、von Willebrand病と同様に想起しやすいですが、他のアゴニストへの反応が異なる点で鑑別します。混同注意:リストセチン凝集が低下する疾患として、von Willebrand病と混同しやすいですが、Bernard-Soulier症候群はGPIb/IX/V複合体異常、von Willebrand病はvWFの異常という点で異なります。
国試ポイント
血小板凝集能検査のグラフを読み解き、各血小板機能異常症(先天性出血性疾患)における典型的な凝集パターンを正確に識別できるかが問われています。特に、血小板無力症における広範な凝集不全の理解が重要です。
混同注意
各アゴニスト(ADP、コラーゲン、リストセチン、アラキドン酸など)に対する凝集反応のパターンが、それぞれの疾患でどのように異なるかを正確に覚えていないと、混同しやすいです。特にリストセチン凝集低下を呈するBernard-Soulier症候群やvon Willebrand病、二次凝集低下を呈するStorage pool病との鑑別がポイントです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず『すべてのアゴニストに対して凝集がほぼ見られないか』を判断します。もしそうであれば血小板無力症を第一に考えます。次に、特定の凝集(例: リストセチンのみ不良、二次凝集のみ不良)に異常がある場合は、それぞれに対応する疾患(Bernard-Soulier症候群、von Willebrand病、Storage pool病など)を鑑別します。
関連知識
血小板凝集の機序(一次凝集、二次凝集、主要な受容体やシグナル伝達経路)、各アゴニストの作用機序、主な先天性血小板機能異常症(血小板無力症、Bernard-Soulier症候群、Storage pool病、Hermansky-Pudlak症候群など)の病態と検査所見、およびvon Willebrand病の病態と検査所見について理解しておく必要があります。また、抗血小板薬の種類と作用機序も関連知識として重要です。