健常者の尺骨神経で行った逆行性記録法による感覚神経伝導検査の記録波形(別冊No. 5)を別に示す。感覚神経活動電位〈SNAP〉の振幅が刺激部位によって図示するように低下する機序はどれか。2つ選べ。

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出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・5番
解説
記録部位から刺激部位までの距離が長くなるにつれて、活動電位を構成する個々の線維の伝導速度のわずかな違いが累積し、活動電位の分散を引き起こします。これにより、同じ刺激でも電位の立ち上がりと立ち下がりが緩やかになり、ピークが鈍化して振幅が低下します。また、異なる伝導速度を持つ線維の活動電位が記録電極上で時間的に重なり合うことで、互いに打ち消し合い(位相相殺)、結果としてSNAPの振幅が低く記録されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 不応期は、刺激に対する神経の興奮性が一時的に低下する期間であり、連続した高頻度刺激に対する応答性の低下には関連しますが、単一の刺激に対するSNAPの振幅低下の主要な原因ではありません。正しくは:不応期は連続した刺激に対する神経の応答性の低下に関与する。選びやすい理由:神経の興奮性変化に関する生理学的な概念であるため、何らかの波形変化に関与すると考えやすい。混同注意:活動電位の発生機序や高頻度刺激時の現象。本問は単一のSNAP波形変化を問うている点。
- 2. 正解。記録電極に到達する個々の神経線維の活動電位が、伝導速度のわずかな差によって時間的にずれて重なり合うことで、電位の立ち上がり部分や立ち下がり部分で互いに打ち消し合い(位相相殺)、結果としてSNAPの振幅が低下します。選びやすい理由:(正答のため該当なし)混同注意:(正答のため該当なし)
- 3. 逆行性伝導は、神経興奮が通常とは逆方向に伝わる現象ですが、SNAPの振幅が刺激部位と記録部位の距離によって低くなる直接的な原因ではありません。本検査は逆行性記録法を用いていますが、これは伝導の向きではなく記録の都合上の話です。正しくは:逆行性伝導は伝導方向に関する用語であり、振幅低下の直接的な原因ではない。選びやすい理由:問題文に「逆行性記録法」とあるため、関連する用語として選びやすい。しかし、逆行性伝導自体が波形の振幅低下を引き起こすわけではない。混同注意:神経伝導検査の記録方法と、神経興奮の伝導方向およびその生理的現象。
- 4. 伝導ブロックは、神経線維の一部で活動電位の伝導が完全に、または部分的に停止する病的な状態を指します。健常者の生理的な振幅低下の原因ではありません。伝導ブロックは通常、病変を示唆します。正しくは:伝導ブロックは病的な神経機能障害であり、健常者における生理的な振幅低下の原因ではない。選びやすい理由:振幅低下の原因として一般的に知られている病態であるため、安易に選びやすい。しかし、問題文は「健常者」における原因を問うている。混同注意:健常者での生理的現象と、疾患による病態。
- 5. 正解。神経線維には様々な太さやミエリン化の程度を持つものが混在しており、それぞれ伝導速度が異なります。刺激部位から記録部位までの距離が長くなるほど、これらの伝導速度のわずかな違いが累積し、活動電位を構成する個々の成分が時間的に分散し、波形がなだらかになり、ピーク振幅が低下します。これは生理的な現象です。選びやすい理由:(正答のため該当なし)混同注意:(正答のため該当なし)
国試ポイント
神経伝導検査において、刺激部位と記録部位の距離が活動電位波形に与える影響、特に振幅低下の生理学的機序を理解しているか。
混同注意
伝導ブロックは病的な振幅低下の原因であり、健常者で起こる生理的な分散や位相相殺とは区別される。不応期は連続刺激における応答消失に関わるが、単一刺激による振幅低下の原因ではない。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、健常者での刺激部位と記録部位の距離による波形変化であれば、必ず「生理的な時間的分散」と「位相相殺」の選択肢があるかを確認し、それらを選択する。
関連知識
神経線維はすべてが均一な伝導速度を持つわけではなく、ミエリン化の程度や線維径によって速度にばらつきがある。このばらつきが生理的な時間的分散や位相相殺の根本原因となる。運動神経伝導検査(MNCV)における複合筋活動電位(CMAP)の振幅低下も同様の原理が関与する。