医療コラム

テニス肘の注射(ステロイド):効き方と、繰り返すときの注意

確認日 2026-10-18 / 更新日 2026-10-18

まず結論

テニス肘のステロイド注射は、ひじの外側の痛む部分に、炎症を抑える薬を注射する治療です(米国整形外科学会)。日本の診療ガイドラインは、注射から6か月未満の痛みと日常の動作には効果があるという強い根拠がある一方、6か月以上の長期的な効果はないとする強い根拠があるとして、短期的に使うことを弱く推奨しています(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Clinical Question 4-2)。

プラセボと比べた研究では、1年後の再発がステロイド54%、プラセボ12%でした(同ガイドライン・Background Question 5-1)。また、調べられた研究の多くは1回だけの注射についてのもので、複数回の注射の安全性は十分に検討されておらず、複数回の注射のあとに腱の付け根が切れた症例報告もあります(同・Clinical Question 4-2)。繰り返すかどうかは、ほかの治療とあわせて主治医と相談してください(medimichi の注記)。

すぐ受診が必要な症状

  • 急に始まった腕の痛みに、胸の圧迫感・重苦しさ・締めつけを伴う → すぐに 119(心臓の病気のおそれ)
  • 強い痛みで腕を動かしにくい/けがのときに「ポキッ」という音がした、腕の形が変わった → 救急外来へ
  • 腕がしびれる・感覚が鈍い → 救急外来へ
  • 腕が腫れて高い熱がある、寒気がする/運動すると腕が痛み、休むと治まる → 当日中に医療機関へ相談

出典:英国の公的医療情報「Elbow and arm pain」(NHSの最終レビュー日 2024-01-26)。テニス肘そのものの症状ではなく、ひじや腕の痛み全般で注意すべき徴候です。英国の救急番号(999)の案内を、日本の119番に置き換えて示しています(medimichi の注記)。

当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。

受診の目安

  • ひじを休ませて自分でできる対処を2週間続けても痛みが残る(英国の公的医療情報「Tennis elbow」)
  • ひじや腕の痛みが数週間たっても治まらない(英国の公的医療情報「Elbow and arm pain」)
  • 痛みで日常の動作に支障がある(medimichi の注記)

日本での相談先は整形外科です(medimichi の注記)。腕のしびれや感覚の鈍さは、上の「すぐ受診が必要な症状」に当たります(英国の公的医療情報「Elbow and arm pain」)。ひじの外側の痛みは、ひじの関節炎や神経の圧迫でも起こることがあり、医師はX線検査や筋電図でそれらを見分けることがあります(米国整形外科学会)。症状だけでテニス肘と決めないでください。

どんな注射か

項目内容
使う薬ステロイド(グルココルチコイド、コルチコステロイドとも呼ばれる)(MSDマニュアル家庭版)。炎症を抑える働きが強い薬(米国整形外科学会)
注射する場所ひじの外側の骨の出っ張り(外側上顆)のまわりの、痛む部分(米国整形外科学会・MSDマニュアル家庭版)
行われる場面痛みが重い場合に行われることがある(MSDマニュアル家庭版)
一緒に使う薬ステロイド注射では、リドカインなどの局所麻酔薬と組み合わせて注射する(米国整形外科学会のステロイド注射の解説)
効き始めと続く期間ステロイドが効き始めるまでに数日かかり、効く前の1〜2日は痛みが強まることがある。効果は数週間続くことがある(米国整形外科学会のステロイド注射の解説)

表の最後の2行は、関節などへのステロイド注射全般についての米国整形外科学会の解説によるもので、テニス肘の注射に限った記載ではありません(medimichi の注記)。

短期の効果と長期の経過:ガイドラインが調べた研究

上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(Clinical Question 4-2)は、注射後3か月以下を短期、3〜6か月を中期、6か月を超える期間を長期として、研究の結果をまとめています。

期間痛み日常の動作握力
短期(3か月以下)有効(調べたすべての研究)有効(調べたすべての研究)ほぼすべての研究で有効(Clinical Question 4-2)
中期(3〜6か月)有効有効有効性なし(Clinical Question 4-2)
長期(6か月超)有効性なし有効性なし有効性なし(Clinical Question 4-2)

まとめると、痛みと日常の動作への6か月未満の効果には強い根拠があり、6か月以上の長期的な効果はないとする強い根拠があります。握力は短期には効果がありますが、3か月を超えると効果はみられませんでした(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Clinical Question 4-2)。

この結果を読むときは、次の条件があることに注意が必要です(同・Clinical Question 4-2)。

  • 大部分の研究は、1回だけの注射の効果を調べたもの(Clinical Question 4-2)
  • 比べた相手は、ほかの注射(多血小板血漿・自己血)や理学療法、体外衝撃波、装具などで、効果は主に注射前と比べて評価されている(Clinical Question 4-2)
  • 注射を受ける前に症状が続いていた期間が、2週間・6週間・3か月・6か月と研究によって異なり、どんな人に注射するかの基準がそろっていない(Clinical Question 4-2)

推奨を決める会議では「強く推奨」8名、「弱く推奨」4名に分かれ、最終的に全員一致で「弱く推奨」となりました。何回も使う場合や長く続ける場合、薬の種類や量についての検討がなく、強く推奨するには安全性の根拠が足りないことが理由です(同・Clinical Question 4-2)。「弱く推奨」は、ガイドラインの定義では「行うことを弱く推奨する(提案する)」という意味です(同・前文)。

効いたあとの再発について

調べたこと報告されている結果出典
注射後の短期の再発34〜74%上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(Background Question 5-1・5-2)
プラセボとの比較短期の成績は注射が有効だが、1年後の再発はステロイド54%、プラセボ12%同(Background Question 5-1・5-2)
多血小板血漿(PRP)の注射との比較(各15人)6か月時点の再発はステロイド46.7%、PRP 23%同(Background Question 5-1・5-2)
理学療法などとの比較3か月以内の成績はステロイドが優れていたが、長期では理学療法が勝っていた同(Background Question 5-1)
経過観察・理学療法との比較6週では注射のほうが痛みが改善していたが、52週では悪化していた同(Background Question 5-2)
費用を比べた研究1回の注射で効けば費用は低いが、1年後の成功率はステロイドが有意に低かった同(Clinical Question 4-4)
1回で効いた割合(63人64肘)1回で効果があったのは29肘(45%)。残りの34肘は再発し、複数回の注射が行われた同(Background Question 5-2)

同じガイドラインは、注射を受けたことがある例を、手術をしない治療の成績が悪かった例や再発の要因の一つとして挙げています(上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Background Question 5-1・5-2)。

注射を受けなかった場合も含めた経過の目安は「テニス肘はどのくらいで治る?治らないときに見直すことと次の選択肢」にまとめています。

副作用として報告されていること

副作用頻度・内容出典
注射した部分の皮膚の色が抜ける・皮膚がやせる(萎縮)5%前後上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(Clinical Question 4-2)
かゆみ・湿疹・赤み・皮膚の過敏数%同(Clinical Question 4-2)
重い副作用副作用を記載した研究ではすべて、重篤な問題はなかった。ただし大部分は1回の注射についての研究で、複数回の注射の副作用は調べられていない同(Clinical Question 4-2)
腱の付け根が切れる複数回の注射のあとに、手首を反らす筋肉の腱の付け根が切れた症例報告がある同(Clinical Question 4-2)
ひじの外側の骨が弱くなる使いすぎると、腱が付く外側上顆を弱めるおそれがある米国整形外科学会
注射後の痛みの悪化ステロイドが効く前の1〜2日、痛みが強まることがある米国整形外科学会のステロイド注射の解説
血糖値の上昇糖尿病の人で、一時的に血糖値が上がることがある米国整形外科学会のステロイド注射の解説
感染危険はごく小さいとされる米国整形外科学会のステロイド注射の解説

表の下の3行(注射後の痛みの悪化・血糖値の上昇・感染)は、関節などへのステロイド注射全般についての米国整形外科学会の解説によるもので、テニス肘の注射に限った記載ではありません(medimichi の注記)。

注射のあと、注射した部分が赤く腫れる・熱をもつ・痛みが日ごとに強くなる、熱が出るといったときは、すぐに注射を受けた医療機関に連絡してください(medimichi の注記)。

回数・間隔の考え方

  • 上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019には、テニス肘での注射の回数や間隔の上限は示されていません。何回も使う場合や長く続ける場合は検討されておらず、複数回の長期使用の安全性には注意が必要としています(Clinical Question 4-2)。
  • 米国整形外科学会は、テニス肘ではステロイド注射をごく控えめに使うべきとしています。使いすぎると外側上顆を弱めるおそれがあるためです。
  • 米国整形外科学会のステロイド注射一般の解説では、医師は年3〜4回程度を実際上の上限にすることが多く、それを超えると感染や腱が切れるなどの危険が増えるため、手術のほうがよい選択になることがあるとしています。同じ解説は、腱が切れる危険を高めるため、腱の炎症(腱炎)には一般にステロイド注射を使うべきではないとも述べています。いずれも関節などへの注射全般についての説明で、テニス肘について調べた数字ではありません。

これまでに受けた注射の回数と前回の時期は、別の医療機関で受けたものも含めて主治医に伝えてください(medimichi の注記)。

注射を受ける前に主治医に確認したいこと

ここまでの情報源の内容をもとに、medimichi が質問の例を整理しました(medimichi の注記)。

  • 今回の注射で、どのくらいの期間の効果を見込むのか(ガイドラインで効果の根拠があるのは6か月未満:上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019・Clinical Question 4-2)
  • 効果が切れたあと、理学療法など何を続けるのか(ガイドラインは理学療法を強く推奨:同・Clinical Question 4-4)
  • これまでの回数をふまえて、次に注射を考えるならどんな場合か(medimichi の注記)
  • 糖尿病がある場合、血糖値への影響と注意点(糖尿病の人で一時的に血糖値が上がることがある:関節などへの注射全般の説明・米国整形外科学会のステロイド注射の解説)
  • 注射のあと、仕事やスポーツをいつ、どのように再開するか(medimichi の注記)
  • 皮膚の色が抜ける・やせるなど、注射のあとに気をつける変化(同・Clinical Question 4-2)

ほかの選択肢との比べ方

治療ガイドラインの評価ステロイド注射と比べた研究
理学療法(ストレッチ・筋力訓練など)強く推奨(Clinical Question 4-4)比べた10論文のうち、6論文で理学療法のほうが有効、2論文で両方有効。ステロイドのほうが有効とした2論文は、いずれも短期の効果(Clinical Question 4-4)
多血小板血漿(PRP)の注射弱く推奨(Clinical Question 4-8)比べた4つの研究すべてで両方に効果があり、うち3つでPRPのほうが長期で有意に有用だった(Clinical Question 4-8)
自分の血液(末梢血全血)の注射短期的に弱く推奨(Clinical Question 4-7)比べた研究では、注射後90日までは痛み・握力・機能の改善でこちらのほうが効果があった。ただし研究が少なく、根拠は限られる(Clinical Question 4-7)

表の評価はいずれも上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019によります。

薬・テニスバンド・手術などを含めた治療全体の評価は「テニス肘はどのくらいで治る?治らないときに見直すことと次の選択肢」の表にまとめています。

出典・確認日

  • 上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019(改訂第2版)日本整形外科学会・日本肘関節学会 監修(Minds ガイドラインライブラリ)(注射の期間別の効果・研究の条件・推奨の経緯・副作用(CQ4-2)・再発(BQ5-1・5-2)・理学療法との比較と費用(CQ4-4)・PRP(CQ4-8)・末梢血全血(CQ4-7)・推奨の定義(前文)。第3版(2024)は刊行済みだが、2026-10-18時点で Minds に本文は未公開)
  • 米国整形外科学会 OrthoInfo「Tennis Elbow (Lateral Epicondylitis)」(注射する場所と薬の性質・控えめに使うべき理由(外側上顆を弱めるおそれ))
  • 米国整形外科学会 OrthoInfo「Cortisone Shot (Steroid Injection)」(局所麻酔薬との併用・効き始めと持続・注射後の痛みの悪化・血糖値・感染・年あたりの回数の実際上の上限(関節などへの注射全般の説明))
  • MSDマニュアル家庭版「上腕骨外側上顆炎(テニス肘)」(薬の呼び方・注射が行われる場面。2025年11月更新)
  • 英国の公的医療情報(NHS)「Tennis elbow」(受診の目安(T03 と共通の欄)。NHSの最終レビュー日 2024-05-31)
  • 英国の公的医療情報(NHS)「Elbow and arm pain」(すぐ受診が必要な症状・受診の目安(T03 と共通の欄)。NHSの最終レビュー日 2024-01-26)

「英国の公的医療情報」と記した部分: Contains public sector information licensed under the Open Government Licence v3.0.(英語の公的情報を日本語に翻訳・要約して含みます)

ガイドラインの内容は、medimichi が要点を独自の言葉でまとめたものです。治療の選択は主治医と相談してください。

内容の確認日:2026-10-18/更新日:2026-10-18/次回確認予定:2027-04-18

医師による監修はありません。医学的な記載は上の公的機関・学会などの情報源に基づき、medimichi が独自にまとめています。この記事は一般的な医療情報で、診断や治療の代わりにはなりません。