Aさん(24歳、女性)は両親と3人で暮らしている。会社員として働いているが、最近責任の大きな仕事が増えていた。仕事帰りにコンビニエンスストアでサンドイッチやおにぎりなどを買い込み、家族が寝た後に一気に食べるようになった。量が増えていき、食べた後に自ら嘔吐することを繰り返すようになった。過食嘔吐をやめられないことに悩み、クリニックを受診し、神経性過食症と診断された。来院時の身体所見:身長155 cm、体重48 kg、体温36.4°C、血圧104/60 mmHg、脈拍66/分(不整)。検査所見:赤血球400万/μL、Hb 12.5 g/dL、白血球6,300/μL、Na 135 mEq/L、K 2.7 mEq/L、Cl 98 mEq/L、AST 30 IU/L〈U/L〉、ALT 35 IU/L〈U/L〉、γ-GTP 29 IU/L〈U/L〉、血糖92 mg/dL。 2回目の外来受診日に、Aさんから外来看護師に「過食がやめられません。私はどうすればいいのでしょうか」と神経性過食症との付き合い方について相談があった。外来看護師の声かけとして適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
神経性過食症の患者が過食行動を繰り返す背景には、特定の誘因や感情が隠されていることが多いです。過食衝動を感じる状況を具体的に記録することは、患者自身が自分の過食パターンを客観的に認識し、自己理解を深める上で非常に有効な介入です。この自己モニタリングを通して、過食衝動が生じる前に代替行動を検討したり、専門家と相談して具体的な対処法を共に考えたりするきっかけとなります。これは認知行動療法的なアプローチの基礎となり、患者の主体的な問題解決能力を育む上でも適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 過食症の患者にとって、毎食の食事準備を義務化することは、かえってストレスとなり、症状を悪化させる可能性があります。また、過食の根本的な原因解決には繋がりません。正しくは:「食事の準備は、無理のない範囲で進められるよう、サポート体制も考えましょう」など、患者の負担を軽減し、サポートの可能性を示唆する内容が適切です。選びやすい理由:健康的な食生活を送るためのアドバイスとして、一見良さそうに聞こえるため選びやすいですが、過食症の病態を理解していない声かけです。混同注意:一般的な食生活指導と、神経性過食症の患者への介入を混同している可能性があります。過食症患者は食事そのものへの意識や行動が病的に変化しているため、単純な指導は逆効果になりえます。
- 2. 正解。神経性過食症の患者が過食行動を止めるためには、まず過食衝動が生じるきっかけや状況、感情などを客観的に把握することが重要です。自己モニタリング(記録)は、患者自身が自分の行動パターンを理解し、誘因を特定し、それに対する対処法を考えるための有効な介入です。これは認知行動療法的なアプローチの第一歩となります。
- 3. 神経性過食症を含む精神疾患の治療では、患者を取り巻く家族や社会からのサポートが非常に重要です。家族の協力を否定することは、患者を孤立させ、治療への抵抗感を高める可能性があります。正しくは:「ご家族には、どのようにサポートしてもらえそうか、一緒に考えてみましょう」など、家族を含む社会的なサポートを活用する方向で声かけをすることが適切です。選びやすい理由:患者の自立を促すような声かけとして捉えられがちですが、精神疾患の治療においては、適切なサポートが必須であることを考慮していません。混同注意:患者の自立支援と、必要な社会的・家族的サポートの重要性を混同しています。精神疾患の治療は、自己努力のみで完結することは稀であり、適切な支援が不可欠です。
- 4. 神経性過食症の患者は、体重や体型への過度なこだわりを持つことが多く、頻繁な体重測定は、そのこだわりをさらに強め、不安や自己否定感を増大させる可能性があります。特に、初期の段階では体重管理よりも、過食行動や精神状態の安定化を優先すべきです。正しくは:「体重の変動が気になる場合は、医療スタッフが一緒に確認し、今後の治療に活かしていきましょう」など、患者の負担とならないよう配慮し、専門家の視点から体重管理の必要性を説明する形が適切です。自己判断での頻繁な測定は避けるよう促すべきです。選びやすい理由:摂食障害の一種であるため、体重管理が重要だと誤解しがちですが、神経性過食症の病態において、体重測定の頻度を上げることは逆効果となることが多いです。混同注意:神経性食欲不振症(拒食症)と神経性過食症の病態の違い、あるいは摂食障害治療の段階を混同している可能性があります。また、一般的な肥満治療における体重管理と、摂食障害患者への介入を同一視している可能性があります。
国試ポイント
神経性過食症患者への初期段階の看護介入として、自己理解を促す声かけの重要性が問われています。特に、過食の誘因やパターンを把握するための自己モニタリングの有効性と、不適切な介入(体重への過度な言及、家族のサポート排除、負担の大きい指示など)を見分ける知識が求められます。
混同注意
摂食障害の病態理解(特に過食症における体重への言及の是非)、精神疾患における家族支援の重要性、患者の自立支援と必要なサポートの区別、一般的な生活習慣指導と精神疾患患者への個別的介入の違い。
次に同じ論点が出たら
この声かけの後、看護師は患者が記録した内容を傾聴し、共感を示すと共に、記録から見えてきた過食の誘因や感情について具体的に掘り下げてアセスメントを継続します。そして、それらに対する具体的な対処法を患者と共に検討し、必要に応じて多職種と連携しながら治療計画を進めていきます。
関連知識
神経性過食症の診断基準と病態生理、認知行動療法(CBT)の基本、自己モニタリングの意義、摂食障害患者への看護介入の原則、精神科領域における家族支援の重要性。