Aさん(24歳、女性)は両親と3人で暮らしている。会社員として働いているが、最近責任の大きな仕事が増えていた。仕事帰りにコンビニエンスストアでサンドイッチやおにぎりなどを買い込み、家族が寝た後に一気に食べるようになった。量が増えていき、食べた後に自ら嘔吐することを繰り返すようになった。過食嘔吐をやめられないことに悩み、クリニックを受診し、神経性過食症と診断された。来院時の身体所見:身長155 cm、体重48 kg、体温36.4°C、血圧104/60 mmHg、脈拍66/分(不整)。検査所見:赤血球400万/μL、Hb 12.5 g/dL、白血球6,300/μL、Na 135 mEq/L、K 2.7 mEq/L、Cl 98 mEq/L、AST 30 IU/L〈U/L〉、ALT 35 IU/L〈U/L〉、γ-GTP 29 IU/L〈U/L〉、血糖92 mg/dL。 Aさんは受診時に母親と一緒に来院した。母親から「父親は、普段はAとあまり話すことはありませんが、過食を見つけると我慢が足りないからだとAを叱ります。私は食費が高くて困っています。どうしたらいいのでしょう」と外来看護師に相談があった。看護師が母親に行う支援として、適切なのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・4番
解説
摂食障害の患者家族は、疾患に対する理解不足から、患者への対応に苦慮したり、自身の心理的・経済的負担を抱えたりすることが少なくありません。そのため、看護師は家族に対し、病気に関する正確な情報(病態、治療、予後)を丁寧に説明し、家族が疾患を理解し、不安を軽減できるよう支援することが重要です(選択肢4)。また、家族自身の孤立感を防ぎ、適切な対処方法を習得できるよう、家族心理教育や、同様の経験を持つ家族との交流の場である家族会への紹介も非常に有効な支援となります(選択肢1)。母親の具体的な困りごと(食費)に対して「仕方がない」と突き放したり(選択肢2)、病状を悪化させる可能性のある「厳しく接する」といった不適切な対応を促したり(選択肢3)、ましてや家族を一方的に病気の原因と断定し非難するような態度は、支援者として絶対に行ってはなりません(選択肢5)。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。摂食障害の患者家族は、疾患への理解不足や対応に苦悩することが多いため、家族心理教育や家族会は正しい知識と対応方法を学び、孤立感を軽減し、心理的負担を和らげる上で非常に有効な支援です。家族が適切な関わり方を学ぶことは、患者の回復にも繋がります。
- 2. 母親は食費の問題で困っていると具体的に訴えており、単に「仕方がない」と突き放すような態度は、共感を示さず、問題解決への糸口も示さないため、支援として適切ではありません。家族の経済的負担は現実的な問題であり、看護師はこれに対し共感的に耳を傾け、必要に応じて相談窓口や社会資源の情報提供などを検討すべきです。正しくは:家計への影響について具体的に困っている点を傾聴し、利用可能な社会資源や相談窓口の情報を提供する。選びやすい理由:病気なのである程度の負担は仕方ないという現実的な側面を捉え、ある意味では「事実」を伝えているように感じるかもしれません。また、看護師が直接的な解決策を持たない場合、そう考えてしまいがちです。混同注意:患者の病状による変化は受け入れるべきだという心構えと混同するかもしれませんが、それは家族が抱える具体的な困りごとへの支援を放棄するものではありません。
- 3. 摂食障害に対する厳しすぎる対応や叱責は、患者の自尊心をさらに傷つけ、秘密主義を助長し、病状を悪化させる可能性があります。特に過食行為は、感情的な苦痛やストレスに対する対処行動であることが多いため、理解と共感に基づいた支援が不可欠です。父親の現状の対応もこれに近く、問題の一因となっている可能性もあります。正しくは:食行動の異常に対しては、感情的にならず、共感的・支持的な態度で接し、専門家と連携して対応するよう指導する。選びやすい理由:過食を「我慢が足りない」と捉える父親の考え方に近い感覚で、問題行動を止めさせるためには厳しさが必要だと短絡的に考えてしまうかもしれません。混同注意:問題行動を放置しないことと、厳しく叱責することが混同されることがあります。放置しないことと、病気への理解に基づいた適切な対応は全く異なります。
- 4. 正解。母親はAさんの状況に困惑しており、「どうしたらいいのでしょう」と具体的に助けを求めています。摂食障害は複雑な疾患であり、家族がその病態や治療の方向性を理解することは、患者への適切な関わり方や、家族自身の不安軽減に繋がります。正しい知識を提供することで、家族は病気に対して冷静かつ建設的に向き合うことができるようになります。
- 5. 摂食障害の原因は多岐にわたり、家族環境はその一要因に過ぎません。家族を一方的に病気の原因だと非難し、態度を改めるよう指示することは、家族に強い罪悪感や反発心を抱かせ、看護師との信頼関係を損ない、結果として患者への支援体制を崩壊させる危険性があります。支援者は、家族を責めるのではなく、協働するパートナーとして関わる姿勢が重要です。正しくは:家族が病気の原因であると断定することはせず、家族がAさんを支援できるよう、現在の関わり方や抱えている問題について一緒に検討する。選びやすい理由:家族の関わり方が患者の行動に影響を与えている事実はあるため、その部分を改善すべきだという思いから、このような選択肢に引き寄せられる可能性があります。混同注意:家族システムへの介入の重要性と、家族を一方的に責めることを混同するかもしれません。家族療法では家族の関わり方を変えることを目指しますが、それは非難から始まるものではありません。
国試ポイント
精神看護学における患者家族への支援の原則、特に摂食障害のような複雑な疾患を持つ患者家族への適切な関わり方が問われています。情報提供、共感的な傾聴、社会資源の活用支援が重要であり、安易な判断や非難、一方的な指示は不適切であるという理解が求められます。
混同注意
家族への介入の重要性(家族が病気の影響を受けるため支援が必要)と、家族を病気の直接的な原因と断定し非難すること(家族は病気の原因ではない)が混同されやすいです。また、問題行動に対して「厳しく対処する」ことと、「一貫性のある適切な対応をする」ことの違いも理解が必要です。
次に同じ論点が出たら
患者の家族が困難を訴えている場合、まずはその訴えに共感的に耳を傾け、正確な情報を提供することが基本です。その上で、家族が抱える問題の種類(情報不足、心理的負担、経済的負担、対応方法の悩みなど)に応じて、教育的支援、精神的支援、社会資源の紹介といった多角的な支援策を検討します。決して家族を責めたり、安易に諦めを促したり、不適切な対応を指導したりしないことが重要です。
関連知識
摂食障害(拒食症・過食症)の病態生理と精神医学的側面、家族システム理論、家族に対する精神科看護の役割、家族心理教育の目的と効果、社会資源(自助グループ、相談機関)の種類と活用方法、治療的コミュニケーションの原則。