Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒による大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。 Aさんはほとんど食事がとれなくなり、尿量も減少してきた。自発的な動きも減少し、傾眠状態となった。家族はAさんの状態の変化に驚き「本人は苦しいのでしょうか。そばにいても良いのかどうかが分かりません」と看護師に話した。Aさんの家族への看護師の説明で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
終末期の患者の状態変化に対し、ご家族は強い不安や戸惑いを抱いています。このような状況で看護師は、患者の現在の状態や今後予測される経過について、ご家族が理解できるよう具体的に説明し、それを通じてご家族の不安を軽減し、精神的な支えを提供することが重要です。終末期のプロセスにおける身体的変化や意識レベルの変容を理解してもらうことで、ご家族は患者の現状を受け止めやすくなり、どのように接すればよいか判断する助けとなります。また、ご家族が患者のそばにいることの重要性も伝え、ご家族自身の心のケアにも配慮する必要があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 終末期においても患者が何も感じないとは断定できません。意識レベルが低下していても、触覚や聴覚などが残っている可能性があり、ご家族を不用意に傷つけたり、ケアの放棄と受け取られたりするリスクがあります。また、ご家族は患者の苦痛を心配しているため、このような断定的な発言は不適切です。正しくは:「意識レベルが低下していますが、触覚や聴覚などが残っている可能性もあります。穏やかに過ごせるよう、私たちができる限りのケアをしていきます」選びやすい理由:ご家族の「本人はつらいのでしょうか」という問いに対し、苦痛がないことを保証したい気持ちから選びやすいかもしれません。しかし、医学的根拠に乏しく、ご家族の感情に寄り添えていません。混同注意:意識レベルの低下と感覚の喪失を混同しています。
- 2. 正解。患者の容態が変化し、ご家族が戸惑っている状況では、今後の経過について具体的に説明することで、ご家族は状況を理解しやすくなり、不安の軽減につながります。また、医療者としてご家族に対する誠実な態度を示し、信頼関係を構築する上でも重要です。選びやすい理由:ご家族の不安に対し、最も適切かつ専門的な情報提供の姿勢を示しているため選びやすいです。
- 3. ご家族は「私たちはそばにいても大丈夫なのでしょうか」と問いかけており、患者のそばにいたいという気持ちが表れています。状態が不安定であっても、ご家族がそばにいることは患者にとっても精神的な安寧をもたらすことが多く、ご家族自身の心のケアにもつながります。ケアを職員のみで行うと伝えることは、ご家族の関わりを否定し、疎外感を与えかねません。正しくは:「状態が不安定ですが、ご家族がそばにいてくださることは患者さんにとって大きな支えになります。安全に配慮しながら、一緒にケアを考えましょう」選びやすい理由:患者の状態が悪化しているため、ご家族に負担をかけたくない、あるいは専門的なケアが必要だと考えるかもしれません。しかし、ご家族のニーズを無視した対応です。混同注意:医療的な専門ケアの必要性と、ご家族の精神的・感情的なニーズを混同しています。
- 4. 「目を離さないでください」という指示は、ご家族に過度な責任感や負担を強いることになります。終末期ケアは医療者が主導し、ご家族を支える姿勢が重要です。ご家族自身の休息も必要であり、無理な要求はご家族の疲弊や精神的苦痛を増大させる可能性があります。正しくは:「患者さんのそばにいてくださることは大変ありがたいです。ご家族ご自身の休息も大切ですので、必要に応じて私たちがサポートさせていただきます」選びやすい理由:患者の状態悪化に対し、ご家族に最大限の関わりを期待する気持ちから選びやすいかもしれませんが、実際には過度な負担となります。混同注意:患者への見守りの必要性と、ご家族に与える精神的負担を混同しています。
国試ポイント
終末期患者と家族への看護師の倫理的対応、コミュニケーションスキル、症状緩和と精神的支援の重要性。
混同注意
終末期ケアにおける家族の不安と、患者の身体的苦痛に対する誤解。死の受容過程とご家族の心理状態を混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
終末期患者の家族への対応問題では、家族の感情に寄り添い、情報提供を通じて不安を軽減し、精神的支援を行う選択肢が適切と判断する。
関連知識
クブラー・ロスの死の受容段階(否認、怒り、取り引き、抑うつ、受容)、スピリチュアルケア、グリーフケアの原則、インフォームドコンセントの適用、終末期における痛みや苦痛の評価と緩和方法。