Aさん(102歳、女性)は夫と死別した後、介護老人福祉施設に入所しており、息子夫婦が頻繁に面会に来ている。転倒による大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになり、食事摂取量が低下した。Aさんは「私はここで最期を迎えたい」と自分の気持ちを看護師に話した。看護師は、Aさんが点滴や酸素吸入などの延命処置を希望しないことを確認した。医師は家族にAさんは老衰であるため回復の見込みが低いことを伝え、家族も延命処置は行わずに施設での看取りに同意した。 Aさんは「私らしく死にたいの」と何度も看護師に話すようになった。看護師の声かけで最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
終末期の患者が「私らしく死にたい」と訴える場合、その言葉の背景には患者自身の価値観、人生観、そして残された時間をどのように過ごしたいかという具体的な希望が隠されています。看護師は、患者の言葉を傾聴し、その真意を理解しようと努めることが最も重要です。患者に「どのようなことを望んでいるのか」と尋ねることで、患者の自己決定権を尊重し、具体的なニーズを把握し、それに基づいたケアを提供するための出発点となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者の気持ちを否定し、さらに頑張ることを促す声かけは、患者の苦痛や希望を受け止めていないため不適切です。終末期の患者は、残された時間を自分らしく過ごしたいと願っており、その気持ちを尊重すべきです。正しくは:患者の言葉を傾聴し、その背景にある思いを理解しようと努める。選びやすい理由:励ましのように聞こえるかもしれないが、患者の「私らしく死にたい」という意思を無視している点で不適切。混同注意:「頑張れる」という言葉が、患者の残された時間や希望とどのように結びつくのか混乱する可能性がある。
- 2. そばにいるという行為は支持的であり重要ですが、患者の具体的な希望や意図を確認する声かけとしては不十分です。「私らしく死にたい」という具体的な訴えに対して、その意味を深掘りし、患者の意思を尊重する次のステップにはつながりません。正しくは:「そばにいる」という姿勢を示しつつ、さらに「どうすれば私らしくいられるか、教えていただけますか」のように、具体的な希望を引き出す言葉を添える。選びやすい理由:患者に寄り添う姿勢は良いことだが、具体的なニーズ把握には至らないため、この状況での最も適切な選択肢ではない。混同注意:精神的支援と具体的な意思決定支援の違いが曖昧になる。
- 3. 正解。患者の「私らしく死にたい」という言葉の背景にある具体的な思いや希望を直接尋ねることで、患者の意思を尊重し、具体的な援助計画を立てるための第一歩となります。終末期医療においては、患者のQOLと自己決定権の尊重が最も重要です。正しくは:この選択肢は適切です。選びやすい理由:他の選択肢も一見すると患者を思いやっているように見えるため、具体的なニーズ把握の重要性を見過ごすと誤る可能性がある。混同注意:患者の言葉をそのまま受け止めるだけでなく、その言葉の意図を深掘りするコミュニケーションの難しさで迷う可能性がある。
- 4. 患者の感情や意思を否定し、家族の感情を持ち出して患者に罪悪感を与える声かけは不適切です。患者の自己決定権を阻害し、自分の気持ちを表現することをためらわせてしまいます。終末期ケアでは、まず患者自身の感情や希望に焦点を当てるべきです。正しくは:患者の言葉を受け止め、その思いについて話し合う機会を提供する。選びやすい理由:家族の気持ちも大切だと感じるかもしれないが、患者の自己決定権や感情を優先する視点が欠けているため、不適切である。混同注意:患者の個別性よりも、家族を含めた全体的な調和を優先すべきだと誤解する可能性がある。
国試ポイント
終末期医療における患者の自己決定権の尊重と、具体的なコミュニケーションスキルが問われています。患者の言葉の裏にある真意を理解しようとする姿勢が重要です。
混同注意
患者を励ますような言葉や、そばにいるという行動は一見ポジティブに見えるが、具体的なニーズ把握にはつながらない点で誤りやすい。
次に同じ論点が出たら
患者の具体的な希望を聞き出した後、医療チームと情報を共有し、その希望に沿ったケアプランを立案・実施する。
関連知識
アドバンス・ケア・プランニング (ACP)、患者の権利、インフォームド・コンセント、傾聴の技術、共感的態度。