Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。 人体の前面と背面を図に示す。Aさんの人工肛門が造設される位置はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
人工肛門(ストーマ)の造設位置は、患者の体型、腹直筋の走行、日常生活動作、ストーマ装具の装着のしやすさなどを考慮して決定されます。一般的に、右側下腹部(回腸ストーマが多い)または左側下腹部(結腸ストーマが多い)の腹直筋を貫く部位が選ばれます。これは、装具の安定性、自己管理のしやすさ、そして他者から見えにくいといったメリットがあるためです。下図の③の位置は、これらの条件を満たす標準的な造設部位を示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. ①は通常、上腹部、特に胃の周辺にあたる部位であり、人工肛門(ストーマ)の造設部位としては一般的ではありません。ストーマは通常、排泄物の処理を考慮し、腹筋の走行や患者の日常生活に支障をきたさない下腹部に造設されます。正しくは:人工肛門は、消化管の一部(小腸または大腸)を腹壁に引き出して造設されるため、排泄物の管理が容易で、ストーマ装具が装着しやすい下腹部に作られるのが一般的です。選びやすい理由:腹部であることは正しいので、漠然とした知識だと選んでしまう可能性があります。混同注意:他の腹部手術の創部と混同する可能性があります。
- 2. ②は上腹部から側腹部にかけての領域であり、人工肛門の造設部位としては一般的ではありません。ストーマは通常、患者が自身で管理しやすく、またストーマ装具が目立ちにくい、安定した平坦な場所に造設されることが望ましいです。正しくは:人工肛門の造設位置は、回腸や結腸の種類に応じて変わりますが、主に腹直筋を貫いて造設されることが多く、下腹部の平坦な部位が選ばれます。選びやすい理由:腹部の位置であることは認識できるため、正確な位置を知らないと選択肢に入り得ます。混同注意:腎臓など他の臓器に関連する手術部位と混同する可能性があります。
- 3. 正解。③は、下腹部の腹直筋を貫く領域であり、人工肛門(ストーマ)の造設部位として最も一般的です。この位置は、ストーマ装具の装着が安定しやすく、患者自身による管理(パウチ交換など)が行いやすいという利点があります。また、衣服で隠れやすく、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。選びやすい理由:正しい知識があれば迷わず選べます。混同注意:特に混同する点はありません。
- 4. ④は背部に位置しており、人工肛門の造設部位としては不適切です。人工肛門は排泄物の管理が必要なため、身体の前面、特に患者が目視しやすく、手が届きやすい位置に造設されます。正しくは:人工肛門は消化管の出口を腹壁に作るものであり、排泄物の処理を考慮して、必ず腹部に造設されます。選びやすい理由:全く異なる部位であるため、迷うことは少ないでしょう。混同注意:背部にある他の病変や手術痕と混同する可能性はありますが、ストーマとは明確に異なります。
国試ポイント
人工肛門の基本的な知識として、その目的、種類、そして特に造設部位の解剖学的・実用的な側面が問われます。ストーマケアにおける看護師の役割も重要であり、関連する知識を理解しているかを確認する問題です。
混同注意
他の腹部手術の創部や、一時的なドレーン挿入部位などと混同する可能性がありますが、人工肛門は排泄を目的とした「消化管の出口」である点が決定的に異なります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、人工肛門の種類ごとの排泄物の性状、ストーマ装具の交換方法、合併症とその看護について問われる可能性があります。
関連知識
人工肛門の種類(イレオストミー、コロストミー)、それぞれの特徴、ストーマ装具の種類と選択、ストーマ周囲皮膚のケア、ストーマ合併症(傍ストーマヘルニア、皮膚炎など)とその予防・対応、ストーマを持つ患者への退院指導や社会生活への支援。