Aさん(50歳、男性)は、23歳で統合失調症を発症し、精神科病院へ5回入院したことがある。1年前に、被害妄想が原因で隣人に暴力を振るい措置入院となった。入院後2か月で自傷他害の恐れは消失し、医療保護入院へ切り替えられたが、幻覚や妄想があり家族へ1日に何回も電話をかけていた。その後は家族へ電話をかける回数が減り、病棟での生活も安定してきた。幻聴は続いているが、自分の身の回りのことは自分で行えるようになった。作業療法も継続して参加できていることから、退院を検討することになった。 Aさんの退院については、アパートでの単身生活か、共同生活援助〈グループホーム〉での生活を目指すことになった。Aさんの精神科リハビリテーションを進めるにあたり、病棟看護師が連携する職種で最も優先度が高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
精神疾患を持つ患者の退院後の生活を円滑に進めるためには、生活環境の整備が不可欠です。退院後生活環境相談員(精神保健福祉士など)は、患者の社会復帰を支援するために、地域資源を活用した住居の確保、社会生活技能訓練、就労支援など、生活全般にわたる相談・援助を行う専門職であり、病棟看護師が退院支援を進める上で最も密接に連携すべき職種です。特に、単身生活やグループホームへの移行は、彼らの専門分野となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。精神疾患を持つ患者が退院後に安定した生活を送るためには、その生活環境の調整が極めて重要です。退院後生活環境相談員(精神保健福祉士などが担当)は、患者の意向や症状を考慮し、地域のリソースと連携して住居や生活支援サービスを具体的に調整する役割を担います。アパートでの単身生活やグループホームへの移行支援は、この職種の専門分野であり、病棟看護師が連携することで、Aさんの退院後の生活が円滑に移行できるよう支援できます。
- 2. 理学療法士は主に身体機能の回復や維持、ADL(日常生活動作)の改善を支援する専門職です。精神科リハビリテーションにおいても、身体活動の促進は重要ですが、今回のAさんの状況(単身またはグループホームでの生活移行)において、生活環境の調整と比較すると優先度は低いです。正しくは:Aさんの生活環境調整が主な課題であるため、この状況での優先度は低い。もしAさんの身体機能の低下が著しい、あるいは身体疾患の合併がある場合は連携の優先度が高まる。選びやすい理由:リハビリテーションという言葉から、身体機能回復の専門家である理学療法士を連想しやすいかもしれない。混同注意:作業療法士(精神科リハビリテーションにおいて生活技能訓練などを担当)とは役割が異なる。
- 3. 介護福祉士は、高齢者や障害を持つ人々に対し、身体介護や生活援助を提供する専門職です。グループホームでの生活が検討されている場合、将来的に介護福祉士による支援が必要になる可能性はありますが、現在の精神科リハビリテーションを進め、退院後の住環境を決定する段階では、直接的な連携の最優先職種とは言えません。正しくは:介護福祉士との連携は、退院後の具体的な生活支援サービスが決まり、介護の必要性が生じた場合に重要となる。現状は生活環境の計画段階であるため、優先度は低い。選びやすい理由:グループホームという言葉から介護サービスを連想しやすいが、まずは生活環境そのものを調整する段階である。混同注意:介護士と混同しやすいが、介護福祉士は国家資格であり、より専門的な介護を提供する。
- 4. 栄養士は、栄養管理や食事指導を行う専門職です。精神疾患を持つ患者の食事は重要であり、病状や薬の影響で食欲不振や過食が見られる場合、栄養士との連携は必要になります。しかし、退院後の住居形態(単身かグループホームか)を検討し、生活を構築していく現在の段階で、最も優先して連携すべき職種ではありません。正しくは:栄養士との連携は、Aさんの栄養状態に問題がある場合や、退院後の食事管理計画を立てる際に重要になるが、現在の退院後の生活環境調整の段階では優先度は低い。選びやすい理由:健康維持には食事が不可欠であるため、一般的に重要な職種であると捉えがち。混同注意:管理栄養士と混同しやすいが、両者ともに栄養に関する専門職である。
国試ポイント
精神科リハビリテーションにおける多職種連携の理解、特に退院支援における精神保健福祉士(退院後生活環境相談員)の役割の重要性が問われています。各職種の専門性と、患者の状況に応じた連携の優先順位を判断する能力が求められます。
混同注意
精神科医療における様々な専門職の役割(精神科医、精神保健福祉士、作業療法士、心理士など)を混同しやすい。特に、リハビリテーションという言葉から身体系の職種を連想してしまうことがあるため注意が必要。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た場合は、患者の主な課題が『生活環境の調整・社会復帰』であるか、『身体機能の改善』であるか、『精神症状の管理』であるか、『日常生活の介護』であるかなど、問題文から状況を正確に把握し、その課題解決に最も直接的に関与する専門職を優先的に選択する。
関連知識
精神保健福祉法、障害者総合支援法における地域生活支援事業、精神科における退院支援加算、多職種連携の目的と重要性、各職種の役割と専門性。