Aさん(56歳、男性)は、コンビニエンスストアの店長で自動車を運転して通勤している。不規則な生活が続き、ストレスが溜まることも多く、十分な睡眠がとれないこともあった。荷物を運ぶときに胸部の圧迫感が繰り返し出現し受診したところ、狭心症が疑われたため検査をすることになった。脂質異常症の既往がある。 Aさんの運動負荷心電図検査(トレッドミル運動負荷試験)の結果(別冊No. 7)を別に示す。このときの心電図の所見で適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
安静時と比較して、発作時(運動負荷時)の心電図ではST部分が基線から約1.5mm以上、水平または下降型に低下している。これは心筋虚血を示唆する所見であり、労作性狭心症などで見られる典型的な運動負荷心電図陽性所見である。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。安静時のST部分と比較して、運動負荷時のST部分が基線よりも約1.5mm下降しており、運動負荷による心筋虚血を示唆する所見であるため適切。選びやすい理由:図からST低下が明確に読み取れるため、正しいと判断しやすい。混同注意:ST上昇やJ点降下など他の所見との混同。
- 2. 運動負荷時のP波の振幅は安静時と比較して、ほとんど変化しておらず、むしろRR間隔が短縮していることから心拍数が増加していることがわかる。P波の振幅低下は一般的な心筋虚血の所見ではない。正しくは:P波の振幅は運動負荷時に明らかな低下は見られない。選びやすい理由:運動により心臓に変化があるという認識から、P波にも変化があると考えるかもしれない。混同注意:他の波形変化(ST部分など)とP波の変化を混同。
- 3. 安静時の心電図において、異常Q波(幅が広く深いQ波)は認められない。Q波は正常範囲内の幅と深さである。正しくは:安静時に異常Q波は存在しない。選びやすい理由:Q波がわずかに認められるため、これを異常と誤認する可能性がある。混同注意:正常Q波と異常Q波の鑑別。特に陳旧性心筋梗塞による異常Q波と混同。
- 4. 安静時の心電図において、T波は陽性であり、冠性T波(先端が尖鋭で対称性の高い陰性T波)は認められない。正しくは:安静時に冠性T波は認められない。選びやすい理由:T波の形に何らかの変化があるように見え、冠性T波と誤認する可能性がある。混同注意:正常T波と冠性T波の鑑別。冠性T波は心筋虚血や心筋梗塞で認められるが、この図では明らかではない。
- 5. 安静時も運動負荷時もQRS幅に明らかな拡大(通常0.12秒以上)は認められない。QRS幅の拡大は脚ブロックなどで見られる。正しくは:安静時も運動負荷時もQRS幅は正常範囲内である。選びやすい理由:心電図の波形全体に変化があるように見え、QRS幅も変化していると誤解するかもしれない。混同注意:QRS幅の正常範囲と、脚ブロックなどによるQRS幅拡大の鑑別。
国試ポイント
運動負荷心電図における心筋虚血の診断基準(特にST部分の変化)を理解しているか。
混同注意
ST上昇は急性心筋梗塞を示唆するが、本症例ではST低下である。また、J点降下をST低下と混同しない。
次に同じ論点が出たら
運動負荷心電図の判読では、まず安静時と運動負荷時のST部分の波形と基線からの偏位(低下または上昇)を比較し、その程度と型(水平型、下降型、上昇型)を確認する。
関連知識
運動負荷心電図の陽性基準には、ST低下の他にST上昇や不整脈の誘発なども含まれる。ST低下が2mm以上で陽性と判断されることが多いが、1mm以上で疑陽性として注意が必要である。