Aさん(56歳、男性)は、コンビニエンスストアの店長で自動車を運転して通勤している。不規則な生活が続き、ストレスが溜まることも多く、十分な睡眠がとれないこともあった。荷物を運ぶときに胸部の圧迫感が繰り返し出現し受診したところ、狭心症が疑われたため検査をすることになった。脂質異常症の既往がある。 検査の結果、Aさんは労作性狭心症と診断され、硝酸薬、カルシウム拮抗薬および抗血小板薬を内服することになった。その後、外来通院を続け、以前と同様に負荷のかかる作業もできるようになった。内服治療から1か月後、胸部の圧迫感が強くなり、時々左上腕から前腕にかけての放散痛も出現するようになったため、経皮的冠動脈形成術〈PCI〉を受けた。カテーテルは右大腿動脈から挿入されていた。手術中から抗凝固療法を実施している。手術直後の観察項目として適切なのはどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・4番
解説
経皮的冠動脈形成術(PCI)では、カテーテルを血管に挿入するため、刺入部位からの出血や血栓形成による末梢循環障害のリスクが常に伴います。特に、術中から抗凝固療法を実施している患者の場合、出血傾向が高まっているため、刺入部位やその周囲からの出血の有無を詳細に観察することが非常に重要です。また、カテーテル挿入による血管損傷や血栓形成により、挿入部位より末梢の血流が阻害される可能性があるため、足背動脈などの末梢動脈の触知を確認し、血流の維持状況を評価することも極めて重要です。これらは術直後の患者の安全を確保するための最優先観察項目となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 乏尿は腎機能低下の指標であり、造影剤使用による腎障害の可能性もゼロではありませんが、手術直後の最優先の観察項目ではありません。一般的に、造影剤腎症は数日後に顕在化することが多いです。正しくは:造影剤使用による急性腎障害は、数日経ってから発症することが多いため、術後直後よりも時間を置いた観察が重要になります。選びやすい理由:PCIでは造影剤を使用するため、腎機能への影響を懸念する気持ちから選びやすいかもしれません。混同注意:急性期の合併症と、時間経過とともに現れる合併症の優先順位。
- 2. 皮膚の黄染は肝機能障害や溶血性貧血などを示す症状であり、PCI手術直後の急性の合併症とは直接関連が薄いです。術直後の緊急性を要する観察項目ではありません。正しくは:皮膚の黄染は黄疸の兆候であり、主に肝機能障害や胆道系の問題を示唆します。PCI直後には通常見られません。選びやすい理由:一般的な身体所見の一つとして考えられるため、選択肢として目を引くかもしれません。混同注意:緊急性の高い症状と、慢性的な疾患を示唆する症状。
- 3. 正解。PCIではカテーテルを挿入した部位(大腿動脈など)からの出血リスクが常に伴います。特に術中から抗凝固療法を行っているため、出血傾向が高まっており、刺入部位の皮下出血、血腫形成、後腹膜出血などの有無は最優先で観察すべき項目です。正しくは:正しい選択肢です。
- 4. 正解。カテーテルを大腿動脈から挿入する際、動脈を損傷したり、血栓が形成されて末梢への血流が阻害されたりする可能性があります。そのため、カテーテル挿入部位より末梢(この場合は足背動脈)の血流状態を確認することは、虚血性合併症の早期発見のために非常に重要です。正しくは:正しい選択肢です。
- 5. カテーテル刺入部位の感染は起こり得る合併症ですが、通常は手術直後ではなく、数日経ってから発赤、腫脹、熱感、疼痛などの徴候として現れることが多いです。手術直後の緊急性は低いです。正しくは:感染徴候の観察は重要ですが、術直後よりは時間経過を追って継続的に行う観察項目です。術直後に緊急で確認すべきは出血や血流障害です。選びやすい理由:侵襲的な処置であるため、感染のリスクを考慮して選びやすいかもしれませんが、術直後の緊急性では出血や血流障害が優先されます。混同注意:術後合併症全般と、術直後の緊急性が高い合併症の区別。
国試ポイント
この問題は、経皮的冠動脈形成術(PCI)後の看護において、特に術直後に緊急性が高く、患者の生命予後に関わる合併症を早期に発見するための観察項目を理解しているかを問うものです。出血と末梢循環障害の確認が重要視されます。
混同注意
術後の合併症全般(感染、腎障害など)と、術直後の緊急性が高い合併症(出血、血流障害)の優先順位を混同しやすい。また、抗凝固療法実施中の患者におけるリスクの認識もポイントとなる。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず『カテーテル挿入部位』と『使用薬剤(特に抗凝固薬)』から起こりうる緊急性の高い合併症を推測し、その症状を直接的に評価する選択肢を優先的に検討する。
関連知識
PCI後の合併症として、出血(刺入部、後腹膜)、血栓症(急性冠動脈閉塞、末梢動脈閉塞)、動静脈瘻、仮性動脈瘤、造影剤腎症、不整脈、感染などがある。術直後は特に、出血と末梢循環障害の観察が重要。穿刺部の圧迫止血、安静臥床、定期的なバイタルサイン測定も必須のケア。