Aさん(27歳、男性)は、地震によって倒壊した建物に下腿を挟まれていたが、2日後に救出された。既往歴に特記すべきことはない。注意すべき状態はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
Aさんのような長時間の圧迫による挫滅症候群(クラッシュ症候群)では、圧迫が解除された際に、損傷した筋細胞からカリウム、ミオグロビン、乳酸などが血液中に大量に放出されます。特にカリウムは細胞内に多く含まれており、これが血液中に流出することで高カリウム血症を招きます。高カリウム血症は、不整脈や心停止などの重篤な心臓合併症を引き起こす危険性が高く、救出後の緊急対応で最も注意すべき状態の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 尿崩症は、抗利尿ホルモンの分泌異常や腎臓での作用不全により、多尿や口渇を呈する疾患です。長時間の圧迫による挫滅症候群(クラッシュ症候群)では、腎不全が問題となりますが、尿崩症とは直接関連がありません。正しくは:クラッシュ症候群では腎機能障害が問題となるが、尿崩症は抗利尿ホルモンに関連する疾患であるため、圧迫による外傷とは直接関連性が低い。選びやすい理由:腎臓に関連する選択肢であるため、安易に選んでしまう可能性がある。しかし、病態機序が異なる。混同注意:尿崩症と腎不全、急性腎障害の関連性を混同する可能性がある。クラッシュ症候群で起こる腎不全は、主にミオグロビンによる尿細管閉塞が原因であり、尿崩症とはメカニズムが異なる。
- 2. 正解。長時間にわたる下肢の圧迫により、筋肉組織が広範囲に損傷を受けます(挫滅症候群、クラッシュ症候群)。筋肉細胞が破壊されると、細胞内に多く存在するカリウムが血液中に大量に放出され、高カリウム血症を引き起こします。これは心停止などの重篤な合併症につながるため、救出後に特に注意すべき状態です。正しくは:選択肢は適切です。挫滅症候群では、筋細胞の破壊により細胞内カリウムが血中に流出し、高カリウム血症が生じやすい。選びやすい理由:他の選択肢も身体のバランスを崩す可能性があるため、確信が持てないと選べない。混同注意:他の電解質異常と混同する可能性がある。特にカリウムは心臓に直接影響するため、緊急性が高いことを理解しておく必要がある。
- 3. 挫滅症候群では、損傷した筋細胞からミオグロビンが大量に血中に放出され、ミオグロビン血症(高ミオグロビン血症)となります。このミオグロビンが腎臓に負担をかけ、急性腎不全の原因となるため、低ミオグロビン血症ではなく、高ミオグロビン血症が問題となります。正しくは:挫滅症候群では、筋細胞破壊によりミオグロビンが血中に大量放出され、『高』ミオグロビン血症となる。選びやすい理由:ミオグロビンが腎臓障害と関連があることは知っていても、「高」と「低」を混同する可能性がある。混同注意:ミオグロビンの役割と、挫滅症候群における病態生理学的な変化を正確に理解していないと間違えやすい。高ミオグロビン血症が原因で急性腎不全が生じることを覚えておく必要がある。
- 4. 挫滅症候群では、筋肉組織の虚血や嫌気性代謝亢進により乳酸が蓄積し、代謝性アシドーシスを呈することが一般的です。代謝性アルカローシスは、体内の酸が過剰に排出されたり、アルカリが過剰に蓄積したりすることで起こり、挫滅症候群の病態とは異なります。正しくは:挫滅症候群では、乳酸の蓄積により『代謝性アシドーシス』を呈する。選びやすい理由:アシドーシスとアルカローシスを混同する可能性がある。混同注意:アシドーシスとアルカローシスの病態を正確に理解していないと間違えやすい。挫滅症候群では、筋細胞の損傷と虚血により嫌気性代謝が亢進し、乳酸が蓄積するため、代謝性アシドーシスが生じることを認識しておく必要がある。
国試ポイント
挫滅症候群(クラッシュ症候群)における病態生理と、それに伴う電解質異常・臓器障害について理解しているか問う問題です。特に高カリウム血症が心臓に与える影響と、急性腎不全の原因となるミオグロビン腎症のメカニズムを把握していることが重要です。
混同注意
各選択肢が示す病態と、挫滅症候群の具体的な関連性を混同しやすい。特に「高」と「低」の違いや、アシドーシスとアルカローシスの区別は注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
救出後の初期対応として、心電図モニタリング、血液検査(カリウム、CPK、ミオグロビン、腎機能など)、輸液管理が適切に行われているか判断する。
関連知識
挫滅症候群の治療法(輸液療法、利尿薬、電解質補正、血液透析など)、コンパートメント症候群、急性腎不全の病態。