Aさん(43歳、男性、会社員)は、妻(38歳)と2人暮らし。1年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症と診断された。 入院後3日までにAさんに出現する可能性が高い症状はどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4・5番
解説
アルコール離脱症状は、飲酒を中断または減量した際に、中枢神経系の過剰興奮によって生じる一連の症状です。入院後3日以内という初期段階では、自律神経系の亢進症状(振戦、発汗、頻脈など)や精神神経症状(不安、不眠、幻覚、けいれんなど)が出現しやすいです。幻覚(特に幻視)と振戦は、これらの初期症状として非常に頻繁に見られます。
選択肢ごとの解説
- 1. 観念奔逸は躁病エピソードや統合失調症の一部で見られますが、アルコール離脱症状の初期段階(入院後3日以内)には典型的ではありません。離脱による興奮状態とは異なる症状です。正しくは:アルコール離脱症状の初期には、精神運動性興奮や不安、不眠などが現れやすいですが、観念奔逸は特異的な症状ではありません。選びやすい理由:離脱症状に伴う精神的な興奮や焦燥感と混同されるかもしれませんが、思考内容が次々に移り変わるという特徴は直接的に当てはまりません。混同注意:離脱せん妄と観念奔逸は異なる概念です。離脱せん妄は意識混濁と幻覚を特徴とします。
- 2. 緘黙はうつ病の重症期や統合失調症の緊張病型などで見られる症状であり、アルコール離脱症状の初期段階では稀です。むしろ精神運動性興奮や不安を伴うことが多いです。正しくは:アルコール離脱症状の初期では、不安や興奮、不穏が見られやすく、コミュニケーションが困難になることはあっても、自発的に話せなくなる緘黙とは異なります。選びやすい理由:重度のせん妄状態ではコミュニケーションが困難になることがありますが、これは緘黙とは異なり、意識混濁によるものです。混同注意:興奮状態と緘黙は対極の症状です。離脱症状で興奮が強い場合、緘黙は考えにくいです。
- 3. 強迫症状は強迫性障害の主要な症状であり、アルコール離脱症状の初期には通常出現しません。離脱症状は身体的・精神的な不快感が主となります。正しくは:アルコール離脱症状は、中枢神経系の過興奮によって引き起こされる症状群であり、強迫的な思考や行動とはメカニズムが異なります。選びやすい理由:不安が強いと特定の行動にこだわるように見えるかもしれませんが、これは病的な強迫行為とは異なります。混同注意:不安は離脱症状の一つですが、不安からくる強迫症状と直接結びつくわけではありません。
- 4. 正解。アルコール離脱症状の初期(通常は飲酒中断後12~48時間後)には、幻覚(特に幻視)が出現する可能性が高いです。これは離脱せん妄の前駆症状、または独立したアルコール性幻覚症として現れることがあります。正しくは:アルコール離脱によって中枢神経系の興奮が高まり、幻覚、特に鮮明な幻視がしばしば生じます。選びやすい理由:幻視だけでなく、幻聴も起こり得ます。混同注意:幻覚は錯覚と異なり、対象物がないにもかかわらず知覚されるものです。
- 5. 正解。振戦(手の震え)はアルコール離脱症状の最も一般的な初期症状の一つです。飲酒中断後6~12時間で出現し、不安や発汗とともに見られます。正しくは:アルコールの中枢抑制作用が消失し、過剰な興奮状態となることで、自律神経系の亢進に伴い振戦が出現します。選びやすい理由:振戦は全身に起こりえますが、特に手指に顕著です。混同注意:振戦は本人の意思とは無関係に起こる不随意運動です。
国試ポイント
アルコール離脱症状の出現時期と特徴的な症状を理解しているかが問われています。特に初期に現れる主要な症状を把握しておくことが重要です。
混同注意
離脱症状は多岐にわたるため、精神症状と身体症状を混同したり、出現時期の異なる症状を誤って選択したりしないように注意が必要です。例えば、重篤な離脱症状である離脱せん妄(振戦せん妄)は通常2~4日後に出現しますが、幻覚や振戦はその前駆症状または初期症状として3日以内に見られます。
次に同じ論点が出たら
Aさんの現在の飲酒歴や中断からの経過時間、他の既往歴などを考慮し、さらに詳細なアセスメントを行うことで、症状の進行リスクを評価し、適切な医療介入やケアプランを立てる判断が続きます。
関連知識
アルコール離脱症状の進行には段階があり、軽度の離脱症状(振戦、不安、発汗)から、アルコール性幻覚症、離脱けいれん、そして最も重篤な離脱せん妄へと移行する可能性があります。それぞれの症状の出現時期と重症度を関連付けて理解することが求められます。