Aさん(22歳、女性、会社員)は、昼食後、自室に大量のお菓子とお酒を持ち込み、食べて飲んでいたところを母親に注意をされたことに腹を立て、母親の目の前でリストカットを始めた。慌てた母親は、父親とともにAさんを連れて救急外来に来院した。医師が傷の処置をしようとすると「死んでやる。触るな」と大声で騒ぎ暴れ始めたため、精神科病棟に緊急入院となった。 入院後3週、Aさんの精神状態は落ち着き、職場に早く戻りたいと意欲があったため、退院に向けての準備をすることになった。自傷行為は、入院前の1回のみだった。Aさんは「また過食をしないか心配だ」と看護師に訴えた。そのため主治医はAさんと話し合い認知行動療法が開始となった。Aさんの退院に向けて、医師、看護師のチームと連携するメンバーで最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんは過食への不安を訴え、主治医は認知行動療法の導入を決定しています。臨床心理士は、認知行動療法を含む精神療法を専門とし、心の状態や行動を評価し、具体的な支援計画を立てる役割を担うため、退院後の再発予防に不可欠です。
選択肢ごとの解説
- 1. 栄養士は、食事内容や栄養状態の管理を専門としますが、Aさんの主要な問題が「過食への不安」とそれに対する「認知行動療法」であるため、直接的な退院支援の中心となる職種ではありません。正しくは:摂食障害の患者が退院後も適切な食習慣を維持できるよう、具体的な栄養指導や食事計画の立案が必要な場合に連携します。選びやすい理由:「過食」というキーワードから、食事に関連する職種として栄養士を連想しやすいですが、本症例では過食への「不安」とそれに対する「精神療法」が主題です。混同注意:摂食障害における食行動の直接的な管理と、精神的な側面からのアプローチの区別。
- 2. 薬剤師は、薬物療法の専門家であり、服薬指導や副作用の確認などが主な役割です。Aさんは認知行動療法が導入される予定であり、薬物療法に関する言及がないため、この時点での最優先の連携職種ではありません。正しくは:薬物療法が継続される場合や、退院後の服薬管理に不安がある場合に、適切な服薬指導や情報提供のために連携します。選びやすい理由:精神疾患の治療には薬物療法が伴うことが多いため、薬剤師が必要であると安易に判断してしまう可能性があります。しかし、本件では精神療法が主題です。混同注意:精神科治療全般における多職種連携の必要性と、特定の問題解決における専門職の優先順位。
- 3. 正解。Aさんの「また過食してしまうのではないかと不安」という訴えに対し、主治医は「認知行動療法」の導入を決定しています。臨床心理士は、心理アセスメントや精神療法(特に認知行動療法)の専門家であり、再発予防のための具体的な心理的支援を提供する上で最も適切な職種です。選びやすい理由:問題の状況と治療方針に最も合致しているため、迷うことなく選択できます。
- 4. ゲートキーパーは、自殺のサインに気づき、声をかけ、話を聞き、必要な支援につなぎ、見守る人のことです。特定の職種を指すものではなく、一般市民や医療従事者など誰もが担うことができる役割であり、特定の治療法を専門とする職種ではありません。Aさんのケースでは自傷行為は入院前に1度あっただけとあり、過食への不安と精神療法が焦点です。正しくは:自殺リスクが高い患者や、地域での見守りが必要な患者の支援において、地域全体でゲートキーパー養成や連携を図ります。選びやすい理由:Aさんの「自傷行為は入院前に1度あっただけ」という情報から、自殺予防に関連するゲートキーパーを連想するかもしれませんが、現在の主な問題は過食への不安と精神療法です。混同注意:自殺予防のための一般的な役割と、特定の精神療法を専門とする職種の役割。
- 5. 精神保健福祉相談員(精神保健福祉士)は、精神疾患を抱える人の社会復帰や日常生活支援、福祉サービスの利用援助などを専門とします。Aさんの問題が「過食への不安」とそれに対する「認知行動療法」であるため、退院後の社会生活上の具体的なサポートが必要となる段階では重要ですが、認知行動療法の導入という点では臨床心理士が優先されます。正しくは:退院後の住居、就労、経済的問題など、社会生活全般に関する相談や、適切な福祉サービスの利用支援のために連携します。選びやすい理由:精神科領域での多職種連携において重要な職種であり、退院支援において必要な存在であるため、選択肢として魅力的です。しかし、問題の直接的な焦点(過食への不安と認知行動療法)とは少しずれます。混同注意:精神療法を専門とする職種と、社会福祉的な支援を専門とする職種の役割。
国試ポイント
精神科医療における多職種連携とその職種ごとの専門性、特に精神療法が必要な場面での臨床心理士の役割を理解する。
混同注意
精神疾患患者の支援に関わる職種は多岐にわたるが、治療法の専門性(例:認知行動療法)と直接関連する職種を選ぶ必要性。
次に同じ論点が出たら
精神療法(特に認知行動療法など特定の治療法名が示唆された場合)の導入が決定されたら、その療法を専門とする職種(臨床心理士)が最も適切と判断する。
関連知識
認知行動療法は、うつ病、不安障害、摂食障害など幅広い精神疾患に有効な精神療法であり、患者の思考パターンや行動を修正することで症状の改善を目指す。臨床心理士以外にも、精神科医が精神療法を行う場合もある。