Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 Aさんのパニック発作は消失し、不眠も改善したため、睡眠薬の処方は終了となった。Aさんは「もともと手足が冷えて寝つきが悪かったから、睡眠薬がなくなることが少し心配です。自分で工夫できることはあるでしょうか」と看護師に尋ねてきた。看護師が以前の睡眠状況を尋ねると、睡眠時間は23時から6時までの7時間であったこと、手足が冷えて眠れない時は熱いシャワーを浴びてから布団に入っていたことを話した。Aさんの睡眠へのセルフケアに対する看護師の指導で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
適切な入浴法は睡眠の質を高めるセルフケアとして有効です。特にぬるいお湯にゆっくり浸かることで副交感神経が優位になり、リラックス効果が高まります。Aさんが以前熱いシャワーを浴びていたという情報から、体温変化を利用した入眠促進の正しい方法を指導することが重要です。熱いシャワーは体を覚醒させてしまうため、眠気を妨げる可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 睡眠の質を保つためには、平日と休日で起床時間を大きく変えないことが重要です。休日に過度に寝だめをすると、概日リズムが乱れ、かえって寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりする可能性があります。正しくは:「休日は平日と同じくらいの時間に起きるように心がけ、不足分は午後の早い時間に短い仮眠で補うようにしましょう」選びやすい理由:疲れが取れるように長く寝るのが良い、と単純に考えてしまうかもしれませんが、睡眠リズムを保つことが大切です。混同注意:睡眠時間の確保と睡眠リズムの維持を混同しやすいです。
- 2. Aさんの通常の就寝時刻は23時であり、急に就寝時刻を2時間も早めると、眠気を感じる前に布団に入ることになり、かえって寝つきが悪くなる可能性があります。適切な就寝時間は個人のリズムによるため、無理に早めるのは適切ではありません。正しくは:「自分の自然な眠気が来る時間に合わせて布団に入るようにしましょう。もし時間を変える場合は、少しずつ調整していくのが良いでしょう」選びやすい理由:早く寝ればたくさん眠れるという単純な発想から選びやすいですが、眠くないのに布団に入るとかえってストレスになります。混同注意:理想的な睡眠時間と個人の適切な就寝時刻を混同しやすいです。
- 3. 正解。入浴は体温を一時的に上げ、その後体温が下がることで自然な眠気を誘います。ただし、熱すぎるお湯は交感神経を刺激して体を覚醒させてしまうため、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることがリラックス効果を高め、安眠に繋がります。また、Aさんが熱いシャワーを浴びていたという情報から、ぬるい入浴への修正は特に重要です。正しくは:(正答のため修正不要)選びやすい理由:(正答のため特になし)混同注意:(正答のため特になし)
- 4. 眠れないまま布団の中に長くいると、「布団=眠れない場所」という悪い学習が形成され、不眠が悪化する可能性があります。眠れないと感じたら、一度布団から出てリラックスできる軽い活動(読書など)を行い、眠気を感じてから再度布団に戻るのが良いとされています。正しくは:「もし20分程度経っても眠れない場合は、一度布団から出て、静かでリラックスできる場所で軽い活動をし、眠気を感じてからまた布団に戻るようにしましょう」選びやすい理由:眠れないときに焦って動くと余計に目が冴える、という発想から選びやすいですが、布団の中で悶々とするのは避けるべきです。混同注意:睡眠時間の確保と不眠時の対処法を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、不眠に対する非薬物療法(睡眠衛生指導)に関する知識、特に生活習慣の改善によるセルフケアの指導内容について問われています。患者の具体的な訴えや現在の習慣(手足の冷え、熱いシャワー)を踏まえた個別的な指導の適切さが評価ポイントです。
混同注意
睡眠習慣に関する一般的な知識だけでなく、具体的な生活指導の適切性(例えば、熱いシャワーとぬるい入浴の違い)を理解しているかが問われます。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、患者の現在の生活習慣(特に不眠に影響を与えている可能性のある行動)を把握し、それに対する具体的な修正案が適切かを判断します。睡眠リズム、刺激物摂取、入浴習慣、運動習慣などに着目します。
関連知識
睡眠衛生指導の原則(就寝・起床時間の一定化、規則正しい生活、カフェイン・アルコールの制限、快適な寝室環境、適度な運動など)。入浴と体温変化による入眠メカニズム。