Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 受診から1か月後、Aさんは11階の職場に向かう途中、エレベーターの中でパニック発作を再び起こした。その時は、息が止まってしまうように感じた。それ以来、エレベーターを見ると、また同じようになってしまうかもしれないと思うようになり、怖くて乗れなくなり、仕事にも支障が出るようになった。Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
エレベーターという特定の状況に対する恐怖が、窒息しそうな感覚という身体症状を伴うパニック発作を引き起こし、それが回避行動につながっているため、認知行動療法的なアプローチが最も適切です。誤った認知を修正することで、感情や行動の変容を促します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Aさんはエレベーターに対する誤った認知(「エレベーター内で呼吸ができなくなる」)がパニック発作を引き起こし、回避行動につながっています。この認知の歪みを修正することは、認知行動療法の中心的な介入であり、パニック症に対する看護師の支援として最も効果的です。選びやすい理由:問題文の症状と状況に対し、原因となる誤った認知を修正するという介入が直接的に関連しているため。混同注意:他の精神疾患への介入との区別。これは特にパニック症の認知行動療法に特有の介入です。
- 2. グループ療法は有用な治療法の一つですが、パニック発作の症状が強く、特定の状況への恐怖が顕著なAさんに対しては、まず個別で認知の修正と曝露療法を行うことがより効果的であると考えられます。初期段階でのグループ療法は、かえって不安を増強させる可能性もあります。正しくは:まずは個別で認知行動療法的な介入を行い、症状が安定した後にグループ療法を検討する。選びやすい理由:同じ症状を持つ人との交流が精神的な支えになるという一般的な理解から、良さそうに感じられるため。混同注意:精神疾患全般に対する集団精神療法のアプローチ。パニック症の急性期や症状が強い時期には、個別介入が優先されることが多いです。
- 3. 抗うつ薬(特にSSRI)はパニック症の治療薬として用いられますが、薬物療法は医師の役割であり、看護師は服薬指導を行う立場です。最も適切な看護師の対応としては、精神療法的なアプローチを優先的に検討すべきです。また、問題文は看護師の『対応』を問うています。正しくは:医師の指示のもと、薬物療法と並行して認知行動療法を行うことを提案し、看護師として認知行動療法的な支援を行う。選びやすい理由:薬物療法がパニック症の治療の柱の一つであるため、重要であると感じられるため。混同注意:医師の役割と看護師の役割の区別。薬の処方や詳細な説明は医師の専門分野です。
- 4. ロールプレイを用いた社会生活技能訓練(SST)は、統合失調症などによる対人関係の問題や社会生活機能の低下に対して有効ですが、Aさんの場合は特定の状況でのパニック発作とそれに伴う回避行動が問題であり、社会生活技能の欠如が主たる問題ではありません。パニック症の症状改善には直接的に結びつきません。正しくは:パニック症に対しては、認知再構成や曝露療法などの認知行動療法的な技法を用いる。選びやすい理由:リハビリテーションの一環として広く知られているため、一般的な精神科看護の介入として連想されやすいため。混同注意:統合失調症などの精神疾患に対する介入方法。SSTは社会生活技能の欠如が主な問題である場合に有効です。
国試ポイント
パニック症の認知行動療法の基本的な考え方と介入方法を理解する。
混同注意
パニック症と他の不安症(例:広場恐怖症、社交不安症)の区別、およびそれぞれの治療アプローチ。
次に同じ論点が出たら
特定の状況や対象に対する強い恐怖と回避行動が見られる場合に、その恐怖の原因となっている誤った認知を特定し、修正する介入が選択肢に含まれているかを確認する。
関連知識
認知行動療法の技法(認知再構成法、曝露療法など)、パニック発作の症状と診断基準、薬物療法との併用効果。