注意欠如・多動症〈注意欠如・多動性障害〉児に認められる作業療法中の行動はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
注意欠如・多動症(ADHD)は、不注意、多動性、衝動性を中核症状とする神経発達症です。作業療法中、子どもが課題に集中できず、席を頻繁に立つ、目的なく動き回る、そわそわするといった行動は、多動性の典型的な現れです。これは、一つの場所に留まることや、静かに活動を続けることが難しいという特性を示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。注意欠如・多動症(ADHD)の中核症状である「多動性」に合致する行動です。じっと座っていることが難しく、頻繁に席を離れたり、そわそわしたりする様子が観察されます。これは特に構造化されていない環境や、興味の低い課題に取り組む際に顕著になります。
- 2. これはてんかんなどの神経学的な疾患でみられる症状であり、注意欠如・多動症(ADHD)の中核症状ではありません。ADHDの直接的な症状として発作を起こすことはありません。正しくは:集中力が持続しない、衝動的な行動をとる、指示を聞き逃す、など。選びやすい理由:落ち着きがない様子が、何か神経学的な異常と結びつくのではないかと短絡的に考えてしまう可能性。しかし「発作」という明確な医学用語はADHDに直接結びつかないため不適切です。混同注意:てんかん性発作と、ADHDの多動性や不注意を混同する。多動性と身体的な制御不能を同一視してしまうことがあるかもしれません。
- 3. 誇大的な発言は、主に気分障害(特に躁病エピソード)や統合失調症などの精神疾患でみられる症状であり、注意欠如・多動症(ADHD)の診断基準には含まれません。ADHDの特性とは異なります。正しくは:課題に集中できない、ルールを守ることが難しい、衝動的に発言する、など。選びやすい理由:多動性や衝動性からくる自己制御の難しさや、失敗が多いことによる自己肯定感の低さをカバーするために、虚勢を張るような発言と誤解する可能性。しかし「誇大的」な発言はADHDの典型ではありません。混同注意:ADHDの衝動性による不用意な発言や、自己肯定感の低さからくる行動を、誇大妄想的な発言と混同する。
- 4. 作業工程を繰り返し確認する行動は、主に強迫性障害(OCD)でみられる強迫行為の特徴であり、注意欠如・多動症(ADHD)の中核症状ではありません。ADHDの不注意は確認不足やミスにつながりやすく、過度な確認行動とは対照的です。正しくは:作業工程を忘れる、指示を最後まで聞けない、間違いが多い、など。選びやすい理由:不注意によるミスを避けるために、確認行動が増えるのではないかと考える可能性。しかし、ADHDの不注意はむしろ確認を怠ることにつながりやすいです。過度な確認はOCDの典型であるため不適切です。混同注意:ADHDの不注意によるミスと、強迫性障害の確認行為を混同する。不安からくる確認と、単純な不注意を混同する。
- 5. 相手の言葉をそのまま繰り返す「エコラリア(反響言語)」は、主に自閉スペクトラム症(ASD)でみられる特徴的な言語行動であり、注意欠如・多動症(ADHD)の診断基準には含まれません。正しくは:自分の考えがまとまらないまま衝動的に発言する、会話の途中で注意が逸れる、など。選びやすい理由:コミュニケーションの困難さや、社会性の問題をADHDと関連付けてしまう可能性。しかし、エコラリアはASDに特有な症状であるため不適切です。混同注意:ADHDの衝動性による割り込み発言や、社会性の困難を、ASDの反響言語と混同する。
国試ポイント
作業療法士国家試験において、注意欠如・多動症(ADHD)の行動特性や診断基準は頻繁に問われます。特に、多動性、不注意、衝動性の具体的な現れ方や、他の精神疾患(自閉スペクトラム症、強迫性障害、てんかん、気分障害など)との鑑別点が重要視されます。臨床現場での観察に基づいた具体的な行動選択肢から、ADHDに最も合致するものを識別する能力が求められます。
混同注意
本問題の選択肢は、それぞれ異なる精神疾患や神経疾患の症状を提示しており、ADHDの症状と混同しやすいポイントが含まれています。例えば、ADHDの多動性と、てんかんによる発作、ADHDの衝動性と躁病の誇大性、ADHDの不注意と強迫性障害の確認行為、ADHDのコミュニケーション困難と自閉スペクトラム症のエコラリアなど、各症状の定義と背景にある疾患を正確に理解しておくことが鑑別には不可欠です。
次に同じ論点が出たら
次にADHDに関する問題が出た場合、DSM-5などの診断基準における不注意、多動性、衝動性の具体的な症状を詳細に理解しているかを確認しましょう。特に、乳幼児期、学童期、思春期、成人期と年齢によって症状の現れ方が変化する点や、併存症との鑑別点、さらに作業療法における具体的な評価(例:作業遂行分析、標準化検査など)や介入(例:環境調整、行動マネジメント、自己調整能力の育成など)の視点から出題される可能性が高いです。
関連知識
注意欠如・多動症(ADHD)の診断は、DSM-5などの診断基準に基づいて行われます。不注意症状として「課題に集中できない」「忘れ物が多い」など、多動性・衝動性症状として「じっとしていられない」「待てない」「衝動的に発言する」などが挙げられます。作業療法では、構造化された環境設定、感覚統合療法、行動療法、ソーシャルスキルトレーニングなどが介入として用いられます。また、ADHDは自閉スペクトラム症や学習障害、気分障害などと併存することも多いため、包括的な評価が重要です。