老年期における精神保健上の問題として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
老年期には、社会との接点の減少、役割の喪失、身体機能の低下、親しい人との死別など、社会的孤立を引き起こす要因が多く存在します。社会的孤立は、孤独感や抑うつ状態、さらには認知機能の低下にも繋がるなど、高齢者の精神保健に深刻な影響を及ぼすことが知られています。そのため、高齢期における精神保健上の重要な問題として認識されています。
選択肢ごとの解説
- 1. 緘黙(かんもく)は、話す能力があるにも関わらず、特定の状況下で話せなくなる状態を指し、主に児童期に現れることが多く、老年期の一般的な精神保健上の問題とは異なります。正しくは:老年期においては、失語症や認知症によるコミュニケーション困難はありますが、緘黙とは区別されます。選びやすい理由:コミュニケーションに関する問題であるため、高齢期にも関連があるように見えるかもしれませんが、緘黙の定義とは異なります。混同注意:失語症、構音障害、認知症によるコミュニケーション障害と混同しやすいですが、これらは緘黙とは病態が異なります。
- 2. 同一性拡散は、自己の確立や役割認識が曖昧になる状態を指し、エリクソンの発達段階では思春期・青年期に特徴的な課題とされます。老年期には通常、該当しません。正しくは:老年期では、人生の再評価や統合性が課題となります。選びやすい理由:人生の転換期における自己認識の変化と捉えられ、老年期にも関連があるように見えるかもしれませんが、定義としては青年期の課題です。混同注意:老年期の「人生の統合性対絶望」の課題と混同しやすいですが、同一性拡散は青年期の概念です。
- 3. 正解。老年期には、定年退職による社会的な役割の喪失、配偶者や友人の死別、身体機能の低下による外出機会の減少などにより、社会とのつながりが希薄になり、社会的孤立に陥りやすくなります。これは精神的な健康に悪影響を及ぼす重要な問題です。選びやすい理由:明確な精神疾患ではないため、適切な選択肢かどうか迷うかもしれませんが、精神保健上の大きなリスク因子です。混同注意:うつ病や認知症と混同しやすいですが、社会的孤立はそれらの誘因や結果となることが多く、独立した精神保健上の問題として認識されます。
- 4. 空の巣症候群は、子が成長して家庭を離れた後に親が感じる喪失感や虚無感を指し、主に中年期の女性に見られることが多い心理状態です。老年期に特有の精神保健上の問題とは限りません。正しくは:この症候群は、親が子の独立によって感じる一時的な適応障害であり、老年期に限定されるものではありません。選びやすい理由:「巣が空になる」という表現が高齢期を連想させるため選びやすいかもしれませんが、定義的には中年期の親の心理です。混同注意:配偶者の死別などによる喪失感と混同しやすいですが、空の巣症候群は子の独立に伴うものです。
- 5. モラトリアムは、社会的な責任や義務の遂行を一時的に猶予されている期間を指し、エリクソンの発達段階では青年期に特徴的です。自己探求のための猶予期間であり、老年期の精神保健上の問題とは一致しません。正しくは:老年期は、人生の終末期における自己の統合が課題となります。選びやすい理由:人生の節目における「停止期間」というイメージから、高齢期の再評価と関連付けて考えやすいかもしれませんが、概念は異なります。混同注意:定年退職後の自由な期間と混同しやすいですが、モラトリアムは自己同一性確立のための猶予期間を指します。
国試ポイント
この問題は、老年期の発達課題や、高齢期に特有の心理社会的な問題についての理解を問うものです。各発達段階に特徴的な心理的課題や、具体的な症候群、社会的な問題の名称とその定義を正確に把握しているかが重要となります。
混同注意
各選択肢が示す心理学的概念や症候群が、どの発達段階や状況に主に該当するのかを正確に理解しておく必要があります。特に「空の巣症候群」は高齢期と混同しやすいですが、子の独立がトリガーとなる中年期の親の心理であることを押さえることが重要です。また、「社会的孤立」は明確な精神疾患ではないため、精神保健上の問題として認識できるかどうかがポイントになります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、選択肢として登場する概念が、特定のライフステージや疾患に特有のものであるかどうか、その定義が老年期の問題と合致するかどうかを厳しく判断する必要があります。特に、社会的な問題(孤立、貧困など)も精神保健上の問題として捉えられるかを注意深く検討することが求められます。
関連知識
エリクソンの発達段階理論(特に青年期の「同一性対同一性拡散」、老年期の「統合性対絶望」)、高齢者の社会参加の重要性、孤独死の問題、地域包括ケアシステム。