慢性疼痛を有する患者のリハビリテーション治療で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
慢性疼痛は、単なる身体的な問題だけでなく、心理社会的要因が複雑に絡み合って生じるため、多角的なアプローチが必要です。認知行動療法は、痛みの解釈やそれに対する行動パターンを変えることで、痛みの苦痛を軽減し、機能改善を促す有効な手段として広く推奨されています。患者さんが痛みにどう対処するか、活動レベルをどう維持・向上させるかを学ぶ上で、CBTは中心的な役割を果たします。
選択肢ごとの解説
- 1. 慢性疼痛の管理において、身体活動や運動療法は痛みの軽減、身体機能の向上、生活の質の改善に非常に重要です。活動性の低下は、さらなる機能障害や悪循環を招きます。正しくは:身体活動を取り入れた運動療法は積極的に推奨されるべきである。選びやすい理由:痛みがあるため、運動すると悪化するという誤解から、安静にすべきだと考えがちです。混同注意:急性期の炎症や組織損傷に対する安静と、慢性疼痛に対する管理を混同しやすいです。
- 2. 慢性疼痛の場合、過度な安静は筋力低下や身体機能の低下、精神的苦痛の増大につながり、回復を妨げます。活動量を徐々に増やし、日常生活への復帰を促すことが重要です。正しくは:慢性的な腰痛がある場合でも、活動性の維持や段階的な運動を促すことが望ましい。選びやすい理由:急性期の強い痛みに対して安静が有効な場合があるため、慢性期にも適用されると誤解しやすいです。混同注意:急性腰痛の治療指針と慢性腰痛の治療指針を混同しやすいです。
- 3. 正解。慢性疼痛は身体的な要因だけでなく、心理的、社会的要因が複雑に絡み合っています。認知行動療法は、痛みの捉え方や対処スキルを改善し、苦痛の軽減や機能の向上に有効であると広く認識され、多くのガイドラインで推奨されています。
- 4. 慢性疼痛治療の目標は、患者さんの自己効力感を高め、活動性を向上させることにあります。受動的な治療に偏ると、患者さんが自分自身で痛みをコントロールする力を損ないかねません。一時的な症状緩和にはなりえますが、最も適切な治療とは言えません。また、「積極的」という表現は、痛みを誘発する可能性や、治療への依存を生む可能性も示唆します。正しくは:個々の患者さんの状態に合わせて、リラクゼーション目的や活動を促す準備として、マッサージなどの物理療法を補助的に用いることはあるが、あくまで主体的な活動を促すための手段の一つである。選びやすい理由:痛みがある部位への直接的なアプローチは効果があると考えがちです。混同注意:急性期の筋肉のこわばりや、一時的な緩和手段と、慢性疼痛の根本的な治療を混同しやすいです。
- 5. 疼痛の有無や程度にかかわらず、患者さんの生活の質や機能向上を目指すリハビリテーションにおいて、ADL訓練は非常に重要です。軽度な痛みであっても、ADLの遂行に影響を与えたり、遂行方法の工夫が必要な場合があるため、適切な介入が求められます。正しくは:疼痛の程度にかかわらず、ADLの自立度向上や生活の質改善のためにADL訓練は重要である。選びやすい理由:痛みが少ないと、その人の生活に問題がないと考えがちです。混同注意:痛みの強度がそのままリハビリテーションの必要性を決めるという誤解があります。
国試ポイント
この問題は、慢性疼痛のリハビリテーションにおける多角的・心理社会的なアプローチの重要性を問うものです。単なる身体的な治療だけでなく、患者さんの行動変容や心理的側面への介入が不可欠であることを理解しているかが試されます。
混同注意
急性疼痛の管理(炎症や組織損傷が主で、安静や患部への直接的な治療が優先される場合がある)と慢性疼痛の管理(痛みの悪循環や心理社会的要因への介入が重要となる)との違いが混同されやすい点です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、慢性疼痛のリハビリテーションにおいては、患者さんの能動的な関与を促す介入(運動療法、ADL訓練、認知行動療法など)や、心理社会的側面への配慮を重視する選択肢が適切であると判断します。受動的な治療や長期の安静を推奨する選択肢は不適切であると考えるべきです。
関連知識
慢性疼痛の評価(VAS、NRS、SF-36、PAPIなど)、バイオサイコソーシャルモデル、恐怖回避モデル、段階的活動(graded activity)、自己管理教育、ペーシング(pacing)、多職種連携(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、心理士など)