胃での栄養素の消化・吸収で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
胃内容物の排出速度は、糖質、タンパク質、脂質の順で遅くなります。特に脂質は胃の排出を最も強く抑制するため、胃内滞留時間が長くなります。これは、脂質の消化・吸収には時間がかかるため、少量ずつ十二指腸に送ることで効率的な消化を可能にする生理的なメカニズムです。
選択肢ごとの解説
- 1. ペプシンは胃で分泌される主要な消化酵素ですが、その役割はタンパク質の分解(プロテアーゼ活性)であり、脂質を分解する機能はありません。正しくは:ペプシンはタンパク質を分解します。選びやすい理由:消化酵素の一つであるため、なんとなく栄養素を分解するイメージが強いかもしれません。混同注意:ペプシンとリパーゼの役割が混同されやすいです。胃液には胃リパーゼも含まれますが、その活性は低いとされています。
- 2. セクレチンは十二指腸から分泌されるホルモンで、胃液分泌を抑制する作用があります。主に膵臓からの重炭酸塩と水分の分泌を促進し、胃内容物の酸性を中和する役割を果たします。正しくは:セクレチンは胃液分泌を抑制します。選びやすい理由:ホルモンであるため、消化に関連する何らかの作用があることは想像しやすいですが、その具体的な作用(促進か抑制か)を誤解しやすいです。混同注意:胃液分泌を促進するガストリンや、抑制するソマトスタチン、セクレチンなどの各種消化管ホルモンの作用を混同しやすいです。
- 3. 内因子は胃の壁細胞から分泌される糖タンパク質で、ビタミンB12(シアノコバラミン)の回腸での吸収に必須です。ビタミンB6(ピリドキシン)の吸収には関与しません。正しくは:内因子はビタミンB12の吸収に関与します。選びやすい理由:内因子が特定のビタミン吸収に関わるという知識は正しいですが、それがどのビタミンであるかを誤解しやすいです。混同注意:ビタミンB群の他のビタミン(B1, B2, B6など)とビタミンB12の吸収機構を混同しやすいです。
- 4. 正解。胃内容物が十二指腸へ排出される速度は、含有する栄養素の種類によって異なります。一般的に、液体は固体より速く、糖質はタンパク質や脂質よりも速く排出されます。脂質は排出速度が最も遅く、胃内に長時間滞留する傾向があります。これは、脂質が十二指腸で分泌されるホルモン(例:コレシストキニン)によって胃の排出を強く抑制されるためです。混同注意:消化速度と吸収速度、あるいは栄養素ごとの排出速度の順番を混同しやすいです。
- 5. 胃液分泌は、食物が胃に到達する前から、視覚・嗅覚・味覚などの刺激によって脳相(cephalic phase)として始まります。これは、食物を見る、匂いをかぐ、味わうといった刺激が迷走神経を介して胃に伝わり、胃液分泌を促すためです。正しくは:胃液分泌の増加は、食物が胃に到達する前から起こり得ます。選びやすい理由:食物が胃に入ってから消化が始まる、という直感的なイメージから、胃液分泌もその時が最初だと考えやすいです。混同注意:胃液分泌の各相(脳相、胃相、腸相)の開始タイミングや刺激因子を混同しやすいです。
国試ポイント
胃の消化・吸収機能に関する基本的な知識が問われています。特に、消化酵素の特異性、消化管ホルモンの作用、特定の栄養素吸収機構、そして食物の組成による胃排出速度の違いといった生理学的な側面が重要です。
混同注意
各消化酵素の働き、消化管ホルモンの分泌源とその標的、ビタミンの吸収メカニズム、そして消化の各段階(脳相、胃相、腸相)で起こる現象について、正確な知識が必要です。特に促進と抑制の作用を誤解しやすい傾向があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、消化器系の各臓器(胃、膵臓、胆嚢、小腸など)における消化酵素、ホルモン、および栄養素の吸収に関する具体的な役割と、それらの相互作用を理解しているかが問われるでしょう。また、特定の疾患(例:胃切除後症候群、悪性貧血)と関連付けて問われる可能性もあります。
関連知識
・消化酵素(ペプシン、胃リパーゼ)の働きとその対象 ・胃液の成分(塩酸、内因子、ペプシノーゲン)とその役割 ・消化管ホルモン(ガストリン、セクレチン、コレシストキニンなど)の作用機序 ・ビタミンB12の吸収経路とその臨床的意義(悪性貧血など) ・胃の排出調節機構(自律神経、消化管ホルモン)