うつ病患者が「先生は否定するが、私は不治の病にかかっていて助からない」と訴えた。この患者の症状で最も考えられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
うつ病患者に見られる妄想として典型的なものに「微小妄想」があり、これは「貧困妄想」「罪業妄想」「心気妄想」の3つを指します。本事例の患者が「不治の病にかかっていて助からない」と訴え、医師の否定も受け入れない状況は、自身の身体が重篤な病気であるという確信が揺るがない「心気妄想」の典型的な特徴と完全に一致します。したがって、最も考えられるのは心気妄想です。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者の訴えは、自身の血統や家系に関することではなく、自身の身体状態や病気に関するものです。血統妄想は通常、自分の生まれが高貴である、あるいは逆に悪いものであるといった内容を指します。正しくは:例えば「私は王家の血を引いている」といった内容であれば血統妄想に該当します。選びやすい理由:妄想の一種であるため、一般知識としては間違っていませんが、患者の具体的な訴えの内容とは一致しません。混同注意:誇大妄想と混同されることもありますが、血統に限定される点が異なります。
- 2. 患者の訴えは、自身の能力や地位を過大評価するものではなく、「不治の病で回復の見込みがない」という悲観的かつ否定的な内容です。誇大妄想は、自己を実際以上に優れたものと認識するものです。正しくは:例えば「私は世界を救う特別な使命がある」といった内容であれば誇大妄想に該当します。選びやすい理由:妄想であるという共通点はありますが、その内容が患者の訴えとは正反対です。混同注意:うつ病患者にみられる貧困妄想や罪業妄想といった、自己評価が低下する妄想とは方向性が逆になります。
- 3. 正解。患者の「不治の病にかかっていて助からない」という訴えは、医師の否定にもかかわらず自身の健康状態に関する確信が揺るがない状況であり、心気妄想の典型的な症状と完全に合致します。心気妄想は、うつ病患者に頻繁に見られる微小妄想(貧困妄想、罪業妄想と並ぶ)の一つです。正しくは:この選択肢は正しいため、修正の必要はありません。選びやすい理由:この選択肢は患者の訴えに最もよく合致するため、選びやすいです。混同注意:他の妄想と混同しにくいですが、うつ病では貧困妄想や罪業妄想もよく見られるため、それらとの違いを明確に理解しておく必要があります。
- 4. 患者の訴えは、他者からの危害や悪意に関するものではなく、自身の身体状況や病気に関するものです。迫害妄想は、周囲の人々が悪意を持って自分を傷つけようとしていると確信する妄想です。正しくは:例えば「誰かが私を毒殺しようとしている」といった内容であれば迫害妄想に該当します。選びやすい理由:妄想の種類の一つであるため、知識としては存在しますが、内容が一致しません。混同注意:被毒妄想や関係妄想と混同される可能性があります。
- 5. 患者の訴えは、飲食物や体内への毒物に関するものではなく、自身の病気に関するものです。被毒妄想は、特定の悪意ある行為(毒物混入)に特化した妄想です。正しくは:例えば「この病院食には毒が盛られている」といった内容であれば被毒妄想に該当します。選びやすい理由:妄想の種類の一つであり、他者からの悪意という点では迫害妄想と共通する部分もありますが、内容が異なります。混同注意:迫害妄想の一種と捉えられることもありますが、特定の被害内容(毒)に限定される点で区別されます。心気妄想とは内容が明確に異なります。
国試ポイント
作業療法士国家試験では、精神疾患の具体的な症状とその内容を結びつける知識が問われます。特に、うつ病患者に特徴的な妄想(微小妄想:貧困妄想、罪業妄想、心気妄想)は頻出テーマであり、それぞれの妄想がどのような内容を持つのかを具体例と共に理解しておく必要があります。また、精神科の診断基準(DSM-5など)における妄想の定義や種類に関する基礎知識も重要です。
混同注意
混同しやすい妄想としては、誇大妄想(自己の価値を過大評価する)、迫害妄想(他者からの悪意を感じる)、被毒妄想(毒物による被害を確信する)などが挙げられます。これらはそれぞれ異なる内容を持ち、特にうつ病患者にみられる妄想とは方向性が異なる場合が多いです。うつ病でよくみられる他の妄想(貧困妄想:財産を失った、借金があるなどと思い込む。罪業妄想:過去の罪や悪行を強く悔やむ、自分は罪深い人間であると思い込む)も合わせて理解しておくことが大切です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず患者の訴えの「内容」に注目し、それが「自身の病気や健康状態」に関するものか、「自己の能力や財産」に関するものか、「他者からの危害」に関するものかなどを明確に識別することが重要です。次に、その内容が「うつ病」という背景とどのように関連するか(気分一致性かどうか)を考えると、適切な妄想の種類を選択できます。
関連知識
うつ病の主要な精神症状として、抑うつ気分、興味・喜びの喪失、食欲・睡眠障害、精神運動制止または焦燥、疲労感、集中力低下、無価値感・罪悪感、希死念慮などがあります。妄想は重症なうつ病(精神病症状を伴ううつ病)で出現することがあり、その内容が気分に一致していることが多いです。気分一致性の妄想かどうかも鑑別のポイントになります。