7歳の男児。脳性麻痺の痙直型両麻痺。GMFCSレベルⅢ。床上を前方へ移動する様子(別冊No. 4)を別に示す。考えられる状態はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
7歳の男の子の画像では、右下肢が前に出た際に左下肢が体幹の真下に残されており、右股関節の屈曲と同時に左股関節の伸展・外転が十分に行われていない。これは左右の股関節を協調させて分離して動かす能力、すなわち股関節の分離運動能力が低いことを示唆している。脳性麻痺の痙直型両麻痺では、股関節内転筋の緊張亢進により股関節の分離運動が困難になることが多い。
選択肢ごとの解説
- 1. 画像では、頭部は比較的安定しており、顔が前方を向いていることから、頭部を支える能力が低いとは判断しにくい。この年齢のGMFCSレベルⅢであれば、ある程度の頭部コントロールは可能である。正しくは:頭部を支える能力は比較的保たれている。選びやすい理由:脳性麻痺児全般において、体幹や頭部のコントロールが課題となる場合があるため、選択肢として考えやすいかもしれない。混同注意:脳性麻痺における体幹のコントロール不良や平衡障害。しかし、本症例の画像では頭部保持は比較的安定している。
- 2. 画像では両上肢でしっかりと体を支え、支持基底面を確保しているように見える。体幹の前方への移動に伴い、上肢で体重を支えながら前方へ手を伸ばしているため、上肢による支持能力は比較的保たれていると考えられる。正しくは:両上肢で体を支える能力は保たれている。選びやすい理由:這い這い運動では上肢の支持が重要であるため、一般的な粗大運動能力の低下と関連づけて選びたくなるかもしれない。混同注意:上肢の機能不全。しかし、本症例では上肢で体重を支えながら前方に進む動作が遂行されており、上肢支持能力が低いとは言えない。
- 3. 患児は四つ這い様の姿勢で移動しており、ある程度の体幹の安定性がないとこの姿勢を維持することは難しい。また、移動に伴い体幹が大きく崩れている様子は見られないため、下部体幹を支える能力が著しく低いとは断定できない。正しくは:下部体幹を支える能力は比較的保たれている。選びやすい理由:脳性麻痺の児は体幹の安定性が低いことが多く、特に両麻痺では下肢の痙性により体幹のコントロールが影響を受けやすいため、一般的な知識からこの選択肢を選びやすい。混同注意:体幹のコントロール不良。しかし、この画像で体幹が著しく不安定であるとは言えない。
- 4. 画像から肩甲骨周辺筋の筋緊張の状態を直接的に判断することは困難である。痙直型脳性麻痺では、むしろ筋緊張の亢進が特徴であり、肩甲骨周辺筋の筋緊張低下を推測する直接的な所見はない。正しくは:肩甲骨周辺筋の筋緊張の評価は画像からは困難であり、痙直型両麻痺の特徴と合致しない。選びやすい理由:筋緊張の異常は脳性麻痺の主要な症状であるため、何らかの筋緊張異常を疑いやすい。しかし、筋緊張低下ではなく、痙直型では筋緊張亢進が特徴である。混同注意:筋緊張の異常。しかし、痙直型両麻痺では痙性が特徴であり、画像から筋緊張低下を推測できる所見はない。
- 5. 正解。7歳の男の子の画像では、右下肢を前方に進める際に左下肢が体幹の真下に残されており、右股関節が屈曲している一方で、左股関節は十分に伸展・外転されず、内転位を保っているように見える。これにより、左右の股関節が互いに影響し合い、それぞれの股関節を独立して動かす(分離運動)ことが困難であることが示唆される。これは脳性麻痺の痙直型両麻痺でよく見られる股関節内転筋の痙性による分離運動の困難さを反映している。選びやすい理由:画像から下肢の動きのぎこちなさは見て取れるが、具体的にどの能力の低下であるかを判別するには専門知識が必要となる。股関節の分離運動障害は、痙直型脳性麻痺の下肢運動の特徴である。混同注意:単なる筋力低下や協調運動障害。しかし、本症例の画像では、左右の股関節の動きが連動し、互いに独立した動きができていないという点で、特に「分離運動能力」の低下が顕著である。
国試ポイント
脳性麻痺におけるGMFCSレベルと移動様式、およびそれに伴う身体能力の障害を理解すること。特に痙直型両麻痺における下肢の運動障害の特徴を把握することが重要である。
混同注意
GMFCSレベルⅢの児は、一般的に歩行器などの補助具があれば歩行可能である。床移動の際は、お尻をずらして進むシャフリングや、腹ばいでの移動など、様々な様式をとる可能性があるが、本症例の画像から読み取れる特徴を正確に捉える必要がある。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出題された際は、まずGMFCSレベルを確認し、次に添付画像から患児の具体的な運動様式を観察する。特に、四肢の協調性、分離運動の有無、姿勢保持能力、支持基底面などを詳細に分析し、それがどの身体能力の低下に起因するかを判断する。
関連知識
GMFCS(Gross Motor Function Classification System)は、脳性麻痺児の粗大運動能力を5段階に分類するシステムである。レベルⅢは、手動車椅子での移動や、歩行器などの補助具があれば歩行可能であることを示す。痙直型両麻痺は下肢の痙性が強く、内転筋の緊張亢進によるハサミ脚歩行や股関節屈曲・内転位での移動が多い。