慢性閉塞性肺疾患患者のADLで息切れを軽減させるための指導として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者にとって、息切れの軽減はADL遂行の重要な課題です。和式トイレの使用は、しゃがみ込みや立ち上がりといった動作が呼吸筋に大きな負担をかけ、息切れを強く誘発します。一方、洋式トイレはこれらの動作が容易であり、呼吸への負担を大幅に軽減できるため、ADL指導として非常に適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 両手を同時に使う動作は、上半身の動きが大きくなり、胸郭の拡張や呼吸筋の活動が増大し、息切れを誘発しやすいです。特に洗髪は腕を挙上し続ける必要があり、呼吸への負担が大きくなります。正しくは:片手ずつ洗う、シャワーチェアに座って行う、または介助を利用するなど、呼吸への負担が少ない方法を検討すべきです。選びやすい理由:早く終わらせることで負担が減るのではないかと考えがちですが、動作の効率化と呼吸負担軽減は異なります。混同注意:効率的なADL動作と、呼吸負担の少ないADL動作を混同する可能性があります。
- 2. 床に座る動作や、床に座った姿勢から立ち上がる動作は、体幹の屈曲や腹圧の変動を伴い、息切れを増悪させることが多いです。また、前屈姿勢は呼吸筋の働きを妨げ、肺の拡張を制限する可能性があります。正しくは:椅子に座って行う、または踏み台などを利用して足が上げやすい姿勢で行うなど、体幹の屈曲が少ない方法を検討すべきです。選びやすい理由:安定した姿勢でゆっくり行えるため、良いと考えるかもしれませんが、姿勢による呼吸負担を考慮していません。混同注意:安定性と呼吸負担の関連性を理解できていない可能性があります。
- 3. 立ったままズボンを履き脱ぎする動作は、片足立ちになることが多く、バランスを保つために余分なエネルギーを消費し、転倒のリスクも高まります。また、不安定な姿勢での動作は呼吸を乱しやすく、息切れを助長する可能性があります。正しくは:椅子に座って行う、または手すりなどにつかまりながら行うなど、安定した姿勢で動作を行うべきです。選びやすい理由:立位でのADLは活動的で良いと考えがちですが、COPD患者にとっては不必要なエネルギー消費や不安定性が呼吸負担となります。混同注意:一般的なADL自立と、疾患特性に応じたADL方法論を混同する可能性があります。
- 4. 正解。和式トイレを使用する際には、しゃがみ込む動作と立ち上がる動作が必要になります。これらの動作は、深く膝を曲げ、体幹を前傾させるため、呼吸筋への負担が大きく、また腹圧の上昇を伴い息切れを強く引き起こします。洋式トイレは、座る動作と立ち上がる動作が比較的容易であり、呼吸への負担を大幅に軽減できます。
- 5. 頭からかぶるタイプのシャツを着脱する際は、腕を大きく上げる動作や、頭上を通す動作が必要となり、胸郭の動きが制限されやすく、息切れを誘発しやすいです。前開きのシャツは、腕の挙上を最小限に抑え、座位や臥位でも着脱しやすいため、呼吸への負担が少なく推奨されます。正しくは:前開きのシャツや、ゆったりとした衣類を選ぶなど、着脱が容易で呼吸を妨げない衣服を選択すべきです。選びやすい理由:一般的にカジュアルで着やすいと思われがちですが、COPD患者の機能面からは不適切です。混同注意:ファッション性と機能性を混同したり、一般的な衣類の着やすさと疾患特性に応じた着やすさを混同したりする可能性があります。
国試ポイント
COPD患者の息切れを軽減するためのADL指導に関する知識が問われています。ADL動作における身体への負担、特に呼吸筋への影響を理解し、その負担を軽減するための具体的な工夫を判断できるかがポイントです。
混同注意
一般的なADLの効率化と、呼吸器疾患患者における呼吸負担軽減のためのADL調整を混同しやすいです。また、各選択肢の動作が具体的にどの程度の呼吸負担となるのかを正確に評価できないと間違えやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、COPD患者のADL指導においては、「不必要な筋活動を避ける」「体幹の安定性を保つ」「胸郭の動きを妨げない」「前傾姿勢や深すぎる屈曲・伸展を避ける」といった視点で各動作を評価できるかを確認します。
関連知識
COPD患者の呼吸リハビリテーション、省エネ動作指導、環境調整、呼吸補助筋の活動、腹式呼吸や口すぼめ呼吸などの呼吸法。ADLにおける姿勢と呼吸の関係性。