器質性精神障害について正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
器質性精神障害は脳の器質的な病変に起因しますが、患者の精神状態や行動、症状の現れ方は、心理的ストレス、環境、人間関係などの心理的・社会的な要因に強く影響を受けます。これは特に認知症におけるBPSD(行動・心理症状)で顕著に観察されます。器質的な問題があるからといって、心理的側面を無視することはできません。
選択肢ごとの解説
- 1. 器質性精神障害では、脳の損傷や機能不全によって、認知機能障害だけでなく、幻覚や妄想などの精神病症状を呈することがあります。例えば、レビー小体型認知症では幻視が、アルツハイマー型認知症でも妄想が見られることがあります。正しくは:妄想症状が出現することもある。選びやすい理由:器質性精神障害は主に認知機能障害というイメージが強く、妄想は統合失調症などの機能性精神障害で典型的に見られる症状と思われがちだから。混同注意:認知症におけるBPSD(行動・心理症状)と、純粋な機能性精神障害の症状の区別。
- 2. 器質性精神障害、特に前頭葉機能の障害を伴う場合などでは、人格の変化(感情の不安定さ、衝動性の増加、無関心など)を認めることが少なくありません。例えば、前頭側頭型認知症では顕著な人格変化が見られます。正しくは:人格の変化を認めることがある。選びやすい理由:人格は非常に安定した要素であり、器質的な問題でも早期には保たれると考えるかもしれないから。混同注意:初期の認知症では人格が比較的保たれることがあるため、全体を通して安定していると誤解しやすい。
- 3. 器質性精神障害の代表的な症状の一つに記憶障害があります。特に、アルツハイマー型認知症では記銘力障害が中心的な症状として現れます。脳の広範な損傷や神経変性疾患では、記憶の中枢である海馬などを含む部位が障害されるため、記憶機能に大きな影響が出ます。正しくは:記憶障害はよく見られる症状である。選びやすい理由:器質性精神障害の中には、てんかんや脳炎など、記憶障害が主症状ではないものもあるため、一概に記憶障害がみられるとは限らないと考えるかもしれないから。混同注意:器質性精神障害の多様性(認知症だけでなく、せん妄なども含む)を考慮せず、特定のタイプに限定して考えてしまうこと。
- 4. 器質性精神障害に伴うBPSD(行動・心理症状)や、せん妄などの症状に対して、抗精神病薬や抗不安薬、睡眠導入薬などの向精神薬が症状緩和のために処方されることがあります。ただし、副作用に注意し、慎重に用いられます。正しくは:向精神薬が症状緩和のために処方されることがある。選びやすい理由:器質性精神障害は脳の構造的な問題であり、薬で治るものではないという認識から、薬物療法は行われないと誤解する可能性があるから。混同注意:精神病の「治療」と症状の「緩和」の目的の違い。器質性精神障害の根本治療薬と、BPSDに対する対症療法薬の区別。
- 5. 正解。器質性精神障害の症状は、脳の器質的な変化が根底にありますが、その症状の現れ方や重症度は、患者の心理状態、ストレス、環境要因、人間関係といった心理的・社会的な要因によって大きく影響を受けます。例えば、認知症患者のBPSDは、心理的ストレスや環境の変化によって悪化することが知られています。正しくは:(正しいため修正不要)選びやすい理由:器質性という言葉から、心理的要因は関係ないと考えがちだが、実際の臨床ではその影響は大きい。混同注意:器質性疾患の『原因』と、器質性疾患による『症状の現れ方や経過』に影響を与える要因の区別。原因は器質的だが、症状は心理社会的要因に左右される。
国試ポイント
器質性精神障害の病態理解、特に器質的要因と心理社会的要因の複合的な影響について問う問題です。単なる脳の障害だけでなく、患者を取り巻く環境や心理状態が症状に与える影響の重要性を理解しているかが問われます。
混同注意
「器質性」という言葉から、症状が全て脳の物理的な損傷のみに由来し、心理的な側面は全く関係ないという誤解が生じやすいです。しかし、人間は全体として機能するため、精神疾患においては器質性であっても心理・社会的な要因が症状の出現や経過に影響します。
次に同じ論点が出たら
器質性精神障害のケース問題が出た場合、身体機能、認知機能、精神症状、日常生活動作だけでなく、患者の感情、心理状態、周囲の環境や家族関係がどのように影響しているかという多角的な視点から問題点を把握できるか。
関連知識
認知症のBPSD(行動・心理症状)とその管理、せん妄の誘発因子と症状、器質性精神障害と機能性精神障害の鑑別ポイント、精神科リハビリテーションにおける心理社会的アプローチの重要性、バイオ・サイコ・ソーシャル・モデル。