60歳の女性。視床出血発症後1か月。左片麻痺を認め、Brunnstrom法ステージは上肢Ⅱ、手指Ⅱ、下肢Ⅳである。左手指の発赤、腫脹および疼痛を認め、訓練に支障をきたしている。この患者に対する治療で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
本症例は、脳卒中発症後の片麻痺患者で、左手指に発赤、腫脹、痛みを認めることから、複合性局所疼痛症候群(CRPS)Type I(旧称:肩手症候群)が強く疑われます。CRPS Type Iの治療には、疼痛管理、浮腫軽減、循環改善が重要であり、交代浴はその有効な治療法の一つとされています。交代浴は血管の収縮と拡張を繰り返し促し、浮腫の軽減と血流改善に寄与します。他の選択肢は、不適切であったり、禁忌であったり、リハビリテーション専門職の範囲を超える行為であったりします。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。本症例は、脳卒中後の複合性局所疼痛症候群(CRPS)Type I(旧称:肩手症候群)を示唆する症状(左手指の発赤、腫脹、痛み)を呈しています。交代浴は、疼痛管理、浮腫軽減、循環改善に効果があるとされており、CRPSの治療選択肢の一つとして推奨されます。特に、発症後早期のCRPSに対して有効性が期待されます。
- 2. 肩関節の安静を過度に保つことは、関節拘縮のリスクを高め、肩手症候群の病態を悪化させる可能性があります。痛みを伴わない範囲でのROM運動や、適切な肢位保持が重要です。過剰な安静ではなく、適切な管理が求められます。正しくは:痛みを悪化させない範囲で、肩関節の適切な可動域を維持する運動を行う。選びやすい理由:痛みがあるため安静が必要だと考えるかもしれない。混同注意:急性期の炎症や骨折などの絶対的安静が必要な状態と混同する可能性がある。
- 3. 手指に発赤、腫脹、痛みがある場合でも、可動域訓練が完全に禁忌となるわけではありません。痛みを誘発しない範囲で、また治療的な介入(例:交代浴、薬物療法など)と併用しながら、関節拘縮予防のための軽度な可動域訓練は必要です。完全に中止すると、関節拘縮や機能低下が進行するリスクがあります。正しくは:痛みを誘発しない範囲で、手指の可動域訓練を慎重に行うか、症状が落ち着くまで関節保護に努める。選びやすい理由:痛みや炎症が強い時期は訓練を控えるべきだと考えるため。混同注意:急性期の強い炎症や骨折など、絶対安静が必要な病態と混同し、全ての訓練を中止すべきと考えることがある。
- 4. 手関節の固定装具は、痛みの軽減や関節の保護に有効な場合もありますが、複合性局所疼痛症候群(CRPS)では、固定しすぎると循環不良を招いたり、関節拘縮を悪化させたりする可能性があります。単一の治療法に頼るのではなく、薬物療法、理学療法、温熱療法など多角的なアプローチが必要です。また、症状の原因に対する根本的な治療ではありません。正しくは:痛みの軽減や浮腫の管理のため、手関節の安静時装具を検討しつつ、多角的な治療(薬物療法、物理療法など)と組み合わせる。選びやすい理由:痛い部分を固定することで痛みが軽減するという一般的な考え方。混同注意:捻挫や腱鞘炎などの局所的な痛みに対する治療と混同する。CRPSの複雑な病態を理解していない可能性。
- 5. Hippocrates法は、肩関節脱臼の整復術の一つですが、主に「完全脱臼」に対して用いられる手技です。本症例は「肩関節亜脱臼」であり、通常、疼痛管理や筋緊張の改善、適切なポジショニングによって管理されます。また、徒手整復は専門的な知識と技術が必要であり、一般的なリハビリテーションの範囲を超え、医師が行うべき処置です。不適切な手技は、さらなる損傷を引き起こす可能性があります。正しくは:肩関節亜脱臼に対しては、適切なポジショニングや装具の利用、筋緊張の管理、電気刺激療法などを検討する。選びやすい理由:麻痺による肩関節亜脱臼がある場合に、何か手を打つ必要があると考えるため。混同注意:肩関節の「亜脱臼」と「完全脱臼」の区別ができていない。または、リハビリ専門職の業務範囲と医師の業務範囲を混同している。
国試ポイント
脳卒中後の合併症である複合性局所疼痛症候群(CRPS Type I、旧称:肩手症候群)の症状と、それに対する適切なリハビリテーション介入について問われています。特に、急性期から慢性期にかけてのCRPSの病態理解と、疼痛管理、浮腫対策、関節可動域維持のための治療法が重要です。
混同注意
脳卒中後の痙縮管理、関節拘縮予防、浮腫管理、疼痛管理がそれぞれ異なる介入を必要とすることを理解していないと、不適切な選択肢を選びがちです。特に、CRPSの複雑な病態を理解していないと、単純な痛みや炎症に対する介入と混同する可能性があります。
次に同じ論点が出たら
同様の症状を呈する患者に対し、まずCRPSの診断基準に照らして評価し、症状の重症度や病期に応じた多職種連携による介入計画を立案できるか。特に、疼痛管理と機能維持のバランスを考慮した介入ができるか。
関連知識
複合性局所疼痛症候群(CRPS)Type Iの病態生理、診断基準(Budapest基準)、薬物療法(NSAIDs、抗うつ薬、プレガバリンなど)、理学療法(段階的運動療法、脱感作、ミラーセラピー)、温熱・寒冷療法、装具療法、神経ブロック。脳卒中後の肩関節亜脱臼の原因と管理(適切なポジショニング、電気刺激、装具)。