自閉スペクトラム症〈自閉症スペクトラム障害〉の治療法で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
自閉スペクトラム症(ASD)の特性として、感覚刺激への過敏さや鈍感さ、感覚情報の処理における困難がしばしば見られます。これらの感覚処理の問題は、学習、行動、そして日常生活の適応に大きな影響を与えるため、感覚統合療法はASDの特性に対応し、個々の感覚ニーズに合わせた環境調整や活動を通じて、適応的な行動を促進する上で非常に重要な作業療法のアプローチです。
選択肢ごとの解説
- 1. 回想法は主に高齢者や認知症患者の精神的健康維持、気分障害の改善などを目的とした心理療法であり、自閉スペクトラム症の中核症状(社会性の困難、コミュニケーションの障害、限定された反復行動など)に対する直接的な治療法としては適切ではありません。正しくは:自閉スペクトラム症の特性に合わせた行動療法や発達支援が、より直接的な効果を期待できます。選びやすい理由:精神科領域の療法として広く知られているため、何らかの精神的なケアに有効であるという漠然としたイメージから選びやすいかもしれません。混同注意:他の精神科の心理療法や、非特異的な精神的サポート手法と混同しやすいです。
- 2. 内観療法は、自身の行為、受けたこと、与えたことの3つの視点から自己を見つめ直す精神療法で、対人関係の改善や自己理解の深化を目的としますが、自閉スペクトラム症の特性である社会的コミュニケーションの困難や内省の苦手さから、直接的な治療法として適応が難しい場合があります。正しくは:自閉スペクトラム症の治療には、社会性やコミュニケーションスキルを具体的に指導する構造化されたアプローチが求められます。選びやすい理由:自己省察や対人関係の改善という目的自体は精神的な健康に繋がるため、一見有効に思えるかもしれませんが、ASDの特性とは合致しにくいです。混同注意:認知行動療法など、他の内省を促す精神療法やカウンセリングと混同しやすいです。
- 3. 正解。自閉スペクトラム症の人は、感覚刺激への過敏性や鈍麻、あるいは感覚情報の処理における困難を抱えていることが非常に多く、これが日常生活の行動や学習に大きな影響を与えます。感覚統合療法は、これらの感覚処理の問題を評価し、適切な感覚入力と活動を通じて神経系の組織化を促し、より適応的な行動を支援することを目的としており、自閉スペクトラム症に対する作業療法介入として最も適切かつ広く用いられる治療法の一つです。
- 4. 曝露反応妨害法は、主に強迫性障害(OCD)の治療に非常に有効な認知行動療法の一つです。自閉スペクトラム症に強迫症状が併発することはありますが、これは自閉スペクトラム症の中核症状に対する直接的な治療法ではなく、一般的な自閉スペクトラム症の治療法としては適切ではありません。正しくは:自閉スペクトラム症の主要な治療は、社会性やコミュニケーションの改善、行動管理、発達支援に焦点を当てます。選びやすい理由:自閉スペクトラム症に特徴的な反復行動や限定的な興味が強迫的な行動に見えることがあるため、有効に思えるかもしれませんが、本質的なアプローチは異なります。混同注意:他の認知行動療法や不安障害の治療法、あるいは自閉スペクトラム症に併発する特定の精神症状への対症療法と混同しやすいです。
- 5. 電気けいれん療法(ECT)は、重度のうつ病、双極性障害の躁状態、統合失調症の緊張病など、他の治療法に抵抗性を示す重篤な精神疾患に対して用いられる最終手段的な治療法です。自閉スペクトラム症の中核症状に対する治療法としては適切ではなく、通常は適用されません。正しくは:自閉スペクトラム症の治療は、行動療法、発達支援、薬物療法(併存症に対して)などが中心となります。選びやすい理由:「治療」という言葉から、重篤な精神疾患全般に対する治療選択肢の一つとして誤解する可能性があります。混同注意:経頭蓋磁気刺激療法(TMS)などの他の脳刺激療法や、精神科領域の様々な身体療法と混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、自閉スペクトラム症という発達障害に対する作業療法士の専門的な介入、特に感覚統合療法の重要性についての理解を問うものです。他の精神疾患に対する治療法との区別、および各治療法の適応疾患に関する正確な知識が求められます。作業療法士が関わることの多い発達障害分野の基本的な知識として頻出の論点です。
混同注意
自閉スペクトラム症への介入としては、感覚統合療法の他にも応用行動分析(ABA)、TEACCHプログラム、ペアレントトレーニングなどの行動的・教育的アプローチ、また併存症に対する薬物療法など多岐にわたります。これら様々なアプローチと、精神疾患全般に用いられる心理療法や身体療法との区別が混乱しやすい点です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、まず『疾患名』と『問われている症状・問題』を正確に把握することが重要です。その上で、『どのようなアプローチがその症状・問題に対して専門的かつ効果的か』を判断します。特に作業療法士の専門性と関連性の高い選択肢に注目し、他の精神科治療法の適応疾患との区別をしっかり行いましょう。
関連知識
自閉スペクトラム症の診断基準(DSM-5)、ASDの特性(感覚処理特性、社会性の困難、コミュニケーションの質的障害、限定された反復的な行動や興味)、感覚統合理論の基礎(感覚統合とは何か、その障害とは何か)、感覚統合療法の評価と介入方法、作業療法士の役割、その他ASDに対する主な介入方法(ABA、TEACCHプログラムなど)。