54歳の男性。6年前に左被殻出血の既往がある。立位時の様子を示す。 下肢痙縮に対するボツリヌス療法の投与筋で適切なのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
脳卒中後の下肢痙縮では、足関節の底屈と内反を伴う尖足内反変形が非常によく見られます。後脛骨筋は足関節の強力な底屈筋および内反筋であり、この病態の主要な原因筋の一つです。そのため、ボツリヌス療法によって後脛骨筋を弛緩させることは、尖足内反変形の改善に非常に効果的です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。後脛骨筋は足関節の強力な底屈筋および内反筋であり、脳卒中後の痙縮で頻繁に見られる尖足・内反変形を引き起こす主要な筋肉の一つです。ボツリヌス療法は過活動な筋肉を弛緩させることを目的とするため、この変形改善の標的として非常に適切です。
- 2. 前脛骨筋は足関節の背屈筋および内反筋です。脳卒中後の足関節痙縮では尖足変形(底屈)を呈することが多いため、この筋肉はむしろ機能低下しているか、痙縮とは異なる理由で弛緩していることが多く、ボツリヌス療法の標的とはなりません。正しくは:この筋肉は、尖足によって引き起こされる足部のクリアランス不足を改善するために、むしろ機能強化が必要となることが多いです。または、麻痺による足関節背屈不全(ドロップフット)の治療対象となることがあります。選びやすい理由:「脛骨筋」という名称から、足関節の動きに関わる重要な筋肉であると認識されやすいため、選択肢として魅力的かもしれません。また、内反作用を持つため、内反の病態に関与すると誤解されることもあります。混同注意:後脛骨筋(底屈・内反)や腓骨筋群(底屈・外反)と、その作用や痙縮における役割を混同しやすいです。特に、痙縮によって機能亢進する筋肉群と、麻痺によって機能低下する筋肉群の区別が重要です。
- 3. 短腓骨筋は足関節の底屈筋および外反筋です。脳卒中後の下肢痙縮では足関節内反変形が多い傾向にあるため、外反作用を持つ短腓骨筋がボツリヌス療法の主要な標的となることは稀です。正しくは:足関節の強い外反変形が問題となる場合に、その原因筋として考慮されることはあります。選びやすい理由:足関節の動きに関わる筋肉であり、「腓骨筋」という言葉の響きから、足部の変形に関連すると考えられやすいです。混同注意:後脛骨筋(内反筋)や前脛骨筋(内反筋)と、足関節の作用(内反・外反)が反対であるため混同しやすいです。
- 4. 長腓骨筋は足関節の底屈筋および外反筋です。短腓骨筋と同様に、脳卒中後の足関節痙縮では内反変形が多いことから、外反作用を持つ長腓骨筋が主要な標的となることは稀です。正しくは:足関節の強い外反変形が問題となる場合に、その原因筋として考慮されることはあります。選びやすい理由:短腓骨筋と同様に、足関節の動きに関わる筋肉であり、足部の変形に関係すると連想されやすいです。混同注意:後脛骨筋(内反筋)や前脛骨筋(内反筋)と、足関節の作用(内反・外反)が反対であるため混同しやすいです。
- 5. 長母指伸筋は主に母指の伸展に作用し、足関節の背屈作用は補助的です。足関節の尖足・内反変形の主要な原因筋ではありません。ボツリヌス療法の標的となる場合もありますが、それは主に母指の強い伸展痙縮(クロウトゥ変形など)が問題となる場合です。正しくは:ボツリヌス療法でこの筋肉をターゲットにするのは、主に母指の過度な伸展痙縮が問題となる場合です。選びやすい理由:「伸筋」という名前から、伸展方向への不適切な力に関与すると考えられやすいです。混同注意:足関節の主要な底屈・背屈・内反・外反筋群と混同しやすいです。この筋肉は主に足指の動き、特に母指に特化しています。
国試ポイント
脳卒中片麻痺における典型的な痙縮パターンと、それに関与する主要な筋肉、およびその治療法(特にボツリヌス療法)における標的筋に関する知識が問われています。足関節の底屈・内反変形を引き起こす筋肉を正確に理解しているかがポイントです。
混同注意
足関節の主要な動きを担う筋肉群(前脛骨筋、腓骨筋群、下腿三頭筋など)の作用(底屈・背屈、内反・外反)とその役割を混同しやすいです。特に、痙縮によって機能が亢進する筋肉と、麻痺によって機能が低下する筋肉の区別が重要です。
次に同じ論点が出たら
他の関節(膝関節、股関節、肩関節、肘関節、手関節など)における典型的な痙縮パターンとその原因筋、およびボツリヌス療法の適用筋を問う問題が出る可能性があります。例えば、膝関節の屈曲痙縮に対するハムストリングス、肘関節屈曲痙縮に対する上腕二頭筋などが考えられます。また、ボツリヌス療法の効果判定や副作用に関する問題も出題され得ます。
関連知識
脳卒中後の下肢痙縮による姿勢異常(ウェルニッケ・マン型肢位、尖足内反など)、ボツリヌス毒素の作用機序(アセチルコリン放出抑制による筋弛緩)、痙縮に対する理学療法(ストレッチ、装具療法など)や薬物療法(バクロフェンなど)、外科的治療(腱延長術など)について。また、各筋肉の解剖学的知識と機能。