62歳の男性。2型糖尿病の発症から20年が経過している。歩行は自立していた。2か月前から両足部のしびれ感を自覚し、数日前に右足部第1指が暗赤色になっているのに気付き受診した。両下肢に皮膚潰瘍はないが、感覚鈍麻を認めた。理学療法で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
この患者は20年間の2型糖尿病歴があり、両足の感覚鈍麻と右足第1趾の暗赤色変色を認めます。これらは糖尿病性神経障害と虚血性変化による糖尿病性足病変の兆候であり、潰瘍や壊死に進展するリスクが高い状態です。特に第1趾への荷重は、組織に圧力や摩擦ストレスを与え、病変の悪化を招きます。したがって、最も優先すべきは、特殊な靴や装具、または歩行指導によって前足部(特に第1趾)への荷重を軽減する『免荷』処置です。これにより、組織の保護と治癒促進を図ります。
選択肢ごとの解説
- 1. 糖尿病患者で感覚鈍麻があり、足趾が暗赤色に変色している場合、冷罨法は血管を収縮させ血流をさらに悪化させる可能性があります。また、感覚鈍麻のため凍傷のリスクが高まります。正しくは:冷罨法ではなく、保温や血流改善を促す介入を検討すべきです。選びやすい理由:炎症や腫れがある場合に冷罨法が一般的に用いられるため、足のトラブルと漠然と捉えると選択肢として魅力的に映るかもしれません。混同注意:外傷や急性炎症に対する一般的なRICE処置と、糖尿病性足病変に対する配慮を混同してしまう可能性があります。
- 2. 正解。右足第1趾の暗赤色化と両足の感覚鈍麻は、糖尿病性足病変の進行を示唆しています。特に第1趾は荷重がかかりやすい部位であるため、前足部への荷重を軽減することは、組織への圧迫や摩擦を減少させ、潰瘍形成や壊死の悪化を防ぐ上で最も重要な介入となります。これは免荷(オフローディング)の基本的な考え方です。
- 3. 足部に暗赤色変色や感覚鈍麻がある状態で速く歩くことは、足への衝撃や摩擦を増大させ、組織損傷を悪化させるリスクがあります。潰瘍の発生や進行を防ぐためには、足に過度な負担をかけない歩行指導が求められます。正しくは:足への負担を最小限に抑えるよう、ゆっくりとしたペースでの歩行や、歩行距離・時間を制限する指導が必要です。選びやすい理由:糖尿病の運動療法として有酸素運動が推奨されることから、運動量を増やすことが良いと誤解してしまう可能性があります。混同注意:糖尿病全体の一般的な運動療法と、足病変を合併している場合の運動制限・注意点を混同する可能性があります。
- 4. 右足第1趾の問題と足部の感覚鈍麻があるものの、足関節の関節可動域訓練を全面的に避けるべき明確な根拠はありません。むしろ、足関節の可動域を維持することは、歩行機能や循環の改善に寄与する可能性があります。過度な負荷や痛みがない範囲であれば、適切な訓練は行うべきです。正しくは:足関節の関節可動域訓練は、患者の状態に合わせて慎重に行うべきであり、一律に制限する必要はありません。選びやすい理由:患部を安静にすべきという考えから、足に関わる運動全般を控えるべきだと判断してしまう可能性があります。混同注意:足趾の局所的な問題と、より広範囲の足関節機能維持のための運動を混同する可能性があります。
- 5. この指示は、糖尿病性足病変に対する一般的な理学療法介入としては不適切です。左右の足の踏み出す順序を特定することに医学的な根拠がなく、不自然な歩行パターンを強いることで、かえって転倒リスクを高めたり、他の部位に負担をかけたりする可能性があります。正しくは:足部への荷重を分散させるための具体的な装具や靴の選定、または歩行様式の指導はありえますが、左右の足の順序を指示することは適切ではありません。選びやすい理由:右足への負担を減らす目的で、左足に重心を移すような意図を読み取ってしまうかもしれませんが、具体的な方法としては適切ではありません。混同注意:特定の足への荷重を避けるための指導と、具体的な手段としての歩行の順序指示を混同する可能性があります。
国試ポイント
糖尿病性足病変の初期徴候(感覚鈍麻、変色)を理解し、その進行を防ぐための理学療法の基本原則、特に『免荷』の重要性について問われています。また、禁忌となる介入(寒冷療法)や不適切な介入を見極める知識も求められます。
混同注意
糖尿病患者に対する運動療法の原則と、足病変合併時の具体的な注意点や禁忌を混同しやすいです。特に、漠然とした「足のトラブル」に対する一般的な対処法(例:冷罨法)を、糖尿病性足病変にそのまま適用してしまう間違いが多いです。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点が出題された場合、まず患者の病態(糖尿病の期間、合併症の有無、現在の症状)を詳細に把握し、特に足病変の徴候(潰瘍、変色、感覚異常、循環障害)に注目します。その上で、最も重要な介入が『免荷』であることを思い出し、足への物理的ストレスを減らす選択肢を優先的に探す必要があります。禁忌となる介入(冷罨法、熱すぎる湯での温浴など)も確認します。
関連知識
糖尿病性足病変の分類(Wagner分類など)、神経障害と血管障害の鑑別、糖尿病性神経障害の症状(しびれ、感覚鈍麻、自律神経障害)、閉塞性動脈硬化症(PAD)の症状、フットケアの基本(足の観察、適切な靴・装具の選択、正しい爪切り)、理学療法における免荷の方法(総免荷、部分免荷、免荷靴、装具)。