理学療法の臨床実習に参加している学生。脳梗塞による左片麻痺患者の評価を臨床実習指導者と行った。患者は常に右側を向き、左側からの声かけへの反応が遅かった。担当作業療法士の診療記録から収集する検査結果で最も優先度が高いのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
患者さんの症状『常に頭部を右側に向け、左側からの呼びかけ反応が遅い』は、脳梗塞後にしばしば見られる『半側空間無視』の典型的な徴候です。半側空間無視は、病変と反対側の空間にある刺激に気づきにくい、または反応しない状態を指します。選択肢の中で、BIT(行動性無視検査)は半側空間無視を特異的に評価するために開発された検査バッテリーであり、スクリーニングから重症度評価まで幅広く用いられます。したがって、この状況で最も優先して確認すべき検査結果はBITです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。患者さんが示している『常に右側を向き、左側からの呼びかけ反応が遅い』という症状は、半側空間無視の典型的な徴候です。BIT(行動性無視検査)は、半側空間無視の有無や重症度を評価するために特化した検査バッテリーであり、最も優先的に確認すべき情報です。
- 2. FASTは、患者さんの歩行能力を評価するための尺度です。本症例の症状(常に右側を向き、左側からの反応が遅い)は歩行能力と直接的な関連性が薄く、半側空間無視の評価としては優先度が低いです。正しくは:歩行能力の評価が必要な場合は有用ですが、半側空間無視の評価としては適切ではありません。選びやすい理由:理学療法士が評価に携わるため、身体機能、特に歩行に関する評価に意識が向きやすいかもしれません。混同注意:他の身体機能評価尺度や、より広範なADL評価尺度と混同することがあります。
- 3. ストループテストは、選択的注意、認知抑制、情報処理速度などを評価する検査です。半側空間無視も注意機能の一種ですが、ストループテストは視野全体の注意配分や干渉効果をみるものであり、特定の空間領域への注意障害である半側空間無視を直接評価するものではありません。正しくは:選択的注意や認知抑制機能を評価したい場合に用いられますが、半側空間無視の優先的な評価ではありません。選びやすい理由:認知機能全般の評価と捉え、注意障害の側面から半側空間無視に関連付けようと考えるかもしれません。混同注意:他の注意機能検査や前頭葉機能検査と混同しやすいです。
- 4. WAIS-Ⅳは、成人の全般的知能を評価するための包括的な検査バッテリーです。言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度などの領域を評価しますが、半側空間無視という特定の高次脳機能障害を診断・評価するために最も優先される検査ではありません。正しくは:全般的知能の評価には有用ですが、半側空間無視のスクリーニングや重症度評価としては優先度が低いです。選びやすい理由:高次脳機能障害の評価と広く捉え、知能検査もその一部であると考えるかもしれません。混同注意:MMSEやHDS-Rなど、他のスクリーニング的な認知機能検査と目的を混同することがあります。
- 5. WCSTは、概念形成、規則変更(セットシフト)、抽象的思考といった遂行機能、特に前頭葉機能を評価する検査です。半側空間無視とは異なる高次脳機能障害の評価であり、本症例の症状に対する優先度は低いです。正しくは:遂行機能、特に柔軟な思考や概念形成能力を評価したい場合に用いられますが、半側空間無視の直接的な評価ではありません。選びやすい理由:前頭葉機能障害と高次脳機能障害を広く関連付け、選択肢として選びやすいかもしれません。混同注意:前頭葉機能や遂行機能の他の検査(例:FAB)と目的を混同することがあります。
国試ポイント
症状記述から特定の高次脳機能障害(この場合は半側空間無視)を正確に推測し、その障害に特化した適切な評価法を選択できるかが問われています。臨床推論能力と、主要な高次脳機能障害の評価尺度に関する知識が必須です。
混同注意
認知機能全般の評価尺度(WAIS-Ⅳ、MMSE、HDS-Rなど)や、注意機能に関わる他の検査(ストループテストなど)、前頭葉機能検査(WCST、FABなど)と混同しやすいです。半側空間無視は注意機能障害の一種ですが、その評価には特異的な検査が必要です。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出題された場合、症状から半側空間無視と判断できるか、そして半側空間無視の評価法としてBIT以外の選択肢(例:線分二等分線試験、抹消試験、描画試験)が提示されたときにそれらを選べるか、または誤答肢として提示された他の高次脳機能検査を排除できるかを判断します。
関連知識
半側空間無視の病態生理(主に右半球頭頂葉の病変)、他の評価法(線分二等分線試験、抹消試験、読み書き評価など)、リハビリテーション介入方法(プリズム適応、視覚探索訓練、視覚スキャン訓練など)。また、その他の主要な高次脳機能障害(失語症、失行症、記憶障害など)とその評価法についても関連知識として押さえる必要があります。