広範囲熱傷の病態と急性期治療で誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
広範囲熱傷の急性期では、血管透過性の亢進による大量の血漿漏出と熱傷創からの水分蒸散により、循環血液量が著しく減少します。これにより熱傷性ショックに陥る危険性が高いため、生命維持のためには積極的かつ十分な輸液療法(輸液蘇生)が不可欠です。輸液量を制限することは、循環不全を悪化させ、患者の生命を危機にさらす誤った治療方針です。
選択肢ごとの解説
- 1. 広範囲熱傷では、ストレスホルモン(カテコラミン、コルチゾールなど)の分泌が増加し、インスリン抵抗性が生じるため、肝臓からの糖新生が促進され、高血糖状態になりやすいのが特徴です。正しくは:血糖値が上昇しやすい。選びやすい理由:熱傷による消耗から低血糖を連想するかもしれませんが、急性期は身体の強いストレス反応により高血糖となるのが一般的です。混同注意:糖尿病患者の血糖コントロール不良や、飢餓状態での低血糖と混同することがありますが、熱傷固有のストレス反応が関与しています。
- 2. 熱傷部位だけでなく、広範囲熱傷では全身性の炎症反応により血管透過性が著しく亢進し、血漿成分が血管内から間質へ大量に漏出するため、全身性の浮腫が生じます。正しくは:全身性の浮腫が出現する。選びやすい理由:浮腫は局所的なイメージが強いかもしれませんが、広範囲熱傷では全身の毛細血管が影響を受け、全身性の浮腫となります。混同注意:心不全や腎不全による浮腫とは異なり、熱傷では血管透過性の亢進が主要な原因です。
- 3. 正解。広範囲熱傷の急性期では、血管透過性亢進による血漿漏出、熱傷創からの水分蒸散により、体液が著しく失われ、循環血液量が減少します。熱傷性ショックを防ぎ、生命を維持するためには、大量かつ迅速な輸液(蘇生液)が不可欠であり、輸液を制限することは致命的です。
- 4. 広範囲熱傷は身体にとって極めて大きなストレスであり、体温調節の障害、炎症性サイトカインの放出、カテコラミンなどのストレスホルモンの増加により、基礎代謝量(安静時のエネルギー消費量)が著しく亢進します。正しくは:基礎代謝量が上昇する。選びやすい理由:患者の活動性の低下や食欲不振から基礎代謝が低下すると考えるかもしれませんが、実際は身体を修復しようとする反応で代謝は亢進します。混同注意:飢餓状態や慢性疾患による代謝低下と混同しやすいですが、熱傷は異化が亢進する特殊な病態です。
- 5. 熱傷患者はタンパク質の分解(異化)が亢進し、窒素が体外へ失われやすい状態です。創傷治癒の促進、免疫機能の維持、組織の再建のためには、高タンパク質(かつ高カロリー)の積極的な栄養管理が必須とされます。正しくは:高タンパク質の栄養管理を行う。選びやすい理由:腎機能への負担を懸念してタンパク質を制限すべきか迷うかもしれませんが、熱傷急性期はタンパク質補充の必要性が優先されます。混同注意:腎不全患者の低タンパク食や、肝性脳症の制限食などと混同しやすいですが、熱傷では正反対の対応が求められます。
国試ポイント
熱傷の病態生理、特に急性期の体液動態と代謝変化を理解し、それに基づいた適切な初期治療(輸液管理、栄養管理)に関する知識が問われています。「誤っているものはどれか」という形式で、各記述の正誤を正確に判断する能力が必要です。
混同注意
広範囲熱傷の急性期と慢性期における病態生理の違いや、熱傷性ショックと他の種類のショック病態との鑑別。また、高血糖、高代謝、浮腫といった症状が「なぜ」起こるのかという機序の理解が不足していると誤答につながりやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、熱傷の重症度分類(面積、深度、部位など)と、それに応じた具体的な初期治療プロトコル(例:Parkland formulaによる輸液量計算、栄養必要量の推定)の知識が問われる可能性があります。また、初期治療後の合併症(例:感染症、瘢痕拘縮)やリハビリテーションに関する問題も予想されます。
関連知識
熱傷深度と熱傷面積の評価方法(9の法則など)、熱傷性ショックの病態と輸液製剤の種類、輸液量計算式(Parkland formulaなど)、熱傷による代謝亢進と栄養管理(高カロリー・高タンパク食の必要性)、熱傷における感染管理と創傷治癒の機序、合併症(急性腎不全、多臓器不全など)の予防と対応。