64歳の男性。バイク走行中に転倒し、救命救急センターへ搬入された。救急外来到着時の頸椎単純CT(別冊No. 2)を別に示す。頸椎脱臼骨折と診断され、同日手術が施行された。術後、四肢麻痺と肛門周囲の感覚脱失を認め、Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類C6B1完全麻痺の頸髄損傷と診断された。目標として設定する動作で最も適切なのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Zancolliの分類C6B1完全麻痺は、上腕二頭筋と三角筋が機能し、手関節の伸展も部分的に可能ですが、手指の機能はほぼ失われています。この残存機能では、ベッド上での重心移動や体幹の安定化に努めることで、起き上がり動作を自立させることは比較的現実的な目標となります。他の選択肢は、手指の把持力や体幹の安定性がさらに必要となるため、C6B1レベルの自立目標としては達成困難または優先順位が低いと考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Zancolli C6B1完全麻痺は、三角筋と上腕二頭筋が機能しており、手関節伸展も部分的に可能ですが、手指の機能が著しく低下しています。このような状態では、座位保持やベッド上での簡単な移動、特に起き上がり動作は自立の可能性があり、リハビリテーションの初期目標として非常に適切です。選びやすい理由:他の選択肢も目標になりうるように思えるが、C6B1という麻痺レベルを考慮すると、より基本的な起き上がり動作が最も現実的で優先順位が高い。混同注意:他のより高度な移動動作(車椅子駆動や移乗)と混同しやすいが、C6B1レベルの残存機能から優先順位を考える必要がある。
- 2. C6B1完全麻痺では、手関節伸展は可能ですが、手指の把持力は極めて弱いため、車椅子のハンドリムを操作する際に十分な推進力を得ることが困難です。屋内での平地駆動であっても、このレベルでの自立は非常に難しいと考えられます。正しくは:このレベルで車椅子操作を行う場合、電動車椅子が現実的な選択肢となります。選びやすい理由:車椅子での移動は頸髄損傷者の主要な移動手段であるため、一見すると目標になりそうに見える。混同注意:C6レベルの残存機能(特に手関節伸展)で車椅子操作が可能と誤解しやすいが、手指の機能が限定されるため、ハンドリム操作は困難。
- 3. C6B1レベルの残存機能では、ジョイスティック操作型などの電動車椅子を用いた移動は可能ですが、この設問では『最も適切な目標』が問われています。まずより基本的なベッド上での動作や座位保持の確立が優先されるべきであり、いきなり電動車椅子での移動を最優先の目標とするのは適切ではありません。電動車椅子はむしろ、手動車椅子駆動が困難な場合の代替手段として検討されるものです。正しくは:電動車椅子は移動手段の一つとして有効ですが、初期の最も適切な目標としては、より基礎的な動作(起き上がりなど)が優先されます。選びやすい理由:C6B1レベルでは手動車椅子が難しいため、電動車椅子は現実的な移動手段として考えやすい。混同注意:実用的な移動手段ではあるが、リハビリテーションの段階における『最も適切な目標』という観点を見落としやすい。
- 4. C6B1レベルでは、体幹の安定性や手指の把持力に限界があるため、側面からの移乗動作を自力で行うことは非常に困難です。介助があれば可能ですが、自立目標としては高すぎます。正しくは:移乗動作の自立を目指す場合、より低介助での移乗方法の習得や、介助者の指導が目標となります。また、スライディングボード等の補助具の活用が検討されます。選びやすい理由:移乗動作は日常生活の重要な部分であり、最終的な目標としては設定されることが多い。混同注意:介助があれば移乗ができるため、自立目標としても可能だと誤解しやすい。
- 5. Zancolli C6B1レベルでは、体幹のコントロールや下肢の支持、手指の把持力が著しく制限されており、床から車椅子への移乗を自力で行うことはほぼ不可能です。これは非常に高度な動作であり、C6B1の麻痺レベルでは現実的な目標とは言えません。正しくは:この麻痺レベルでは、床からの移乗動作は介助なしでは困難であり、目標と設定する場合はかなりの残存機能が必要となります。選びやすい理由:脊髄損傷患者にとって、転倒時の対処として床からの移乗は重要視されることがある。混同注意:より高位の損傷や、より軽度な麻痺レベルの患者の目標と混同しやすい。
国試ポイント
本問題は、Zancolli分類C6B1の頸髄損傷患者の残存機能と、それに基づいて設定されるリハビリテーションの目標について理解しているかを問うものです。脊髄損傷の分類と、各レベルで期待できるADL動作の範囲を正確に把握している必要があります。特に、C6レベルでの上肢機能の具体的な内容(手関節伸展は可だが、手指の把持は困難)を理解しているかが鍵となります。
混同注意
脊髄損傷の分類(ASIA分類、Zancolli分類など)と、各損傷レベルで可能な動作を混同しやすい。特に、C6レベルでの機能的限界(手関節伸展は可能でも手指の巧緻性は低いこと)を見誤ると、過度な目標を設定しやすくなります。また、段階的なリハビリテーションの目標設定の優先順位を理解していないと、最終目標と初期目標を混同する可能性があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず脊髄損傷の損傷レベルを正確に把握し、そのレベルで残存する主要な筋群とその機能を確認する。次に、選択肢で提示されている動作が、その残存機能で自立可能か、あるいは適切な補助具を用いれば可能かを検討する。そして、リハビリテーションの段階における『最も適切な目標』という観点から、初期に達成すべき基礎的な動作に焦点を当てる。画像問題であれば、画像から得られる情報(例:損傷部位や程度)を診断名と結びつけ、身体所見と照らし合わせる。
関連知識
Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類(特にC5, C6, C7レベルの残存機能)、ASIA分類による神経学的レベルと機能的予後、脊髄損傷患者のリハビリテーションにおけるADL目標設定の原則、各ADL動作に必要な筋力と関節可動域。