高齢者の歩行の特徴で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
高齢者の歩行では、筋力低下やバランス機能の低下といった身体的な変化に対応し、転倒リスクを軽減するために様々な代償戦略がとられます。選択肢2の『歩幅の減少』は、歩行安定性を高めるための一般的な変化の一つです。他の選択肢は、高齢者の歩行の特徴とは逆の現象を述べているか、一般的ではない変化を示しています。具体的には、歩隔は広がり(1)、歩行率は低下し(3)、安定性確保のため遊脚期は短縮し(4)、両脚支持期は延長します(5)。
選択肢ごとの解説
- 1. 高齢者では、バランス能力の低下や重心動揺を抑えようとする代償作用から、安定性を向上させるために歩隔(支持基底面)はむしろ広がる傾向があります。正しくは:歩隔(左右の足の間隔)が広がる。選びやすい理由:足の振り出しが小さくなる全体的なイメージから、歩隔も小さくなると誤解されやすいかもしれません。混同注意:特定の神経疾患による歩行パターンや、効率的な若年者の歩行における歩隔などと混同しやすいです。
- 2. 正解。高齢者では、下肢筋力の低下、関節可動域の制限、バランス機能の低下などにより、安定性を確保するため、歩幅は短縮する傾向があります。
- 3. 高齢者では、歩行速度が低下するため、歩幅の減少に加えて、歩行率も低下するか、もしくは大きく変化しないことが一般的です。増加は主要な特徴ではありません。正しくは:歩行率(単位時間あたりの歩数)が減少する。選びやすい理由:歩幅が短くなる分、歩数を増やして歩行速度を維持しようとする心理的なイメージから、増加すると錯覚しやすいかもしれません。混同注意:パーキンソン病に見られるような小刻み歩行は歩行率は高いですが、全体的な歩行速度は低下しており、高齢者全体に当てはまる特徴ではありません。
- 4. 高齢者では、バランスの不安定さから転倒リスクを避けるため、両足が地面に接地している両脚支持期を延長させます。その結果、片足で体重を支える遊脚期や単脚支持期は相対的に短縮します。正しくは:遊脚期(片足が地面から離れている期間)が短縮する。選びやすい理由:歩行が全体的にゆっくりになるイメージから、各歩行周期の相も長くなると誤解しやすいです。混同注意:若年者の効率的な歩行周期の各相の比率や、一般的な歩行速度と各相の長さの関係と混同しやすいです。
- 5. 高齢者は転倒への不安やバランス能力の低下から、安定性を確保するために、両足が地面に接している期間(両脚支持期)を長くする傾向があります。正しくは:両脚支持期(両足が地面についている期間)が延長する。選びやすい理由:効率的な歩行では両脚支持期が短い、という知識と混同し、高齢者でも短縮すると誤解することがあります。混同注意:歩行の効率性(両脚支持期が短い方がエネルギー効率が良い)と、歩行の安定性(両脚支持期が長い方が安定性が高い)の概念が混同されやすいです。
国試ポイント
この問題は、高齢者の加齢に伴う歩行様式の変化、特にその特徴とメカニズムに関する基本的な知識を問うものです。安定性維持のための代償的変化を理解しているかが重要となります。
混同注意
歩行周期の各相(立脚相、遊脚相、単脚支持期、両脚支持期)の時間的割合の変化や、歩行率と歩行速度、歩幅と歩隔といった歩行パラメータの意味と高齢者における変化方向が混同されやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、高齢者の歩行が『安定性確保』のためにどのような変化を示すかに着目しましょう。特に、支持基底面の拡大(歩隔の拡大)や、単脚支持時間の短縮・両脚支持時間の延長といった、バランスを保とうとする適応反応を意識して選択肢を検討することが重要です。
関連知識
加齢に伴う筋力低下、関節可動域制限、視覚・平衡感覚の低下、転倒恐怖感などが、高齢者の歩行変化にどのように影響するか。また、他の高齢者の歩行特徴(例えば、足関節背屈筋力低下によるつま先挙上量減少、体幹の揺れ増加、腕の振り幅減少など)についても理解しておくことが重要です。