39歳の男性。野球の試合中にジャンプしてボールをキャッチした着地時に、踵に疼痛と違和感とを訴えた。その直後から歩行困難となったために、応急処置の後に緊急搬送された。搬送先の病院で撮影された足部MRI(別冊No. 5)を別に示す。矢印は損傷部位を示す。受傷直後の処置として適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下図のMRI画像では、アキレス腱が断裂している所見が認められます。アキレス腱断裂の受傷直後の処置としては、断裂した腱の端を近づけ、緊張を緩めるために足関節を底屈位で固定することが基本となります。これにより、腱の再接近と治癒が促進されます。
選択肢ごとの解説
- 1. アキレス腱断裂の場合、単なる足底板による固定では不十分であり、足関節の運動を完全に制限することはできません。正しくは:ギプスや装具などを用いて、より強固に固定する必要があります。選びやすい理由:足底板は足部の痛みを軽減する目的で使用されることがありますが、急性期の重篤な損傷には対応できません。混同注意:軽度の足部痛に対する処置と混同しやすいです。
- 2. 受傷直後の急性期には、炎症や内出血を悪化させる可能性があるため、保温は不適切です。急性期にはRICE処置(Rest, Ice, Compression, Elevation)が基本であり、冷却が推奨されます。正しくは:足関節周辺を冷却する(アイシングする)。選びやすい理由:慢性的な痛みやリハビリテーション期では保温が有効な場合もありますが、急性期には禁忌です。混同注意:慢性期の温熱療法や、血液循環を促進する目的の処置と混同しやすいです。
- 3. 正解。MRI画像からアキレス腱断裂が示唆されます。アキレス腱断裂の保存的治療や術後の管理では、アキレス腱の緊張を和らげ、断裂端を接近させるために、足関節を底屈位(通常は軽度底屈位から徐々に背屈位へ)で固定するのが一般的です。これにより、腱の治癒が促進されます。選びやすい理由:足関節を固定することは重要だと判断できるため、固定の肢位まで注意が向けば正答にたどり着きやすいです。混同注意:他の足関節の損傷に対する固定肢位と混同しないように注意が必要です。
- 4. 受傷直後の急性期に損傷部位(アキレス腱断裂)をマッサージすると、炎症や内出血を増悪させ、組織の損傷を広げる可能性があります。特に強擦法は深部組織への刺激が強いため、不適切です。正しくは:受傷部位を安静に保ち、圧迫・冷却を行う。選びやすい理由:マッサージは筋肉の緊張緩和や血行促進に用いられることがありますが、急性期の腱断裂には適用されません。混同注意:筋肉疲労や慢性痛に対するマッサージと混同しやすいです。
- 5. 下腿を下垂させることで、損傷部位への血液流入が増加し、腫脹や内出血を悪化させる可能性があります。また、アキレス腱の緊張が増す場合もあり、安静を保つためには不適切な肢位です。一般的に、受傷直後は患部を心臓より高い位置に挙上することが推奨されます。正しくは:下腿を挙上して安静にする。選びやすい理由:安静にすること自体は正しいですが、肢位が不適切であることに気づかないと選んでしまう可能性があります。混同注意:患部を下げることが血流を促進し治癒につながると誤解することと混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、MRI画像からアキレス腱断裂を診断し、その急性期の適切な処置を選択できるかを問うものです。画像診断能力と外傷の急性期管理に関する知識が複合的に試されます。特に、RICE処置の原則と、アキレス腱断裂に特有の固定肢位を理解しているかが重要です。
混同注意
アキレス腱炎や部分断裂のような軽度の損傷、あるいは慢性期の治療と急性期の治療が混同しやすいです。また、足関節捻挫など他の足関節周囲の急性外傷と処置を混同する可能性もあります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合は、まず画像所見から正確な病態を診断できるか、次にその病態の急性期における基本的な処置(RICE原則、固定肢位など)を理解しているか、そして禁忌となる処置を識別できるかに注目して学習を進めるべきです。
関連知識
RICE処置(Rest, Ice, Compression, Elevation)、アキレス腱断裂の診断方法(Thompson testなど)、アキレス腱断裂の保存療法と手術療法の違い、各治療法における固定肢位と期間。