アルカローシスをきたすのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
嘔吐によって胃酸(塩酸)が大量に体外へ失われると、体内の水素イオン濃度が低下し、血液のpHが上昇して代謝性アルカローシスが生じます。他の選択肢は、飢餓によるケトン体産生、下痢による重炭酸イオン喪失、重症喘息やCO2ナルコーシスによる二酸化炭素貯留などによって、いずれもアシドーシスを引き起こす病態です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。頻繁な嘔吐により胃から多量の胃酸(塩酸)が失われると、体内の水素イオンが減少し、相対的にアルカリ性が強まるため、代謝性アルカローシスが引き起こされます。
- 2. 飢餓状態では、体はエネルギー源として脂肪を分解し、ケトン体を生成します。このケトン体は酸性物質であるため、体液のpHを低下させ、代謝性アシドーシスを引き起こします。正しくは:飢餓は代謝性アシドーシスをきたす。選びやすい理由:脱水や電解質異常といった飢餓に伴う他の症状と混同しやすく、漠然と体液バランスの異常と捉えてしまうと判断が難しくなります。混同注意:消化器系の症状という点で嘔吐と類似する部分があると感じやすいかもしれませんが、嘔吐は酸喪失、飢餓はケトン体産生によるアシドーシスです。
- 3. 重度の下痢では、消化管下部から重炭酸イオン(HCO3-)が大量に失われます。重炭酸イオンはアルカリ性の緩衝物質であるため、これが失われることで体液のpHが低下し、代謝性アシドーシスを引き起こします。正しくは:下痢は代謝性アシドーシスをきたす。選びやすい理由:嘔吐と同様に体液の喪失を伴うため、同じような結果になると誤解しやすいですが、失われる物質が異なるため、結果も逆になります。混同注意:体液喪失を伴う病態である嘔吐(胃酸喪失でアルカローシス)と混同しやすいですが、下痢は重炭酸イオン喪失でアシドーシスになります。
- 4. 重症の喘息では、気道が狭くなり十分な換気が行えない(換気不全)ため、二酸化炭素(CO2)が体内に蓄積します。CO2は体内で炭酸となり酸性を示すため、呼吸性アシドーシスを引き起こします。正しくは:重症の喘息は呼吸性アシドーシスをきたす。選びやすい理由:軽症の喘息発作時やパニック発作などによる過換気では呼吸性アルカローシスになることもあるため、喘息とアルカローシスを結びつけて考えてしまう可能性があります。しかし、「重症」の場合は換気不全が主体です。混同注意:喘息発作における過換気による一時的な呼吸性アルカローシスと、重症化して換気不全に陥った際の呼吸性アシドーシスを混同しやすいです。
- 5. CO2ナルコーシス(二酸化炭素ナルコーシス)は、肺機能の低下などにより体内に二酸化炭素が異常に蓄積することで起こる意識障害です。二酸化炭素の蓄積は、体液のpHを低下させ、呼吸性アシドーシスを引き起こします。正しくは:CO2ナルコーシスは呼吸性アシドーシスをきたす。選びやすい理由:「ナルコーシス」という言葉の響きから、病態の深刻さは伝わりますが、それがアシドーシスかアルカローシスか、原因が何かを判断しにくいかもしれません。混同注意:低酸素血症(hypoxemia)と混同しやすいですが、CO2ナルコーシスは主に高炭酸ガス血症(hypercapnia)が病態の中心であり、これが直接アシドーシスを引き起こします。
国試ポイント
酸塩基平衡の異常(アシドーシス・アルカローシス)を引き起こす様々な病態の原因を正確に理解しているか、また、それが代謝性か呼吸性かを区別できるかが問われます。特に、体液喪失を伴う病態(嘔吐と下痢)で、失われる成分によって酸塩基平衡への影響が逆になる点は重要なポイントです。
混同注意
代謝性アシドーシスと代謝性アルカローシス、呼吸性アシドーシスと呼吸性アルカローシスの原因となる病態が混同されやすいです。特に、体液喪失を伴う嘔吐(酸喪失)と下痢(重炭酸イオン喪失)、あるいは呼吸器疾患における軽症時の過換気(CO2排出過多)と重症時の換気不全(CO2貯留)が引き起こす影響の違いが混乱を招きやすいでしょう。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、各病態が『代謝性』か『呼吸性』か、そして『アシドーシス』か『アルカローシス』かを区別する能力がより詳細に問われる可能性があります。また、それぞれの代償機転(腎臓による重炭酸イオンの再吸収・排出、呼吸器によるCO2排出量の調整)についても理解していると、より深い知識が要求される問題に対応できます。
関連知識
酸塩基平衡の基本(pH、pCO2、HCO3-、BE)、代謝性アシドーシス(例:糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全)、代謝性アルカローシス(例:利尿薬使用、副腎皮質機能亢進症)、呼吸性アシドーシス(例:慢性閉塞性肺疾患)、呼吸性アルカローシス(例:過換気症候群)の原因と病態生理を理解しておく必要があります。