有酸素運動を用いた長期間の運動療法で増加するのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
長期的な有酸素運動は、動脈硬化の予防や改善に寄与する生理的変化をもたらします。特に、高比重リポタンパク質(HDL)コレステロールは、末梢組織からコレステロールを回収し、肝臓へ運搬することで、動脈壁へのコレステロール沈着を防ぐ「善玉」コレステロールとして知られています。有酸素運動を継続することで、このHDLコレステロールの血中濃度が上昇することが多くの研究で示されています。他の選択肢、中性脂肪、内臓脂肪、LDLコレステロール、IMTは、通常、長期的な有酸素運動によって減少するか、その進行が抑制される傾向にあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 長期間の有酸素運動は、エネルギー消費を促進し、肝臓での中性脂肪合成を抑制し、血中からの除去を促進するため、通常、血液中の中性脂肪レベルを減少させます。正しくは:血液中の中性脂肪レベルは減少する。選びやすい理由:運動によって脂肪が消費されるという健康的なイメージから、体によいものが「増える」という誤解を生む可能性があります。混同注意:運動による体脂肪の減少は期待されますが、それは血中の中性脂肪レベルの減少と結びつくことが多いです。
- 2. 有酸素運動は、特に内臓脂肪の減少に非常に効果的です。エネルギー消費が増えることで体脂肪が減少し、中でも代謝的に活性が高い内臓脂肪から優先的に消費されます。正しくは:内臓に蓄積される脂肪量は減少する。選びやすい理由:運動が脂肪減少に繋がることは広く知られていますが、「増加」という設問の意図を誤解すると、選択肢を間違える可能性があります。混同注意:運動の効果として脂肪が減ることは明白であり、増加と混同することは通常ありませんが、確認が必要です。
- 3. 正解。長期間の有酸素運動は、コレステロールを末梢組織から肝臓へ運搬し、動脈硬化を抑制する働きを持つ高比重リポタンパク質(HDL)コレステロールの生成を促進し、その血中濃度を上昇させることが知られています。これは、運動による心血管保護効果の一因です。
- 4. 運動療法は、悪玉コレステロールとして知られる低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールの血中濃度を減少させるか、少なくとも安定させることが期待されます。動脈硬化のリスクを低減する効果があります。正しくは:低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールは減少する。選びやすい理由:HDLコレステロールとLDLコレステロールのどちらが「善玉」で、どちらが「悪玉」であるか、また運動によってそれぞれどのように変化するかの知識が曖昧だと、逆に捉えてしまう可能性があります。混同注意:HDLコレステロールとLDLコレステロールの役割と、運動によるそれぞれの変化の方向性(HDLは増加、LDLは減少が望ましい)を混同しやすいです。
- 5. 内膜中膜複合体厚(IMT)は動脈硬化の指標であり、長期間の有酸素運動は動脈壁の健康を保ち、その進行を抑制するか、あるいは厚さを減少させることが報告されています。増加することは通常ありません。正しくは:頸動脈の内膜中膜複合体厚(IMT)は減少するか、その進行が抑制される。選びやすい理由:運動が良い影響を与えることは理解しているものの、「増加」という設問とIMTの関係性を誤解する可能性があります。IMTが厚いと良くないという知識はあっても、運動がIMTを増加させることはないため、注意が必要です。混同注意:IMTが動脈硬化の指標であり、運動がその進行を抑える(つまりIMTは減るか維持される)という関係性を混同しやすいです。
国試ポイント
理学療法士国家試験では、運動療法の生理学的効果に関する知識が頻繁に問われます。特に、有酸素運動が脂質代謝や心血管系に及ぼす影響、具体的には血中脂質の変化(HDL-C、LDL-C、中性脂肪など)や動脈硬化指標(IMTなど)への影響について、増加するものと減少するものを正確に理解しているかが重要です。
混同注意
善玉コレステロール(HDL-C)と悪玉コレステロール(LDL-C)の役割、および運動によるそれぞれの血中濃度の変化方向(HDL-Cは増加、LDL-Cは減少)を混同しやすいです。また、内膜中膜複合体厚(IMT)が動脈硬化の指標であり、運動がそれを抑制する(つまり増加させない)という関係性も誤解されがちです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合は、有酸素運動が心血管系や代謝に与える影響として、血圧、血糖値、インスリン感受性、炎症マーカーなどがどのように変化するかにも着目して学習を進めると良いでしょう。また、運動強度や期間がこれらの変化にどのように影響するかについても理解を深めることが重要です。
関連知識
脂質代謝のメカニズム、動脈硬化の病態生理、有酸素運動の運動処方、メタボリックシンドロームと生活習慣病予防、心疾患・脳血管疾患の理学療法。