75歳の男性。3年前にParkinson病を発症。Hoehn & Yahrの重症度分類ステージⅢ。3か月前からトイレ前で小刻み歩行を生じるほか、歩行や立ち座りが不安定となり、屋内移動で妻の介助が必要となった。現在、妻とマンションで2人暮らしである。自宅の住環境整備で適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
パーキンソン病患者は、姿勢反射障害、すくみ足、小刻み歩行などの症状により、バランス能力が低下し転倒リスクが高いです。特に開き戸は、開閉時に身体をひねったり後退したりする動作が必要となるため、バランスを崩しやすく危険です。引き戸やアコーディオンカーテンの方が、直線的な動きで開閉できるため、より安全性が高いとされています。他の選択肢は、パーキンソン病患者のADLを維持し、転倒を予防するための有効な環境整備策です。
選択肢ごとの解説
- 1. パーキンソン病患者は、進行すると寝返りや起き上がり動作が困難になります。介助バーは、これらの動作を安全かつ自立して行うための有効な補助具です。正しくは:これは適切な対応です。選びやすい理由:ベッドからの起き上がりはパーキンソン病患者にとって困難な動作であり、介助バーはその助けとなるため、正しい選択肢と判断されやすいです。混同注意:他の適切な住環境整備策と混同しやすいですが、介助バーの設置は一般的なパーキンソン病患者への推奨事項です。
- 2. 正解。パーキンソン病患者は、バランス能力の低下や小刻み歩行、すくみ足といった症状から、開き戸の開閉動作が困難になることが多いです。開き戸は、ドアを開ける際に後ずさりが必要になったり、身体をひねったりする動作を伴うため、転倒のリスクを高めます。一般的には、スペースがあれば引き戸やアコーディオンカーテンの方が、開閉が容易で安全性が高いとされています。元の文脈で「開き戸にする」とあるため、これは不適切な選択肢です。正しくは:居室の出入り口は、開き戸ではなく引き戸やアコーディオンカーテンにすることが推奨されます。もしくは、既存の開き戸であれば、可能な限り開口を大きく保ち、ドアストッパーなどを利用して安定性を確保することが考えられます。選びやすい理由:一見、開き戸の方がバリアフリーのように見えるかもしれませんが、パーキンソン病患者の特性を考慮すると逆効果です。混同注意:健常者向けの一般的なバリアフリー化の考え方(例えば、車椅子使用時のドア幅確保など)と混同しやすいですが、パーキンソン病の運動症状に特化した配慮が必要です。
- 3. パーキンソン病患者はバランス能力が低下し、すくみ足や突進現象が見られるため、小さな段差でも転倒のリスクが非常に高まります。段差をなくすことは、転倒予防のために極めて重要かつ適切な対応です。正しくは:これは適切な対応です。選びやすい理由:段差解消は多くの疾患で転倒予防の基本であるため、正しい選択肢と判断されやすいです。混同注意:他の適切な住環境整備策と混同しやすいですが、段差解消は最も基本的な転倒予防策の一つです。
- 4. パーキンソン病患者は歩行が不安定であり、特に夜間の移動やトイレへの移動時に転倒しやすいです。手すりは、移動時のバランス保持や転倒予防に非常に有効な補助具です。また、トイレ前で小刻み歩行があるとの記述もあり、手すりはそこでも役立ちます。正しくは:これは適切な対応です。選びやすい理由:手すりの設置は移動時の安全確保に役立つため、正しい選択肢と判断されやすいです。混同注意:他の適切な住環境整備策と混同しやすいですが、手すりの設置はADL維持と転倒予防に有効です。
- 5. パーキンソン病患者に多く見られる「すくみ足」は、特定の場所(ドアの敷居、狭い場所、方向転換時など)で足が床に張り付いたように動かなくなる現象です。床に縞模様や足型などの視覚的なキュー(目印)を提供することで、このすくみ足を克服し、歩行を促す効果が期待できます。トイレ前での小刻み歩行はすくみ足の一種である可能性が高いため、これは有効な対策です。正しくは:これは適切な対応です。選びやすい理由:視覚的なキューの提供は、パーキンソン病のすくみ足対策としてよく知られているため、正しい選択肢と判断されやすいです。混同注意:一見、複雑な対策に思えるかもしれませんが、すくみ足への有効な介入法として理解しておきたい知識です。
国試ポイント
パーキンソン病患者の特性(特に運動症状)を理解し、それに基づいた適切な住環境整備の知識が問われています。特に、転倒予防のための具体的な対策や、症状に応じたドアの種類の選択が重要です。
混同注意
一般的なバリアフリー化の知識と、パーキンソン病に特有の症状(すくみ足、姿勢反射障害など)を考慮した環境整備を混同しやすいです。例えば、車椅子使用者のための開き戸の改造とは異なる視点が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、各症状(例:振戦、固縮、無動)に対する具体的なリハビリテーション介入や、疾患進行度に応じた段階的な住環境整備の優先順位が問われる可能性があります。また、介護保険制度における住宅改修の対象範囲なども関連知識として問われるかもしれません。
関連知識
パーキンソン病のHoehn&Yahr重症度分類(ステージⅢは姿勢反射障害があり介助なしで起立・歩行が可能だが不安定な状態)、パーキンソン病の四大症状(振戦、固縮、無動、姿勢反射障害)、すくみ足への対処法(視覚的キュー、聴覚的キュー)、転倒予防のための住環境整備全般(段差解消、手すり設置、照明の改善など)。